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その29

前回のお話の続きです。

どうぞ宜しくお願い致します。

教室に着くと、クラスメートや他のクラスのやつらまで、わざわざ僕のズボンを見て騒いでいる。

恥ずかしすぎて重苦しい気持ちのまま鞄を置くと、僕はフラフラと職員室へ向かった。

テルと、もうだいぶ足が良くなってきたヒロキが後ろから心配そうについて来てくれた。

絶対、怒られる。

そう覚悟して職員室に入ると、ヨーコ先生の傍にうっすら他の先生が集まっている感じ。

あ〜、ヤダな。

これ、全員にこってり絞られるやつだ。

そう思うと、僕は泣きそうになった。

ヨーコ先生と対面する形で、僕は用意されていた丸椅子に腰掛けた。

「んっ、んんっ。」

先生は少しわざとらしく咳払いをすると、「住田くん…今日はまた、どしたの?そのズボン…。」と困った様な顔で優しく尋ねてきた。

右左それぞれの膝にそれぞれ乗せたゲンコツをギュッと強く握りしめ、僕は怒られるのを覚悟の上で、長い長い昨日からの話を始めた。

そう、あのチャックが壊れたところから。

ヨーコ先生も、周りになんとなく集まってた先生達も、僕の話の入り出しからぷっと吹き出すのを我慢している雰囲気。

まだ前半の数学の時間にあてられて、前の黒板までの道のりの辺りで、ヨーコ先生はカバンからハンカチを出して、口元を押さえた。

「お尻出し事件」の辺りで、先生は「あ、ごめんなさいね、住田くん、ちょっと…ちょっと一旦ストップしてもらえるかしら。」

そう言うと、ハンカチで両目の涙を拭き、机の上のティッシュを2枚取って静かに鼻をかんだ。

「ああ、ごめんなさいね、どうぞ、続けて、続けて。」

「ああ、それで…。」

話がヒロキの辺りになると、ヨーコ先生は小刻みに震えながら、聞いてくれた。

「…と、言う訳なんです。」

僕がすっかり事情を話すと、ヨーコ先生は「そっか、わかったわ。話してくれて、ありがとうね。じゃあ、教室に戻っていいわよ。先生は後から行くから。」と、僕の肩をポンと軽く叩いた。

立ち上がると、なんとなく集まってた先生達が、何故か僕に向かって拍手をしたり、「頑張れよ!」などと声をかけてくれたのだった。

ピョンバシも僕の近くまで来て、両方の肩を軽く掴んで、「そっか、そっか。」と涙目。

多分、あの涙目は感動のものではなく、笑うのを我慢の方だと思った。

職員室を出ると、テルとヒロキが待っててくれた。

教室に向かおうと僕らが歩き出すと、職員室から大きな笑い声が聞こえた。

さっきまで恥ずかしさや、叱られるんじゃないかと不安だった気持ちが消え、僕は「ウケた。」と嬉しかった。

先生達に笑われて、「失敬な!」なんてプンスカ怒ったりはしない。

むしろ、「ウケた」方が嬉しいのだ。

こんな形で、事実だけど、自虐ネタっぽいエピソードが受け入れられたことで、昨日の悪夢の様な出来事が、全部成仏したのだった。

最後まで読んで下さり、本当に本当にありがとうございました。

お話はまだまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

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