第十七話 スポットライトが当たる世界へ
舞台の上では母と相手役の男性にスポットライトが当たっていた。
皆、息を呑んで舞台中央の二人を見つめている。
大勢の観客が水を打ったかのように静まり返っている。
そして、スポットライトが消えた。
舞台が真っ暗になる。
音楽が静かに流れている。
ゆったりと天へ昇っていくかのような美しい天使の歌声のようなヴァイオリンとフルートの音色が耳に心地よい。
そして、音が消えた瞬間、舞台が明るくなった。
歓声とともに、割れんばかりの拍手が鳴り響く。
出演者が舞台へ戻ってきた。
もちろん、母がセンターに立ち、静かに跪き、お辞儀をした。
美しいレヴェランス(バレエのお辞儀)は、観客を魅了した。
屋外ステージが揺れるくらいの拍手、
熱狂的な歓声、
ウィルが今までに感じたことのない世界だ。
会場は笑顔であふれていた。
ここにいる人々は、全員、音楽やバレエなどの芸術のおかげで幸せと言う同じ気持ちを抱いているのだ。
ウィルは芸術の力を確信した。
誰も憎まず、平和な時間、たった数時間ではあるが、同じ気持ちを共有できる時間はティアナ王国には無い時間である。
ウィルは、ティアナ王国が芸術を愛する国になれば、国民も幸せになれるはずだと思った。
『リヒテル王国のような平和な国にしよう。
そのために、僕は芸術を学びたい。
あと、7年で、父に認められるような強い人間に変わらなくてはいけない。
王族としての地位も確立をしないと。』
青月祭の夜に、ウィルは心に誓った。
その姿をエリーザも王族席から見ていた。
青い雪を見たのだから、どんな困難にも立ち向かえる。
言葉には出さなくても、二人の気持ちは通じ合っていた。




