その100
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
「なんかさ、石川さんと仲良いね。」
いつもの帰り道、坂口さんが急にそう言った。
「あ…その…仲良いって…それほどでもないと思うけど…。」
僕がそう答えると、少し黙ってから、坂口さんが続けた。
「そう…かなあ?だって、壁新聞の時だって、ものすごく楽しそうに喋ってたじゃん。」
坂口さんの口調に少し棘がある。
なにか気に食わないのかもしれないと思った。
けれども、僕も思い切って気に食わないと感じたことをぶつけた。
「そういう坂口さんだって、この頃一文字と仲良いじゃん!人のこと、どうのこうのって言えないじゃんか!」
僕は少し、ムキになってしまったようだ。
言い方が、どうにもキツくなりすぎたかもしれない。
「そ…れは…だって、シンゴ君、V字龍が好きだって言うから…。」
急にシュンとなった坂口さんは、ゆっくりと静かにそう言った。
シンゴ君?
今、坂口さん、一文字のこと、「シンゴ君」って呼んだ。
「さ、坂口さん、一文字のこと、シンゴ君って呼んでんだ、随分親しいんだね…へえ、知らなかった、知らなかった…。」
自分でも驚くほど嫌な話し方だ。
本当はこんな嫌み、言いたくない。
「だって、一文字君、シンゴって名前じゃん…」
「そ、そうかもしんないけど!」
僕はそれ以上何も言葉が思いつかなかった。
「ダメだった?」
眉をひそめて、坂口さんが首を傾げた。
彼女の哀しそうな顔を見てしまったら、訳のわからない怒りみたいなものは、あっという間にヘナヘナと萎んでいった。
「や…だ、ダメじゃ…ないけどさあ〜…。」
「…けど、何?」
なんか文句ある?とばかりに、坂口さんが話を続けた。
「あ、今度の日曜、シンゴ君と一緒に映画観てくるんだ〜!」
確か「轟け!不屈の魂!大将軍」が映画化されたと。
「へ、へえ、よかったね。」
「あ、そだ、ニッキも一緒に行く?」
坂口さんから誘われたけれど、それはすぐさま断った。
「だ、だって、デ、デートの邪魔しちゃ悪いもん。」
自分でも随分と嫌味混じりな言い方だなあと思ったけれど、僕は気を利かせて言ったつもりだった。
「え?デートじゃないよ?」
「は?」
「シンゴ君と2人で観に行くんじゃないもん。3組のミワちゃんと、4組の柳田君と荒木さんも一緒だもん。」
「え?そ、そうなの?」
「うん、みんな、轟け!不屈の魂!大将軍のファンなんだけど、それぞれ好きなキャラはバラバラなの。」
そっかあ、デートじゃないんだあ。
僕はどういう訳か、少しホッとしたのだった。
最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。お話はもうちょっとだけ続きますので、引き続き読んで頂けたら、とっても嬉しいです。




