第十話 ウィル、夢をみつける
ウィルは初めて自分の夢を考えた。自分自身で叶えたい夢。
じっと自分の手を見つめた。
今まで何かをつかみたいと考えたことのない指。
剣ダコも無く、弓を握る握力も無い。
ティアナ王国では意味をなさないウィルの手。
しかし、どんな楽器でも美しく奏でることが出来る指を持っている。
だれにも知られていない僕だけの秘密の特技。
ウィルは空を仰ぎ見た。
地下室では感じ取ることのできない、風の音、雲間から差し込む穏やかな光の暖かさ。
鳥たちが歌いながら、空を舞っている。
こんな場所で音楽を奏でられたら、僕はきっと幸せだ、、、、。
「ぼく、芸術を愛することが出来る国をつくりたい。」
ウィルは自分の口から出た言葉に驚いた。
地下室から自ら出ることも出来ず、城の侍女たちに馬鹿にされても反論も出来なかったウィルが、国を作りたいという気持ちを抱くとは思えなかった。
しかし、エリーザはお日様のようなキラキラした笑顔をしながら、ウィルを見つめて、天使の声を伝えた。
「素晴らしいわ!ウィル、あなたの夢、なんて素敵なの!
私、応援するわ。
芸術を愛する国を作るためには、まずは、あなたが芸術をたくさん学ぶのよ。
そして、その技術と知識をティアナ王国へ伝えるのよ。
そのために、リヒテル王立音楽院へ留学に来るのよ!」
ウィルは、もじもじしながら
「僕、、、、留学したいって言えるかな、、、。お父様、許してくれるかな、、、、。きっと無理だよ」
と肩をすくめながらつぶやいた。
「いいえ、大丈夫!私が推薦状をお父様に頼むわ」
「え?お父様って、リヒテル王国国王に?」
「そうよ。今回の青月祭もお父様がティアナ王国へ招待状を送ったのよ。だから、ティアナ王国国王、あなたのお父様も送り出してくれたのよ。
近隣王国の中継国でもあるリヒテル王国は、観光産業だけではなく、貿易の中継国としても大切にされているのよ。だから、きっと、あなたを留学生として迎えたいという提案を断ることは出来ないはずよ」
ウィルはポカンと口をあけて、エリーザの言葉を聞いていた。
『僕が、音楽を学べるの?あの国から出られるの?』
心の中で何度も伝えたかったけど、口に出せなかった言葉。
『音楽を奏でたい。芸術を愛したい』
僕にも夢が出来た!
ウィルはそう思うと、力が湧いてきた。
体は痩せてがりがりだけど、今なら何でも出来るような強い気持ちが生まれてきた。
ウィルはエリーザに出会えたことに感謝していた。
たった数時間の出会いが、自分の人生を変えてくれるなんて、夢にも思わなかった。




