第十四話 ウィル、王族としての初仕事
ウィルは、大聖堂の前でエリーザと別れ、近衛兵を探した。
相変わらず、だらしがなく、やる気のない雰囲気の集団が目に入る。
ティアナ王国の近衛兵だと一目でわかる制服を着ているにもかかわらず、あのような態度は目にあまる。
ウィルはこれまで、彼らと行動を共にしたことが無かったため、これほどひどいとは思っていなかった。
もちろん、彼らも、父上であるティアナ王国国王や母上のニーナ妃の前で、あのような態度をしていたら、首をはねられていたことだろう。
平和なリヒテル王国で、羽を伸ばし、その上、ウィルを馬鹿にしている態度があからさまだ。
ウィルは、近衛兵の前に立った。
かれらは、ウィルが目の前に立っていることに気が付かない。
「君たちは、何をしているのか?
大聖堂の前で、ティアナ王国の恥をさらすようなことをするためにいるのか?
本来、警護すべき人間に気づかないとはなげかわしい。
早く、貴賓席へ僕を連れて行きたまえ」
ウィルは堂々と彼らに伝えた。
決して威嚇する言い方ではない。
近衛兵の周りには、たくさんの観光客や各国から招待された方々がいたからだ。
少しでも、楽しい雰囲気が変わらぬように配慮して、近衛兵にだけ聞こえるように伝えたのだ。
「え?もぐら?だれ????」
近衛兵の隊長はウィルを見て、誰だか分らなかったようだ。
今まで見ていたウィルは、いつもうつむいていたから、顔すら覚えていなかったのだ。
痩せこけて、汚らしいと思っていたはずの子供だったはずなのに、
目の前に立つ少年は、
紅の獅子のように見えた。
ウィルの赤い髪が、獅子のたてがみのように風になびき、
青月祭の満月のように美しく輝く青い目。
彼らが慕うニーナ様と、こんなにも似ていたとは思わなかった。
近衛兵がバルで飲み、騒いでいる間、ウィルは成長をとげていた。
王族らしい気品を身にまとい、
たくさんの書物で培った知識を使い、
近衛兵に立ち向かったのだ。
慌てふためきながら、近衛兵たちは、ウィルを貴賓席へ案内した。
エリーザは少し離れたところからウィルを見守っていた。
うつむいて、おどおどした話し方のウィルとは別人のようだった。
エリーザも安心して自分の席へ向かった。
『青い雪を見たおかげかしら?
ウィルの願いが叶ったわね。
おめでとう!
あなたを心から誇りに思うわ。
私も夢に向かって頑張るわよ。』
エリーザが心の中でエールを送っているとき、大聖堂の鐘が鳴り響いた。




