その8
続きですが、新しいエピソードです。
今度の週末、僕はテルと2人で家からは少し遠いショッピングモールまで、自転車で行く約束をした。
割と頻繁に2人とか、他のメンツ2〜3人なんかも連れ立って行っている場所だけど、今回は何故かものすごく緊張している。
いつもみたいに本屋に寄ったり、ゲーセンに行くのなら、こんなに緊張する訳ないんだけどさ。
だって、生まれて初めて「自分で服を買う。」んだから。
テルに「服買いに行くの付き合って。」と言われた時、僕は衝撃を受けた。
だって、服って、私服って、自分で買った試しがないから。
みんなも私服はお母さんが勝手に買って来たり、やっぱりお母さんが勝手に通販で買ったり、お母さんと一緒に出掛けて買ってもらうとか、家族で出掛けて買ってもらうとか。
そういう形が当たり前って思ってたから。
それにうちのお父さんも確かそんな感じで、お父さん1人で洋服買って来たのなんて、見たことなかった気がする。
それなのに、テルは、僕と同い年のテルは、もうとっくに自分で好きな洋服を買ってたなんて。
信じられなかった。
そもそも「自分で好きな洋服を買う。」って発想すら、まるでなかったな。
何にも考えずに、お母さんが勝手に買った服を、そのまま着てた。
この間、「え〜!これはちょっと流石にヤダ〜!」って思ったのは、お父さんがゴルフ大会で貰ったんだか、買ったんだかわからない、ゴルフ場の景色の絵がババーンと描かれたTシャツ。
絵だけだったらまだマシだったと思うけど、後ろにゴルフ大会名と大会日時が書いてあるんだもの。
「家用」として着てるけど、他は特にそれほど「嫌だ。」とかなかったから。
だから、テルが「お年玉」で洋服の福袋を何個も買ったと聞いて、びっくりしちゃった。
僕なんかお年玉で、漫画とかゲームとか、後は、え〜と、漫画とか、小説も少し買ったし、それとペンとかの文房具でしょ、それと漫画に、スマホの新しいケースと、後は漫画ぐらいしか買ってないのに。
テルは自分の好きな洋服を買ってたんだ。
あ!だからか、遊ぶ時、なんかテルの感じがカッコよかったのは。
どことなくテレビに出てる人っぽい格好だもんな。
そっか、そっか!
テルって、「おしゃれさん」だったんだ。
な〜る!
腑に落ちたのはいいが、その後、僕はどんな服を買えばいいのか、今の流行りを色々調べたり、持ってる服を改めて全部出して確認して、どういう物を買えばいいのか悩み、考えて、考えて。
お母さんにテルが洋服を自分で買うって話をしたら、「じゃあ、あんたも一緒に買って来なさいよ。」と、信じられない軽いテンションで、さらっと財布から1万円札を手渡してくるから。
1万円なんて、多すぎるんじゃないだろうか?
そもそも洋服って、一体いくらぐらいなんだろう?
ああ、こんな時、「コンシェルジュ」みたいな人がいたらなあ。
ドギマギ興奮を抑えきれなかった僕は、結局、それを考えて一睡も出来なかった。
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
お話はまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。




