その90
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
競技が終わり、奪った鉢巻を相手方に返す。
その時、男気ヤマシタ塾の奪った鉢巻の数の多さったら。
あんなにいっぱい取ったのに、最後は緑のうさぎ組のやつに奪われたそうだ。
僕は自分達のことでいっぱいだったから、そんなに沢山の鉢巻を奪って、大活躍してたなんて後になってようやく知った形。
さっきまで、ちょっとでも「なんだよ〜!男気ヤマシタ塾〜!」なんて、頭の中で文句をいっぱいたれてた自分が、心の底から恥ずかしかった。
そして、心の中で、男気ヤマシタ塾の面々に、改めて「さっきはごめんなさい。」と謝った。
1年2年の全員リレーが終わって、僕ら3年の全員リレーが始まる頃、パラパラッと小さな小さな雨粒が、汗だらけの僕らの上から降りかかってきた。
霧の様な、もやの様な程度だったので、リレーは当然、やることに。
各クラス、走る順番は自由に設定できる。
なので、練習の時に足の速い者と遅い者を、どういう順番で走らせるか、クラス全員で何度も何度も議論した。
ヒロキは騎馬戦の後、眉間に皺をよせ、顔を歪ませている。
足が相当痛いんだ。
気づいた僕とテルで、走る順番の変更を申し出た。
本当は、ヒロキは出ない方がいい。
そうわかっていても、本人は「最後だからどうしても出たい。みんなには絶対に迷惑をかけないから。」と言う。
僕達はヒロキの熱い願いに応えるべく、走る順番を再構築。
ヒロキをトップバッターに据えた。
一番先に走ってもらい、戻ってきたらすぐに足の手当てをやり直す。
その方向で決まった。
いよいよクラス全員参加のリレー。
これが僕達3年生の「校内陸上競技大会」の集大成とも言える種目。
ならば、俄然やる気が出るに決まっている。
この競技に残っている力全部を出し切る勢い。
最後の最後にやるフォークダンスなんて、気楽なもんだ。
それよりもこれ!
これに命をかける気持ち。
楕円形のコースの真ん中辺り、スタートラインに1から4組までのトップバッターが並ぶ。
僕らのクラスはヒロキ。
怪我をしている右膝の分厚いサポーターが、痛々しい。
だからって、他のクラスの奴らは決して手を抜かないで欲しい。
これは真剣勝負なのだから、文字通り「真剣」に戦ってもらいたい。
いくらヒロキが怪我人だからとて、そういう妙な忖度はかえって邪魔だ。
僕達のクラス全員が、そんな気持ちだった。
最後だからこそ、ちゃんとやり遂げたい。
ヒロキは鉢巻を締め直すと、ふ〜っと大きく深呼吸。
そのまま前だけを見て、後ろで出番を待っているクラスメイトに、肩越しのグーサイン。
かっけえ〜!ヒロキ!頑張れ!ヒロキ!
僕らはスタート前から、応援を始めた。
最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。お話はまだまだ続きますので、引き続き読んでいただけたら嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。




