その96
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
気がつくと、辺りは随分と暗くなってきていた。
グラウンドの真ん中のキャンプファイアーの火が、なんだか妙にいい雰囲気。
ずっとそのまま眺めていたい様な、そんな気分になる。
そろそろ花火が始まる。
手持ち花火を受け取ると、ろうそくから火をもらった。
チリチリチリチリ。
線香花火の小さな小さな花が咲く。
僕らはじっとそれを見つめている。
坂口さん、怒ってるのかな?
僕がゴニョゴニョしてたから。
なかなか返事をしなかったから。
どうしよう…あれっきり、近くにいても全然こちらを見ない。
僕の次の、踊りのパートナーだったヒロキにさりげなく探りを入れたけれど、坂口さん、特に変わった様子もなかったって。
普段通りに、ケラケラ笑って、「足大丈夫?」って心配してくれたって言ってたな。
坂口さんに、嫌われちゃったのかな?
だったら…だったら…寂しい…かも。
ぼんやりと線香花火を見つめていると、だんだん火花が小さくなって、そのうち少し大きくなった丸いオレンジが、静かにポトンと落っこちた。
「あれ?ニッキ、次のやらないの?」
テルが声をかけてくれた。
「あ…ああ…うん…なんか…いいや…」
それだけ告げると、僕は「トイレ」と言ってその場を離れた。
他のクラスの奴らも、みんな楽しそうにしている。
男ヤマシタと、女子のヤマシタさんが一緒に花火をしている。
仲良く楽しそうにしているけれど、前の様に「まゆちゃん」「ハル君」とは呼び合っていない。
「ヤマシタさん」と「ヤマシタ君」なんて、幾らかの距離感がある。
それがなんだか、僕には切なかった。
ヨロヨロと戻って来ると、みんな楽しそうに笑っていた。
「あははははは〜!いや〜、笑った、笑った〜!だってさ〜、坂口さんってば、ニッキが走ってる最中、ずっとハシムニダ!ハシムニダ!って言ってんだもん!俺ら全員で、すんげえツボにハマっちゃって!笑い死ぬかと思ったよ〜!」
え?テル?今、なんて?
「あ〜!ニッキ!今さ〜、お前の話してたんだけどさ〜!」
聞くと、坂口さん、みんなが応援で「走れ!住田!」って言ってるのが、「走れ!住田!」「走れ!住田!」「はしすみだ!」「ハシムニダ!」って聞こえるから、思い切ってそう叫んでみたって。
1人だけ「ハシムニダ〜!」って。
え〜〜〜〜っ!何?それ〜〜〜!
そんなの全然、僕の応援でもなんでもないじゃんかよ〜!
確かに聞き覚えのある声だとは思っていたけれど、あれ、坂口さんだったんだ〜!
そう知ると、僕は堪えきれなくなって「ぷ〜っ!ぶふふふふふふふ!」と吹き出してしまった。
あ〜、おかしい!
バカだ〜!坂口さん。
そうしていると、大きい花火が始まった。
テルはいつの間にか秋田さんのことを「りなちゃん」と呼んでいる。
そう言えば、秋田さんに偶然会って、スポーツドリンクをもらったあの時、秋田さん、確かテルのこと、「吉野君」じゃなく「テル君」って言ってたっけ。
そっか。
2人は僕の知らない間に、ちょっとだけ距離が縮んでたんだね。
僕は…どうしよう…まだ、坂口さんって、呼んでいたい気もするけど…
そう言う間柄でも、いいって思ってるんだけど…
最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。お話はまだまだ続きますので、引き続き読んで頂けたらとってもありがたいです。どうぞ宜しくお願い致します。




