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滅人の彗星  作者: 天城らむと
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混沌を語るものたち

 お久しぶりです。(またしても1月以上の遅刻。去年中に更新したかった)。何気に今年最初の投稿です。明けましておめでとうございます(大大大遅刻)。そして何気に過去最大の文字数です。死なない限りは頑張って更新します。

 私はアーノルド=レンガス。魔刃の団長『混沌』様の命で現在、倉庫街を調査しています。これはとても重要な任務です。ですから、お話は手短に済ませたいと思います。


 まず始めに倉庫について知りたいのですか。この倉庫街はディクンデーテスに集まる物、作られた物の多くを一時的に貯蔵します。食糧然り、武具然り。実を言うとこの街は海と遠いようで近いのです。宮城の裏にある丘は見た目よりもなだらかで、向こう側にある海岸の波止場とは往来がしやすいですよ。陸路と空路はとても険しいディクンデーテスですが、海路は案外楽だそうです。


 かつては昼夜問わず多くの魔が出入りしていました。特に遠方からの貿易船が来た時の賑わいようは何度見ても愉快なものでした。ですが、今はひどい荒れようです。使い手のいない剣は錆びるばかりと言いますがそれは建築にも言えることのようです。獣が住み着いているようですね。ここは我々の領域です。近いうちに出て行ってもらいましょうか。


 次に、混沌様について知りたいのですか。


 混沌様はこと戦闘においては素晴らしい才能をお持ちです。純粋な身体能力、それを十全に活かした剣技、攻撃にも防御にも長けた魔導の扱い、多くの将兵を従える中で発揮される指揮能力―この世界で戦うために生まれてきたような方です。


 しかし、私は混沌様にもう一つ、素晴らしい才能をお持ちです。


 私がそれに気付いたのは、そうですね、混沌様が『混沌』と名乗られる少し前のことでしょうか。 私は元々、うだつの上がらない給仕でしたが、混沌様が宮城に入られてからは混沌様専属の侍従として宮城で働くようになりました。これはその時の話です。











『おい、アーノルド』


『はっ』


『これ振ってみろ』


『拝借します。ふむ、とても握りやすいです。この作りなら耐久性も十分でしょう。切れ味は実際に使わなければ分かりませんが、刃からは手間暇かけて作られたことが伺えます。素晴らしい手斧ですね。今すぐ私が使いたいくらいです。どちらの鍛冶師が作ったのですか?』


『俺が作った』


『はい……はい?』


『だから言っただろ。俺が、作った、って』











 このお話の通り、混沌様は武器を作る技術にも長けておられます。それよりも前に獣骨と倒木から作った手槍でサンダーバードを仕留めたことがありましたが、これ以上のお話は()しておきます。最後に、魔刃の団員たちのことをどう思っているか、という質問への回答です。私が彼等に対して言うことはいつだって『主をお願いします』の一言に尽きます。私と彼等の関係はそれで十分です。































 私はマヌエラ=ジゲルニト=エルスコーク。あまり無駄なことは話したくない。何?何故私は居住区にいるのかって?そんなもの上からの命令以外に何があると思っているんだ。全く、これだから分からず屋と一緒にいるのは嫌なんだ。


 え?上って誰かって?魔刃の団長『混沌』様のことだ。そうだ、いい機会だ。お前たち如きでは混沌様のことは名前すら知ることもないだろう。そんな方の話をこれから私がしてやるんだ。感謝しろ。


 あれはちょうど五十歳になって両親に連れられて登城することが増えた頃のことだ。










『おい、そこのお前』


『なんだ?』


『名前はなんだ?』


『――――――だ』


『私はマヌエラ。勝負しろ!』


『いいぞ。今のが見えたのならな』


『え?』


『お前はこうして組み伏せられている。これが戦場なら一巻の終わりだ。俺はお前とは勝負しない』


『クソッ、ふざけるな!もう一度…』


『やる訳ないだろ。真正面から打ち合って勝てなかったんだ。他の手段を考えろ。“不意打ちは戦場の常”だ。お前もそれを覚えろ』











 と、いうのが混沌様と出会った時の話だ。どうだ、こんな言葉をもらったのが羨ましかろう。あの後私は罠や弓を使い、私兵を連れて混沌様に挑んだことがある。まあ結局私等の負けだったがな。あの日からの私の目標は混沌様と勝負して勝つことだ。私が勝った暁には私に跪け、お前たち。


 魔刃の団員?会いたくないはないな。というか出来ることなら「ディクンデーテスに来るな」と言ってやりたい。そう言うことは混沌様を妨害することに他ならないから言わないがな。あいつらは存在そのものが混沌様を愛でる邪魔だ。団員だから?同僚だからなんだ?調子に乗って混沌様に寄ってたかるな。特に『破滅』と『享楽』、何を勝手に『自分が団長の隣に立つ』とか言ってんだ。混沌様の隣に立つべきはこの私だ。ディクンデーテスに来た暁にはそれを理解させてやる。































 は~い、あたしキャサリン=メルゴバスク。魔刃の団長の混沌様に言われてディクンデーテスの工房を回ってるの。ここって人間が使っていた頃から要塞の中に工房があったみたいで、あたしたちのご先祖様がこの街を横取りしてからは鍛冶場が拡張されたみたいなの。でも元々工房というより工場街と言った方がいい大きさだったみたいだよ。


