第三十一話 私はあなたの姉だから
「何そノ翼……その光ハ!? 見ていて虫唾が走るんだけド!?」
焦りを隠しきれていないジュリアは、茨を何十本も地面から生み出して私に一直線に伸ばした。
しかし、私の体から漏れ出る光に包み込まれ、成す術無く消滅してしまった。
「う、嘘でショ……あたしの瘴気が……!」
「もうあなたの瘴気は通用しないわ。さあ……終わらせるわよ」
私は背中の翼を使って宙に浮くと、翼を大きく羽ばたかせた。すると、数えきれないほどの沢山の羽根が、空に向かって飛んでいった。
「今こそ、この国と民を救う時! お願い、私の聖女の力よ!!」
スッと右手を上げると、それに呼応するように羽根達が辺りをヒラヒラと舞い始め……あれだけ酷かった瘴気の霧を浄化し始めた。
もちろん霧だけではなく、そこら中にあった茨や、瘴気でおかしくなってしまった貴族の人達も浄化し、元通りにしてくれた。さっきまで辺りは霧で視界が悪くなっていたのに、今では青空が見えるくらいだ。
……私の聖女の力が、どうしてこんなに強くなったのかわからない。でも、この力があれば、祖国も民も、大切な人達も助けられるわ!
「見渡した限りでは、ほとんど浄化に成功しているけど、まだ油断はしない方が……あ、あら??」
翼のおかげで空を飛べていたのに、ほんの少し油断しただけで高度が落ち始め、間もなく地上に戻されてしまった。
……なんでこんな翼が生えて飛べたのかもわからない以上、闇雲に飛んで頭から落ちて、大怪我をする可能性もあったし……無事に下りられて良かったのかしら?
「うぐッ……なにコの羽根……ち、力が抜けテいく!?」
まだ多くの羽根が舞い落ちる中、ジュリアは自分の体を抱きしめながら苦しんでいる。
きっと私の聖女の力が、ジュリアの体を苦しめる瘴気を浄化しているのだろう。
このまま放っておいても、浄化はされると思う。でも、ジュリアが逃げてしまう可能性もあるし、一秒でも早く瘴気から解放してあげたい。
そう思った私は、ゆっくりとジュリアに近づいていくと、茨を伸ばして抵抗をしてくる。もちろん、そんな抵抗をしてもなんの意味もなかった。
「な、ナラ……あたしの力を、モット引き出すだケだ……!」
「この気配は……やめなさい! それ以上は、もうあなたの体が持たない!」
「うるサいッ! どうせあたしは……もう死ぬだけなんだ! あたしだけが死ぬナンて……そんなの許さナい!」
自暴自棄になったジュリアは、更に瘴気の力を増していく。その瘴気の力は凄まじく、強くなった聖女の力に身を守られている私ですら、気分が悪くなってくる。
このままだと、私は耐えられても、アルベール様や貴族の方達が耐えられない。この羽根を通して結界を張るしかない。
「お願い、みんなを守って!」
私は先程の羽根を通して、皆に結界を張る。ここからではうまくいったかどうかはわからないけど、今の私に出来るのはこれしかない。
「……オ、ネエ……サマ……」
「ジュリア……?」
「クル、シイ……タスケ、テ……」
瘴気の力を更に解放した影響で、肌が完全にアザに覆われ、綺麗だった髪も真っ白に染まってしまったジュリアの口から出たのは、救いを求める声だった。
「ええ、もちろんよ。ずっと姉らしいことが出来なくてごめんね。すぐに……苦しみから解放してあげる」
ジュリアを助けたい。その強い気持ちに、聖女の力が更に応えてくれたのか、私の背中の翼が更に大きくなった。
その翼を使い、私は自分とジュリアを覆うことで、ジュリアが逃げられなくすると同時に、周りにこれ以上被害が及ばないようにした。
「タス……ア、アァ……シネ……シネ、シネシネシネ!!」
「ジュリア……!!」
ジュリアは今までで一番大きな茨を出して、最後の抵抗をしてくる。その茨は、私に向かいながら、更に細い茨を生み出す。
四方八方から襲い掛かる茨達。傍から見たら、このまま茨に潰されて終わり……しかし、私の翼から光の矢のような物が沢山発射され、茨を全て打ち抜いた。
「大丈夫、大丈夫よ……」
ゆっくりと、一歩ずつ近づく私から逃げるように、ジュリアは尻餅をつきながら、後ずさりをした。
そんなジュリアの元にまで来た私は、静かに手を差し伸べた。
「もういいのよ……怯えなくていいわ。あなたは一人じゃない……私がいるわ」
「…………」
「瘴気のせいで、ずっと怖かったのでしょう? すぐに私が治してあげる」
悪者を演じていた時の私ではなく、本来の私を前面に出して語り掛けると、ジュリアは戸惑いながらも、私の手を取ってくれた。
ジュリアとこうして心を通わせて手を取り合うなんて、初めてのことだ。ジュリアのことを大切にしていたつもりだったけど、こんなことすら怠っていたなんて、姉として失格だわ。
「どうしテ……どうして助けてくれるの……? あたし、ずっと酷いことをしていたのに……」
「何を今更なことを聞いているの? 私はあなたのお姉様よ。大切な妹を助けるのは、当然のことだわ」
「……お姉様……ごめんなさい……私、小さい頃からずっと……お姉様の優しさにつけこんで……ずっと利用してて……!」
「いいのよ。さあ、疲れたでしょう? ゆっくり休んで」
「うん……!」
ジュリアの手を引っ張り、私の胸でジュリアを出迎える。そして、私の持つ聖女の力を使って、ジュリアの浄化を行った。
ずっと間違えてばかりだった。騙されたと知って、ショックで逃げだしてしまった。でも、やっと……やっと姉として、あなたを守れた……そんな気がするわ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
少しでも面白い!と思っていただけましたら、モチベーションに繋がりますので、ぜひ評価、ブクマ、レビューよろしくお願いします。
ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【★★★★★】から出来ますのでよろしくお願いします。




