その93
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
やっぱり男ヤマシタは、かっけえ!
別れても好きな女子にあんな風に人目も気にせず、立派な声援を送っちゃうところに、僕はしびれた。
女子のヤマシタさんから、元バスケ部の一橋にバトンが移ると、僕ら1組は再び先頭に躍り出た。
白熱している中、霧が徐々に濃くなり始め、小雨っぽくなってきた。
それでも競技は中止なんてしない。
それぞれのクラス、残り3〜4人で終わるのだから。
「男気ヤマシタ塾」の塾生、元バスケ部の糸屋からバトンを受け取ると、アンカーの男ヤマシタが走り出した。
2位の4組の元サッカー部主将の松宮が、ヤマシタのすぐ後ろにつけている。
いつ抜かれてもおかしくない位置。
僕らだけじゃなく、4組の声援もより一層大きなものとなっていた。
「行け〜!ヤマシタ〜!行け!行け!行け〜!」
「ヤレ〜!松宮!追い抜け〜!やっちまえ〜!」
わー!わー!わー!わー!
当然、さっき、別れた彼氏の男ヤマシタから熱い声援をもらった、女子のヤマシタさんも、彼に負けない大声援!
「行け〜!ハルく〜ん!大丈夫!大丈夫!行ける!行ける!頑張れ〜!大好き〜!」
あれ?と思ったけれど、それよりリレーの展開が大事だ。
そうしている間に、ジワジワと雨足が強くなってきた。
アンカーは、みんなと違って、コーナーをぐるっと一周した後、最後の直線を突っ走るとゴール。
走る距離が長い為、追い抜くチャンスが転がっている。
「行け〜!ヤマシタ〜!男ヤマシタ!頑張れ〜!」
「走れ!走れ!走れ!走れ!行け〜!ヤマシタ〜!ゴールまでそのまま突っ走れ〜!」
「抜け!抜け!追い抜け〜!松宮〜!イケる!イケるぞ〜!お前なら、追い越せる!」
みんな声の限りに叫んでいる。
ヤマシタの後ろにピッタリつけていた4組の松宮が、最後の直線でスパートをかけて来た。
ヤバい!抜かれる!
僕ら1組全員がそう思うも、ヤマシタは抜かれなかった。
雨の勢いが増し、みんな濡れてビッシャビシャ。
それでも、リレーは終わらない。
顔に雨粒が激しく当たり、先頭の2人だけじゃなく、後ろの2人も、応援している僕達も、みんな前がよく見えない。
バシャバシャと、水浸しになってきたグラウンドの土を踏み、ヤマシタが走る、走る!
追いついた4組松宮も、泥がTシャツまで跳ね上がっている。
先頭の2人の激走に、僕らだけじゃなく、その場で見守っている面々が、祈る様な気持ちでレースの行方を固唾を飲んで見つめていた。
そんな時、4組の松宮がヤマシタの横に並んでしまった。
それぞれ横で走る相手を意識すると、スピードが増していった。
後ちょっと!後ちょっとのところで、2人ほぼ同時にゴール!
審判の先生だけでは、どちらが先にゴールしたのか判定できず。
まさかのビデオ判定となった。
2年の放送係がゴールテープの真横で、しっかりと録画していたのだった。
数分待った。
そして、ようやく結果が…
な、なんと、2人同着で、1組と4組が同時優勝となった。
最後のフォークダンスを残したまま、雨の為、やむなく僕ら3年生にとって、中学生活最後となる、「校内陸上競技大会」は幕を閉じた。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。お話はまだまだ続きますので、引き続き読んで頂けたら、とっても嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。




