その92
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
その後、数人は先頭をなんとか保ってくれた。
けれども、港さんにバトンが渡ると、程なく3組の城島さんに追い抜かれた。
そこから僕らのクラスは、ドンドンと先を越され、とうとうビリに。
最後尾を走る八紘さんからバトンを受け取ったベルウッドこと、鈴木の猛追が始まった。
そう言えば、練習中、あいつ、妙なイメージトレーニングでスピードが上がると言っていたっけ。
どういうイメージがベストかと尋ねると、「自分の目の前にいる、裸の美女を追いかけるイメージ」などと、しれっとほざいていた。
「馬鹿か?」とみんなで笑ったけれど、今、あいつの中でそれが爆発しているらしい。
両手を前に突き出して、何かを追いかけている様な走り方。
多分、あいつは頭の中で、「おっぱい!おっぱい!待て〜!おっぱい〜!」てな具合で叫んでいるのだろう。
そんな顔をしている。
声は出ていなくても、口の動きが「おっぱい待て〜!」と言っている。
なんだかなあ。
ビリから脱出して、2位まで浮上したんだから、万々歳なんだけど。
ベルウッドからバトンを受け取ったのは、テル。
テルも練習の時、脳内で「ヒグマに追いかけられてる」イメージで走ると、自然と早く走れると豪語していた。
まあ、確かに、ヒグマに遭遇してしまったら、本当は走っちゃダメらしいけど、やっぱりどうしてもその場からすぐにでも離れたくて、全速力で走ってしまいそう。
「ひゃ、ひゃあ〜!助けて〜!誰か助けて〜!」なんて、テルは頭の中で叫んでいるんだと思った。
そんなテルの「絶体絶命感」漂う走りは、易々と先頭を走る4組の加藤さんを追い抜いた。
テルからバトンを受け取った元手芸部の石川さんの次は、僕の出番。
僕はテルが戻って来た場所に移動すると、その場で少し腕や足を動かし、石川さんに声をかけながら目で追った。
近づく石川さんを振り向きながら確認し、少しづつ走ってようやくバトンタッチ。
僕は最初の100メートル走の時の走りをイメージした。
コーナーを曲がる際、体が若干内側に倒しすぎてしまい、バランスを崩しそうになるも持ち直した。
「ニッキー!走れ!走れ!走れー!」
「行っけー!住田!行け!行け!行けー!」
「住田く〜ん!しっかり〜!」
クラスのみんなが応援してくれている。
「走れ〜!住田〜!」
「頑張れ〜!住田〜!」
もうすぐ次の走者、女子のヤマシタさんへバトンを渡そうという時、不意に「ハシムニダ〜!ハシムニダ〜!」と言う声。
必死に走りながらも、それが気になって仕方がない。
僕は頭をブンブンと横に振りながら、少し走り出したヤマシタさんへバトンを渡そうと思ったら。
そこで再び「ハシムニダ〜!」
えっ?
そう思った瞬間、まだ女子のヤマシタさんが、ちゃんとバトンを握っていないのに、僕は手から離してしまった。
カン、コロコロ、カララ〜ン。
僕とヤマシタさんが慌ててバトンを拾っている間に、2位の位置につけていた2組の五月女さんに抜かされてしまった。
「ごめっ!」
僕が小さく謝ってるうちに、ヤマシタさんはコクンと頭を下げてコース上へ。
「大丈夫」と僕に合図をくれたヤマシタさんだったが、やはり動揺が仇となり、コーナーに差し掛かった辺りで、3位の3組の矢作にも抜かされてしまった。
ごめん、ヤマシタさん。
ホントごめん!
僕はヤマシタさんの方を向いて、両手を合わせ心で謝った。
すると、順番待ちをしている男ヤマシタが、今までの応援よりも一際大きな声で、「まゆちゃ〜ん!頑張れ〜!まゆちゃ〜ん!走れ〜!走れ〜!」と、口元に両手をあてがい、立ち上がって声援を送る。
クラスのみんなは一瞬戸惑った様子を見せたが、すぐさま男ヤマシタに続き、女子のヤマシタさんを応援した。
男ヤマシタの声を耳にしたヤマシタさんは、急激な猛追を開始。
最下位の4組の中島にも抜かれ、再びビリだった順位は、瞬く間に2位まで回復したのだった。
最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。お話はまだまだ続きますので、引き続き読んで頂けたら、とっても嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。




