その28
前回のお話の続きです。
どうぞ宜しくお願い致します。
「くれる」とヒロキは言ったけれど、僕は「あ、いや、悪いから、借りるよ。」と返した。
ヒロキのお兄ちゃんの「ボンタン」を初めて見ちゃった時に、心の中で「無理〜!お母さんを説得して、新しいの買ってもらおう。」と思ったから。
そんな僕の心中を察したのか、察してないのかわからないけれど、ヒロキは笑顔であっさり「そう?わかった〜。」と言った。
外に出ると、すっかり暗くなっていた。
僕は急いで家に帰ると、早速母にズボンを見せて、説得を開始。
母にしたら非常に懐かしい「ボンタン」を広げると、丁度のタイミングで帰宅した父とゲラゲラ大笑い。
「ヒロキくんのお兄ちゃんと、うちのお兄ちゃん、確か同い年だったよねえ。」と母。
「うん、確かそうなはず。」
すると、ネクタイを緩めながら父が会話に参戦してきた。
「ああ、ほら、響が中学生の頃さ、俺らが学生時代の時のヤンキーの漫画が、ドラマ化して大ヒットしてさ〜。」
「あ〜、そうそう、そうだった、そうだったわ〜…確かあのドラマ、映画化してたわよねえ。それで、響たちの中学でも、ああいう制服が流行ってて…。」
兄が中学生の頃、その手の「加工制服」が大流行だったらしい。
僕は小学生だったから、その辺の詳しいことは知らない。
父と母はその後しばらく、自分達の学生時代の話で盛り上がっていた。
ちなみに「響」は兄の名前で、僕の名前は「錦」だ。
横で2人の話を聞きながらだいぶ待った。
ようやく話が途切れたところで、説得の続きを開始。
そしたら、次の土曜日にみんなでリサイクルショップへ行くことになった。
母によると、そこには中古の制服も置いているそうだ。
次の朝、僕はヒロキの顔を立てて、「借りている」太いズボンを履いて登校した。
それを履くには、相当な勇気が必要だった。
次の土曜日までの残り3日を乗り切れば、普通のズボンに戻れる。
正直、朝、悩んで悩んで。
ヒロキのお兄ちゃんのボンタンを履くか、お母さんが修復してくれた股間が目立つ方を履くか。
もしくは死ぬほどダサい、学ランの下にジャージのズボンで行くか。
昨日の今日だからと、僕は「ボンタン」を選んだ。
ヒロキのお兄ちゃん、僕よりも10センチも背が高いのに、ズボンの丈は直さなくても丁度良かった。
案の定、登校中、みんなの視線は僕の履いているこれに集中していた。
同じ中学校の生徒だけじゃなく、道行く全員の視線が僕のズボンに釘付け。
ここまで注目されると想定していなかった為、途中、テルやヒロキと合流するまで、ひとりぼっちで恥ずかしいのなんの。
仲間が加わると、途端に僕は妙な高いテンションになった。
学校の玄関で担任のヨーコ先生に「後で職員室に来るように。」と言われた。
最後まで読んで下さり、本当に本当にありがとうございました。
これからもまだまだお話は続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。




