第十三話 ウィル、生まれ変わる第一歩
エリーザとウィルは大聖堂へ向かうために、丘を下っていた。
丘を登ってきた時は、歌声に引き寄せられて来ていたため、大聖堂の裏に丘があったことに気づいていなかった。
ゆっくり歩いてくだっても、あっという間に大聖堂へ着いた。
ウィルはエリーザと別れることが辛かった。
もっと、大聖堂が遠ければよかったのに、、、、
そう心の中でつぶやいていた。
「ウィル、私も同じことを思っていたわよ。
あなたともっと一緒にいたかったから、もっと大聖堂が遠ければ良かったのにね。」
ウィルはあっけにとられていた。
「え?エリーザ、僕の気持ち、どうしてわかったの?」
エリーザは微笑みながら
「だって、あなた、声にだして、つぶやいていたわよ」
ウィルはこれまで、地下にたった一人で暮らしていた。
話し相手は妖精だけ。
だから、人に話しかけることが苦手になり、言葉はとぎれとぎれになり、伝わらないことが多かった。
近衛兵や侍女には「もぐら」と馬鹿にされているくらいだ。
たった数時間で、ウィルはいつのまにか、会話も上達していたのだ。
リヒテル王国語だから話せたのかと悩んだ。
エリーザは
「ウィル、あなたは何でも出来るのよ。
会話だって上手よ。
リヒテル王国語も美しい発音だったわよ。
きっとティアナ王国語だって、流暢に話せるはずよ。
もっと、自信を持ってね。
そして、必ず私に会いに来てね。
約束、忘れないでね。」
そう言って、ウィルを優しく、そして、しっかりと抱きしめた。
ウィルもエリーザの暖かさを感じながらも、別れを惜しんでいた。
ウィルは、まるで、生まれ変わったようだ。
顔つきも今までとは違う。
これまでの、うつむきがちで、おどおどしていた面影もない。
美しい青い目が光り輝き、今日の青月祭の満月のように優しい色を見せていた。
紅い髪は、決意を新たにしたウィルの気持ちを表すかのように、月に照らされて、ライオンのたてがみのように立派に見えた。
「今の僕なら、何にでもなれるはず。
必ず、エリーザに会うために、リヒテル王国へ戻ってくるよ。
だから、僕のこと忘れないでね。」
そうエリーザに伝えると、勿忘草のブローチにキスをした。
エリーザは少し照れながらウィルをみつめた。
「待っているわ。
あなたのこと、信じている。
必ず会いに来てね。
だから、さようならという別れの言葉は言わないわ。
また会いましょうね。」
ウィルは振り向き、大聖堂をみつめた。
生まれ変わったウィルは大きく一歩を踏み出した。




