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プロローグ~幸せの結末~

勿忘草わすれなぐさの花を摘みましょう

大切なあなたへ贈ります

美しい青空を詰め込んだ

あなたの瞳と同じ色

忘れられない美しいあなたへ」


少女が歌いながら花を摘んでいる。

リヒテル王国を一望できる丘の上。

暖かな春の日差しの中、優しい風が吹いている。

丘の下から双子の兄が少女を呼ぶ。

「リリー、勝手にいなくなったら心配するだろう!早くお母様の所にもどろう。」

「フィリップ、あともう少しだけ待ってよ。

お祖母様とお父様、二人の大好きな勿忘草の花をプレゼントしたいの。

今夜の公演は一夜限り、お祖母様の復活公演だから特別な花が良いと思ったのよ。」

「そういうことなら、大賛成!僕も手伝うよ。」

二人の様子を母親がこぼれんばかりの笑みを浮かべながら見守っている。

「まるであの日の私たちのようだね」

後ろから母親を抱きしめて、耳元で父親がささやいた。驚きながら振り向いた母親は矢継ぎ早に話しはじめた。

「あなた、本番前だというのに、どうしてここにいらっしゃるの?リハーサルはどうしたの?もしかして、あなたを探している団員もいらっしゃるのでは?久しぶりの公演だから逃げ出した訳ではないわよね?」

「エリーザ、落ち着いて。皆の調子が良いから、早めにリハーサルを終えたからだよ。開演まで時間が出来たから、自由時間だよ。」

「大切な公演前なのに、良いのですか?」

「大切な公演だからこそ、君との大切な思い出の場所に来たのさ。

いつまでも忘れないよ。君と勿忘草の花に誓った約束。」

「私も忘れたこと、無いわよ。」

あの日の約束とは…

「自分を信じる。

あなたを信じる。

苦しいことも、悲しいことも、

二人の気持ちが一つになれば、

必ず幸せになれる。」

二人の声に、双子の声も合唱のように重なっていた。

「お父様とお母様の約束、僕たちだって言えるよ。」

「私もお父様のような人と出会いたい」

「リリーはお母様と違ってお転婆だから、運命の人と出会えるのは難しいと思うよ。」

「フィリップだって弱虫なのに意地悪ばかり言うから、出会えないわよ。」

口喧嘩をしている双子に父親が優しく伝えた。

「二人とも、運命の人と出会ったら、性格だって変えられるよ。僕はお母様に出会うまでは、弱虫、泣き虫と言われていた人間だった。お母様は、今では考えられないくらいのお転婆娘と言われていたよ。」

「え~~~~お父様が泣き虫だなんて信じられない。誰よりも強い王様なのに」とリリーが声をあげる。

「あんなに優しくて美しい歌姫と言われているお母様がリリーにそっくりだなんて。信じたくないよ。」とフィリップが落ち込んだ様子で言った。

「二人とも、もう喧嘩は終わりましたね。笑顔にもどったら、お祖母様に会いに行きましょう。青月祭のメインイベントに遅れては大変よ。」

四人は丘を駆け下りていく。

勿忘草の花びらが風に舞う。

まるで青い雪が舞い降りて、四人を包み込んでいるように。



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