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1-2

 村の南にある森、ここは村の人間なら誰もが知る裏口だ。村の集会所の裏手の茂みに出てくる。


 村の集会所にみんなは閉じ込められている。しかし、その周りで悪党どもが酒盛りをしているせいで侵入は難しそうだ。


 裏手からこっそり侵入しよう。と、思っているとおじさんが僕に言う。


「小僧、お前足に自信はあるか?」


「へ?」


「おーい! ここにガキがいるぞ!」


 悪党が一斉にこっちを向く。


「ええ! ちょっと! おじさん!」


「できる限り逃げ回れ、じゃあな」


 颯爽といなくなるおじさん。そして後ろからの声。


「ガキがいるぞ! 捕まえろ!」

「まてガキが!」


 あの人! さっきの「死ぬなよ」はなんだったんだ! 文句を言う間もなく僕は敵から逃げる。


 至る所にいる敵を出会い頭にかわしては走り回る。屋根を飛び、家の間を通り抜け、子供の頃以来に村中を走り回る。


 しかし、やっぱり囲まれて追い込まれてしまった。ここは中央の広場。集会所までは遠くなってしまった……。


 僕は持ってきた長剣を構える。


 周りには囲むようにやつらが集まってきた。


「ようやく追い詰めたか……。おいガキ、お前の爺さんが残した武器をすぐに出せ」


「お前らなんかに渡すもんか!」


「ガキが調子に乗るなよ? これから渡したくなるまで痛ぶってやるからなっ! へへ」


「お父さんの剣はみんなを守る剣だ! お前らみたいな悪党には渡せない!」


「守る剣だとよ。おめでたいやつだ!」


 やつらが一斉に笑いだす。


「僕はこの剣で村を守る! てやっ!」


 近くのやつを切り付ける。僕の切先は手首を切り裂いた。


「いてぇ!! こいつ! やりやがったな!」


「僕の剣は世界中の人を救う剣だっ!」


「このクソガキ!」


 1人が襲いかかってきた。いける、この剣なら……。


「ああっ!」


 使い慣れない長剣で受けたせいで、剣を落としてしまった。


「ガキぃ! 覚悟しな……」


 やつらはニヤつきながら囲い込んでくる。本当にこれまでか……。



 突然奥から声がした。



「なかなかいい剣筋だ。小僧」



 ——おじさん!



「剣は凶器、剣術は殺人術、これは紛れもない事実だ。だが小僧、お前のその言葉、それもまた剣士の(ことわり)だ」


 おじさんはやつらを薙ぎ倒しながら歩いてくる。


「こいつ、何者だ!」


「敵に決まってんだろ馬鹿。お前ら、このまま村から出ればよし、さもなくば……全員斬る」


「な、何言ってんだこいつ! 囲んでやっちまえ!」


「待て」


 人混みが割れて、大柄な男が出てきた。酒の瓶を舐めながら、上機嫌だ。あいつが親玉に違いない。


「お前、多少はやるようだ。強え奴は好きだぜ?」


 親玉は酒の瓶を乱暴に放り投げ言った。


「どうだ? シシオ軍団の仲間にならねぇか?」


 おじさんは気にも留めない。


「おいそこのデカいの。出ていくのか行かねえのか、……答えろ」


「そりゃ残念だぜ……、野郎ども!」


「やっちまえぇ!」


 一斉に襲いかかる敵に、おじさんは素早く身を躱してから剣を振り下ろす。


「はぁっ!」


 そして、一撃で3人を斬った! あの人、やっぱり剣の達人だ!


 取り囲まれては周りの人間を切り裂く。敵はいつまでも囲い込めないでいるようだ。


「くそっ! こうなりゃ集会所の奴らも全員呼べ! 人質も連れてこい!」


「へい!」


 手下の1人がドラを鳴らす。しまった、仲間に合図を送っているんだ!


 ……しかし誰も来ない。やつらがざわめいていると、おじさんが涼しげに言った。


「奴らなら全員死んだぜ、残っているのはお前らだけだ」


 そうか! おじさんは僕を囮にしている間に……。


「くそ!」


 親玉が怒鳴りながら大きな斧を取り出して腕に取り付けた。


「ならばこの俺殺人斧のパラシュ様が直々に! 粉々にしてやる!」


 なんだあの斧! 大きい! とても人間が扱える代物じゃない! 


「オレの斧は右手と一体化している! ただの斧だと思うなよ!」


 そういうと斧男は、斧をすごい速さで振り回した。


「避けれるか! 体の回転を利用したおれの技!」


 ——斧乱地獄っ!


 速い! あんな速さの斧の連撃! 避けられるはずがない!


 ……しかし、迫ってきた斧は空を切り続けた。おじさんが避けたんだ。


 いや、突然”消えた”ように見えた。

 


 ——飛天御剣流 龍槌閃



 おじさんが着地した時に初めて、空中に跳んでいたことがわかった。恐ろしく素早く、そして“静か”な着地だった。


 「な、なんだ? なんとも……」


 その時、鉄の斧が地面に落ちた。まるで剥がれ落ちるようにきれいに。


 「お、オレの手が……が、が、が、があ! がはぁ……」


 真っ二つ。斧で丸太を割るように、体が真っ二つになりながら、斧男は息絶えた。


「ま、魔法使いだっ! 逃げろ!」


 それを見た周りの手下は、我先に逃げ出していき、まもなく、村から悪党は1人もいなくなった。


「ふん、殺し合いの最中にぺちゃくちゃ喋るやつは長生きしねえんだよ。 ……チッ、剣が曲がっちまった。すまんな小僧」


「ううん……、それよりもおじさん、大丈夫?」


「おじさんはよせ。まずは村の者たちを助けるのが先だ」


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