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その48

お話の続きです。

どうぞ宜しくお願い致します。

街の回転寿司屋をくまなく巡るも、やはりどこも行列ができている。

母が疲れた様に、ボソッと呟いた。

「あそこで待ってたら…。」

その一言に父が激怒すると思ったら、同じく「そうだなあ。」と、萎れた様に返す。

えーっ!それ言っちゃう〜?

僕はそう思った。

そんな中、信号が変わって停止線で車が止まった。

少しだけ開けていた窓から、カレーのいい匂い。

あ〜、カレー。

車内の全員が一斉に、助手席側の横に注目。

そこに全国チェーンのカレー専門店。

みんなの喉がゴクリと鳴った。

「どうする?」と母。

一瞬迷った様子の父が、首を左右に振った。

そのタイミングで信号が替わった。

カレーはズルい。

いつもそうだ。

信じられない程の美味しい匂いの誘惑で、みんなの心を惑わす魔性の食べ物。

食べれば美味しくて、案外遠くまで匂うカレー。

学校や塾の帰り道などの空腹時、よそのお宅から漏れ出てる美味しい匂いに、今まで何度やられたことだろう。

3時間目の授業の辺りから、教室までうっすら届く給食のカレーの匂いに、学校の全員が負けそうになる。

うどん屋や蕎麦屋でも誘う。

お店に入る前は、冷たいざるにしようと決めていても、中に入るとカレー臭。

そすと、途端にカレーうどんや、カレー蕎麦を食べたくなっちゃう。

は〜、カレー…食べたいなあ…。

僕の心はぐらぐらだった。


巡り巡って結局最初の回転寿司屋に戻ると、駐車場は先ほどの様な混雑ぶりではなかった。

けれども、出入り口付近の待合所には、人がいっぱい。

父も母も僕も、多少待つことになってもいいと、気持ちを決めた。

席が空くのを待っている間、僕の脳裏に「徒労」と言うワード。

あ〜、「徒労」ってこういうことだったんだ〜。

このお店の駐車場に並ぶのを諦め、街を彷徨ったあの時間。

改めて「徒労」の意味を噛み締めた僕は、それを思い出していた。

お昼なんかとっくに済んだ頃、ようやく僕ら家族はボックス席に案内された。

2〜3度、空腹の向こう側まで行ってしまっていた。

「回転寿司」とは名ばかりで、「高速レーン」で注文したものが素早く自分達の席まで運ばれるタイプのお店。

今回は、初詣で帰省していた兄も一緒だった時のお店の様な、透明なカバーで覆ってるお皿が回ってくるところじゃない。

タブレットで、食べたいものを食べたいだけ注文できるのが楽しくて嬉しい。

早速、父がタブレットの操作を始めかけた。

それを、「ちょっと待って!」と母が止めた。

「何?」と僕が聞くと、母はおもむろにバッグからスマホを取り出した。

父と2人、「何が始まるんだろう?」と思いながら、様子を伺っていると、母はスマホケースに入れていた1枚の紙切れを出した。

「何?それ?」

「ああ、これ?これは…。」

父と一緒に見せてもらうと、メモにぎっしり寿司ネタの名前。

マグロ、サーモン、鰤ないしハマチ、ホタテ、えんがわ、エビ、イカ、煮穴子、ウニ、真鯛、いくら、〆さば。

父と2人で笑うのを我慢して、更に尋ねると、母は「あ〜、食べたいネタをね、昨日のうちにメモしておいたのよ。」と、何食わぬ顔で教えてくれた。

そうだったんだあ。

お母さん、食べたいお寿司をわざわざメモして…。

父と僕は、大声で笑いたかった。

だけど、それをやっちゃうと、母が悲しむだろうと思い、ただただ体を小刻みに震えるだけで我慢した。

最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。

お話はまだまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

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