第十二話 青月祭のブローチとリボン
エリーザはウィルが差し出したブローチをみつめた。
ウィルは
「エリーザ、青月祭では、男性のブローチを女性のリボンと交換すると一生を添い遂げられるという言い伝えがあるそうだね。僕、また君と出会いたい。
絶対にリヒテル王国へ戻ってきたい。
そして、君と一緒にリヒテル王立音楽院へ通って、たくさんの音楽や芸術、もちろん、勉強もしたいな。
お守りにもなると言われたから、僕のブローチとエリーザのリボンを交換することは出来るかな?」
エリーザは満月のような笑みを浮かべてから、髪を結んでいたリボンをほどいた。
「私のリボンは、勿忘草と満月、そして、たくさんの星がちりばめられているの。この星、まるで音符のように見えない? このリボンは私だけしか持っていないデザインだから、私の分身として持っていてね。またいつか出会うときの目印になるわよ。」
ウィルはリボンを首に結びつけた。
「エリーザ、ぼくの首に巻いたリボン、似合っている?
変じゃないかな。僕、今まで着飾ったことが無いから、何が似合うのかがわからないんだ」
「ウィル、とっても素敵よ。あなたの青い目にぴったりよ。勿忘草のリボンが、まるであなたの瞳のように見えるわ。」
ウィルは顔を赤らめながら、エリーザを見た。
「ぼくのブローチは、お土産屋さんで買ったものだから、特別じゃなくてごめん。」
そう言って、もじもじしながら、
「ねえ、そのブローチ、もう一度貸してくれる?」
エリーザは不思議そうに見つめながらブローチを手渡した。
ウィルは母親のために購入したリボンを取り出した。
そして、器用に、ブローチのまわりに巻き付けた。
出来上がったブローチは、美しいロゼットに変わった。
「ウィル、なんて上手なの!あなたは、音楽だけではなく、手先も器用なのね。
私だけのロゼット、大切にするわ。
お父様やお兄様たちが付けているロゼットよりも素晴らしいわ!」
勿忘草の薄い青色のような満月が二人を照らしていた。
「もうそろそろ音楽祭へ行きましょう」
マーサが二人を呼ぶ声が丘の上の空に響いた。