 あたしはこの街の外郭都市で生まれ育ったの。あたしの両親はあたしが十歳の頃に猟から帰ってこなかった。後で伯父さんに探してもらったら休憩中にバジリスクに出くわしちゃって毒にやられたみたい。この街の周りが荒れているのはバジリスクの撒く毒に草が耐えられないからなの。その伯父さんも三年後には猟から帰ってこなかった。それからは伯父さんの遺した家と罠を仕掛けた場所を往復する日が続いた。凄くつまらなかったわ。だって全然遊べないんだもの。周りの子たちは親がご飯の準備をしてくれるから遊ぶ時間があるけど、自分の力だけでご飯を作らなきゃいけないあたしは遊ぶ時間なんて、持てなかったわ。


 猟から帰ってきたある日、私は庭先で行き倒れていた混沌様と出会った。無視して家に入ろうとしたらすっごい勢いで私の足首を掴んでね、『腹が減った』って言ってきたから渋々その日採れたお肉を一緒に食べたの。ただでさえ量の少ないお肉があっという間にお皿から消えてね、見てたこっちが楽しいくらいだったわ。その後は流れで一緒に暮らしていたわ。


 そんなことが続いたある日ね、こんなことがあったの。











『これやるよ』


『首飾り……いきなり何で?』


『ほら、裏に置いたままになってたヘルハウンドの頭。あれの歯、こうして紐に通して首から下げたらかっこいいな、って前から思っていたんだ』


『…っ、…っ』


『ああ、こっちの瑠璃黴石の耳飾りの方がいいか?それとも、ナベリウスの羽で作った腕輪の方―』


『作り過ぎ!早くご飯作ってよね!!』











 あの時はあんな風に言っちゃったけど、今にして思えば






 すっごい嬉しかった!


 だって混沌様がだよ!子供で、お互いに礼儀の“れ”の字も知らなくて、私だけのものだった頃の混沌様が、私の為に作ってくれたんだよ!喜ばない理由がないわよ!!


 先代の魔帝に二人して拾われてからは一緒に食べることも少なくなったけど、一緒に魔導について学ぶことはあったわ。それもそれで楽しかったわ。


 あ~、そういえば魔刃の子たちと一緒に混沌様のカッコイイところを話したことが沢山あったな。楽しかったな~。早く魔刃の皆と会えないかな~。『悲愴』ちゃんとか『虚無』くんとか『幻想』ちゃんとか、早く会いたい。『盲信』ちゃんとかちゃんと来てくれるよね?あの子、一番こっちに来そうにないからすごく不安なんだけど~。































 やあやあ、私はジョンスン=ファルシュクト。現在、魔刃の団長『混沌』様の命を受けてディクンデーテスの外郭都市、城壁、及び監視塔を調査している。


 外郭都市には軍隊の為の施設が多い。長身人との戦いの為に、整備は必須なのだ。城壁と監視塔は地上と空中からの攻撃に対する強い守りになる。しっかりと調査して、修繕すべき場所を見つけ、報告せねばならん。


 私は先祖代々、大陸を渡り歩く傭兵団に所属していたが、百十八年ほど前にディクンデーテスに逗留したのを切っ掛けに傭兵団が魔軍の一部隊として併合されたのだ。今でこそ、私は混沌様から重用されているがあの頃の私はうだつの上がらない歩兵だったのだ。身体が小さく、剣と槍の扱いも下手だった。それでも傭兵団の皆のように歩兵として名を挙げようと鍛錬し、泥沼を進むような日々が続いた。


 そんな私が変われたのは、一重に混沌様に稽古をつけていただいたある日の遣り取りの結果だ。











『―ガッ』


『やっぱりお前ではこんなものか』


『ええ…ですが』


『それ以上は言うな。お前は歩兵になるのは諦めろ』


『い、いきなり何を仰る!私は身体が小さい!だが、皆のように槍を振るって前線で戦うことが出来る!今まで生きてこられたのがその証明だ!!』


『そうだ、お前は身体が小さい。現実を見ろ。前には出るな。それは俺みたいに身体が大きい奴の役目だ』


『…私は、歩兵として…』


『お前、斥候をやってみないか?』


『…え』


『身体が小さいということは身を隠すにあたって有利ということだ。それに、お前は剣や槍を使うよりも弓を使って戦う方がいいんじゃないかと、ふと思ったんだ』











 今にして思えば、あの頃の私は剣と槍に固執してその選択肢を見ていなかった。混沌様のお言葉で頭を冷やした私はその後、傭兵団時代からの友人に教えを乞いて斥候のいろはを教わったのだ。


 本当はもっと話したいのだが、混沌様についての話はこれぐらいにしておこう。最後に魔刃の団員達についてだ。彼等は戦士として、従者として、実によくできている。素晴らし過ぎて私自身が不甲斐なく思えてくるほどだ。私ではやり切れない、混沌様の補佐は彼等に任せるしかない。私事としては『暴力』殿と会いたいところだな。私はちょうど外郭都市、城壁、監視塔の調査を終えたので混沌様の元へ報告に向かう。さらばだ。

 一人称視点に挑戦してみましたが、どうでしょうか。ここから上手く過去の話を展開させたいです。次回は三人称視点に戻ります。

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