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1-1

「まてぇ!ガキ!」


 殺される! 止まったら殺される! 僕は足がちぎれんばかりに走る。


 森だ。森の中に紛れて逃げよう! 僕は子どもの頃から慣れ親しんだ遊び場に飛び込んで、呼吸が乱れる口を無理やりふさいで木の奥に隠れた。


「おい! どこだガキ! 今出てきたら脱獄の件は許してやる!」


 息を整える。あいつらは僕を見失ったようだ。よし、このまま水辺に逃げて、“あの場所”まで走っていけば。


 そう思った矢先、遠くに何か落ちているのが見えた。あれは人か? 近づいてみる。


 ……変な格好の大男が倒れていた。


 この人は誰だ? あいつらの仲間か? でも不思議とそんな感じはしない。僕は恐る恐る声をかける。


「ねえ、おじさん。大丈夫?」


 ……寝ている? 死んではいないみたいだけど。


 こうしている場合じゃない。僕は持っていた水筒を置いてその場を離れようとした。


「おい!ガキがいたぞ!」


 回り込まれた!


 前からあいつらが近づいてくる。見つかった!


 僕は背中に隠している短剣に手をかけて、注意深く奴らを見る。


「ああ!? 誰だお前は!」


 やつらが僕に向かって叫ぶ。いや、僕の後ろだ。僕は振り返った。


「小僧、水をくれたな。恩に着るぞ」


 先ほどの大男が水筒を片手に地べたに座っていた。


「誰だてめえ! ガキの仲間か!」


 ゆっくりと立ち上がる大男。……大きい。実際に立っていると、もっと大きく感じる。


「これから死ぬ奴に名乗っても意味ねぇよ」


 その大男は、瞬きする間もなく、奴らを切り伏せた。


 信じられない……。何が起こったんだ。剣も持ってなかったはず……。


 「おい、借りたぞ」


 男は僕の短剣をもっていた。って、この人、いつの間に!?


 大男はまたどっかりと座ると、胸のあたりをさすりながら、僕に問いかける。


「小僧、お前名前は?」


「僕はロシュ、ラタラ村のロシュだ」


「この辺の者か?」


「うん……、そうだけど。おじさんは魔法使い?」


「魔法は使わないが、剣は少々やる。お前は南蛮人のようだが、日ノ本の言葉が話せるのか」


「ヒノモト? 何それ?」


「妙だな……。いや、なんでもない。それよりもこの辺に村はないか? 腹ごしらえがしたい」


「村はあるけど……。危険で入れないよ。あいつらが来てから」


「あいつら……?」


 何ヶ月か前のことだ。シシオ軍団と名乗る盗賊が突然村を襲ってきた。

 奴らは僕たちの村を根城にして、もう一週間、僕は命からがら逃げ出してきた。

 

「そうか、賊が村に」


「うん……」


 おじさんは気がついたようにキョロキョロと周りを見渡す。


「そういえばこの辺に刀がおちてなかったか?」


「カタナ? それ何?」


 聞いたことがないものだ、楽器か何かだろうか? おじさんは思案顔で言った。


「……そうか、知らないなら良い。小僧、村の場所を教えてくれ」


「だめだよ! 殺されちゃうかもしれないのに」


「俺なら大丈夫だ。お前もここから早く逃げろ」


「僕は行く! 僕はもう16の男だ! みんなを守らなきゃ」


 僕には夢がある。こんなところで終われないんだ。


「ならばシシオ軍団とやらとはどう戦う?」


「抜け道からこっそり助けに行くんだ! 武器もある!」


「武器……?」


 僕はおじさんを連れて”あの場所”へ行く。


 村の外れ、山道を少し歩いて登っていくと、程なくして小屋に着く。


 お父さんの仕事場だ。


「ここは……。鍛冶場か」


「そうだよ、うちは代々鍛冶職人なんだ! ……ほらここ」


 僕は荒らされている鍛冶場の床下の箱を取り出す。奴らもここは見つけられなかったみたいだ。


 短剣が3振り、長剣が1つ、両手剣が二つ。これだけあれば十分だろう。


「貸してみろ、……ほう、これはなかなかのものだ」


 両手剣を軽々と片手で持つ。この人は本当に何者なのだろうか


「あいつらが来て、武器を没収するって言うから、急いで隠したんだ。その時抵抗したお父さんは連れてかれた……」


「それで、助けに行くってわけか」


「僕は……、父さんと母さんたちを助けたい!」


「ふん、お前みたいなやつは久しぶりだな」


「え?」


「小僧、村まで案内しろ」


「うん!」


「その代わり、絶対に死ぬなよ」


 おじさんの目を見てると本当に死ぬかもしれないと言う恐怖と、この人が一緒なら大丈夫と言う安堵が同時に襲ってきて、妙な感じだ。


 でも、みんなを助けなきゃ!


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