その98
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
「ニッキ!」
照れながら坂口さんが、僕を呼んだ。
「何?…坂口さん。」
そう僕が答えると、坂口さんの顔が曇った。
「え?どしたの?なんか急に怒ってる?」
慌てて僕が聞くと、「だってえ…あたしがニッキって呼んでるのに…坂口さんって…呼ぶから…。」
坂口さんは不満そう。
「あ、やっ…そ、それは〜…」
坂口さんが僕を「ニッキ」と呼んでくれるのは、全然構わないってのか、逆にちょっと嬉しかったりするけれど、そんなに急に、僕も、じゃあ「メグちゃん」なんて呼べないよ〜。
僕からの言葉をじっと待ってる坂口さん。
素直に心のまま、たった今思ってたことを口に出せばいいだけ。
でも、僕にはできなかった。
沈黙が続いた。
「さ、坂口さん!俺、ごめん…まだ、そうすぐには、名前で呼ぶのはちょ…。」
そこまで言いかけた時、すかさず坂口さんが被せてきた。
「いいよ、わかった!じゃあ、今まで通り、坂口さんでいいよ…あ、でも、あたしは住田君のこと、ニッキって呼んじゃうんだからね〜!」
そう言うと、坂口さんは笑いながら走り出した。
なんかごめん。
僕は心の中で謝った。
それと同時に、なんでさっき僕はあんなこと言っちゃったんだろう?と思った。
沈黙が怖かったんだろうか?
それとも…
「ニッキ!遅いよ〜!早く!早く〜!」
走って先に行ってしまってた坂口さんが、笑顔で僕を呼ぶ。
「ま、待って〜!」
僕は慌てて、坂口さんの後を追いかけた。
教室で坂口さんが、同じ班の元野球部の一文字と仲良さげに笑って話している。
僕にはそれがちょっぴり気になった。
いつもと同じ帰り道。
毎度お馴染みのメンバーで帰ろうと思っていたら、今日は坂口さんがいない。
「あれ?坂口さん…。」
秋田さんによると、今日は坂口さん、一文字と一緒に帰るそうだ。
「なんで?」と更に尋ねると、「なんかね、推し仲間になったみたい。」と秋田さん。
「ふ〜ん」と返すも、僕の心はどこかモヤモヤしていた。
よほど浮かない顔だったらしく、気づいたテルが声をかけてくれた。
「何?ニッキ、ちょっと寂しいの?」
「はあ?何言っちゃってくれちゃってんの?全然、ぜ〜んぜん、寂しくなんかねえし。」
「そう?ふ〜ん、そうなんだあ〜…そうなんだって!りなちゃん。」
テルに続いて、秋田さんまでが「へ〜え、ふ〜ん。」と含みがある言い方。
「えっ?ちょ、ちょっと!ちょっと!2人!2人!なんかさ、誤解してない?」
僕が慌てた形で尋ねると、テルと秋田さんは顔を見合わせて、「え〜?なんの誤解?」と、いやらしい口調で返してきた。
「も〜う!先に帰るよ!」
そう言うと、2人を残して、僕は駆け出した。
最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。お話はまだちょっと続きますので、引き続き読んでいただけたら嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。




