その24
前回のお話の続きです。
どうぞ宜しくお願い致します。
ジャージは教室の後ろの棚だった。
僕はジャージに履き替える作戦を諦め、椅子に腰掛けたままズボンのチャックを縫う作戦に変更。
早速、机の中から裁縫箱を取り出した。
こんなピンチの時、僕は自分の席が廊下側の壁の横で良かったと思った。
もしかすると、神様がいずれこうなるとわかってて、あえてこの場所になる様、席替えのくじ引きを操作してくれたんじゃないか?とすら考えてしまった。
クルッと壁側を向き、教室のみんなに背を向ける形になると、僕は前かがみの姿勢で開いてるズボンのチャックを見た。
すると後ろから「な〜にやってんの?」とテル。
一瞬、僕はテルに今の状況を伝えようか、伝えまいか迷った。
だけど、そんな僕の心なぞまるで無視するかの様に、すぐさまテルに全部バレてしまった。
テルは軽くはははと笑ったが、その後、真剣に僕のチャックを塞ぐ大作戦に協力してくれた。
手縫い用の糸は「細口」とあるが、慣れない手つきで針に糸を通すのはなかなか難しかった。
もしかすると、針穴の大きさと、糸の太さが合ってなかったのかもしれない。
糸の先をちょろっと口に含んでから、歯で糸を噛んで針穴の形と同じ様にすると、ヒュルっと簡単に糸が通った。
家庭科で習った通りに糸の端っこを玉結び。
若干、結び目が大きめになってしまった。
そして、いざ開始!
開いたチャックの下の方から、チクチクと針を動かしていく。
途中、針の先がチクっと左手の人差し指に刺さった。
一瞬の痛みの後、まち針の先っぽぐらいの赤くて丸い玉がぷわっと膨らんだ。
いてて。
僕はそれをペロッと舐めると、再び作業に戻った。
なんとか休み時間の間に無事に縫い終えたのだから、そんなに長い時間の作業じゃなかったんだと思う。
けれども、自分でも信じられない集中力でチクチク縫ったから、なんだか終わった後、どっと疲れた。
「これでよし!完璧!」と思ったんだけど、テルに「玉結びが出てる。」と指摘された。
「えっ?嘘?」
「ホント!ほら、ここ。」
立ち上がって確認すると、確かにテルが指差した場所に大きい結び玉が見えてる。
「あっ!やっ!え〜っ!やり直す〜?」
僕は自分にがっかり。
家庭科の先生が、「結び玉は見えない様にする。」って言ってたのを、こんな場面で思い出した。
「あっ、やっ、そのままで、大丈夫なんじゃね?」とテル。
黒いズボンに黒い糸だから、余程の近さじゃないとわからないと思うそうだ。
「わからない」と断言してくれたらいいのに、「と思う」って、ちょっと弱いんだよなあ。
じゃあ、わかる人にはすぐわかっちゃうってことじゃないか。
その割合もフィフティフィフティって。
あ〜〜〜。
まだ2時間目が終わっただけ。
6時間目までどうするよ?
最後まで読んで下さり、本当に本当にありがとうございました。
お話はまだまだ続きますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。




