第九話 ウィル、夢を考える
エリーザは自分も宝の山に囲まれている姿を思い起こした。
美しい音色を奏でるヴァイオリンやフルート
色とりどりの絵具で描かれた絵画
金箔の型押し文字と縁取りがまばゆい表紙、綺麗な挿絵がたくさんある書物
それらに囲まれながら、妖精たちと話しているウィル。
地下室でなければ、楽園のようだ。
しかし、エリーザはある疑問を抱いた。
「ねえ、ウィルのいる地下室は鍵がかかっているのかしら?外へは行けないようになっているの?」
ウィルは少し考えた。
「僕、今まで怖くて外に出ようと思ったことがないから、鍵がかかっているかどうか、考えたこともなかった。
今、思うと、鍵はかかっていないように思えるよ。
だって、食事が運ばれてくるとき、鍵を開ける音が聞こえたことがないから。
僕は、とても耳が良いから、聞き逃すことはないはず。
いつも、足音と、食器を置く音、そして僕を馬鹿にする言葉しか聞こえないね。」
エリーザは戸惑った。
なんて、可哀そうな環境なのかと心から思った。
「それなら自由に外へ出ることも出来るはずよね。
いつまでも地下室に閉じこもる必要はないと思うわよ。」
「でも、、、、僕、、、外へ出るのが怖いんだ。きっとお兄様たちや騎士たちが僕をいじめようとするから、、、。」
エリーザは強い口調で言った。
「ウィル、それなら、あなたは悪魔の子というイメージを持ったまま、強く立ち向かうと良いと思うわ。
だって、ずっと地下室にいたら、何も出来ないわよ。
何か夢はあるの?私の夢はディーバになることって教えたわよね。
ウィルは何がしたいの?」
ウィルはうつむいた。
今まで、自分が何をしたいのか、夢や希望を持ったことがなかったから。
夢や希望を持っても、叶わないと思って、すぐに諦めていたからだ。
自分の夢は何なのか?ウィルは考え始めた。




