第十六話 「青い雪の伝説」
~リヒテル王国に古くから伝わる青い雪の伝説~
リヒテル王国がまだリヒテルという小さな村だった頃、丘の小さな小屋に、幼い少女が一人寂しく暮らしていました。
少女の両親は村の市場へヤギのチーズを売りに行くため、重い荷物を背負い、雨の中出かけた。
少女は、天気が悪いから行かないで欲しいと願ったが、冬が近いから、少しでもお金を稼ぎ、冬支度をしたいからと笑顔で言ったまま、戻ってこなかった。
両親は市場で、雨で車輪が滑ってしまった馬車にひかれて亡くなっていたのだ。
幼い少女は残されたヤギ1匹と犬1匹と暮らすことになった。
少女はとても美しい姿であった。
丘の上に立つ少女はまるで妖精のようであった。
しかし、美しい少女には友達がいなかった。
理由は、あまりにも美しいため、両親が誘拐を恐れて、丘を下りることを許していなかったためだ。
少女は両親がいなくなったため、自分でヤギのチーズを作り、犬と一緒に市場へ売りに行った。
黒いフードを深くかぶり、父のズボンと靴を履いていたため、誰も美しい少女だとは思っていなかった。
市場からの帰り、丘の中腹で倒れている少年をみつけた。
頭から血を流していたため、少女は家に連れて帰り、手当てをしてあげた。
少年が目を醒ますと、少ない食事を彼のために与えた。
少年は記憶がなかった。
少女は始めて出来た話し相手だと言い、仲良くなるのもあっという間だった。
ある朝、小屋の扉を叩く音で目を醒ました。
王族の使いだと言う人達が立っていた。
少年は隣国の皇子だった。
記憶の無い少年は変えるのをためらったが、父母、兄妹との肖像画を見たら、自分のことを思い出した。
少年は使いの者たちに、明日、必ず帰るから、今日一日は少女と二人きりにして欲しいと頼んだ。
使いの者たちを見送った後、とめどない話をした。
少年の名前、そして家族の事など。
少女は、大好きな少年が遠い星の人のように思えた。
夕食の後、二人は丘の上に立った。
満月に照らされた、勿忘草を見つめていた。
その時、青い花びらが風と共に舞い上がった。
まるで、二人を包むかのように、
優しい粉雪のような、青い花吹雪。
「青い雪」
少女は、小さくつぶやいた。
そして、少年を見て
「まるで、青い雪のようね。
あなたの目の色と同じ美しい青。
あなたのこと、忘れないわ。
勿忘草のような素敵なあなた。
会えなくても一生友達よ」
少年は涙をこらえながら
「青い雪が降る頃、必ず迎えに来るよ」と言った。
あれから10年の月日が流れた。
何度も勿忘草は咲いたが、青い雪は降らなかった。
少女は美しい大人の女性に成長していた。
その時、丘の下から歩いてくる人影が見えた。
少年の面影を残した凛々しい青年だ。
「遅くなってごめんね。」
そうつぶやいた時、風が吹いた。
勿忘草の花びらが舞い上がったのだ。
あの日、二人で見た青い雪が二人を包んだ。
青い満月に照らされた、青い雪をみつめながら、二人は手をつないだ。
そして、一生離れないと青い雪に誓うのだった。




