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おかしい

昨日の続きです。

あれから一週間が経った。

私は、今日も生徒会室へ続く渡り廊下前で、シマキ様を床に座って待っていた。あの日から、ずっとこんな毎日を過ごしていた。


いつものように目を瞑りながら、待っていると誰かの気配がする。明らかにシマキ様では無い人物の気配に、立ち上がり臨戦態勢をとる。

だが、その警戒は目の前に立っている人物と目が合った瞬間解いた。


「ルイカ‥‥‥」

「ダリア、少し時間、いい?」

「ごめん、待ってる人がいるから」

「シマキ様、でしょう? あまり時間取らせないから、本当に少しでいいの。お願い」


珍しく縋るような目をしたルイカのことを突き放さなかった。

シマキ様は、いま生徒会活動に向ったばかりだ。きっと、あと二時間は帰ってこないだろう。


「‥‥‥シマキ様が、帰ってくるまでなら」

「大丈夫、時間は守る」


こうして私は、久しぶりにシマキ様以外の人と話すことになった。






◎◉◎◉◎◉◎◉◎◉






ルイカに手を引かれて辿り着いた場所は、前にも来たことがある談話室だった。静かで小さな部屋は、他の人に聞かれたくない話をするのには適しているが、部屋に使用中という札を付けるために誰かが聞かれたくない話をしているということを他の人に知られてしまう可能性がある。私と話していることを知られたくないルイカにとって、あまり良い部屋とは思えない。


「私とこんな風に話していて、大丈夫なの?」

「そんなこと、今は、どうでもいい」


ルイカは、こころなしか硬い表情に見えた。先程の発言といい今の表情といい、何か大切なこと話をしたいのだろうか。


「ねぇ、最近、ダリアが学校でなんて、呼ばれてるか、知ってる?」

「‥‥‥知らないし、興味ない」

「シマキ様のストーカー、だよ」


何か良くないあだ名を付けられていることには、薄々気がついていたが、別にどうでもよかった。


「そう、話ってそれだけ?」

「違う、何でそんな、名前で呼ばれてるのか、ダリアだって、気がついているでしょう?」

「ルイカまで、シマキ様から離れろっていうの?」


思わず語気を強めてしまう。


「そんなことは、言ってない。でも、いまのダリアは明らかに、おかしい。前の貴方なら、こんな自分の生活を、疎かにするようなこと、しなかった。美術の授業だって、あれから、出ていないんでしょう?」

「今までの私がおかしかったの。常に一緒にいないと守れなんてしないのに、自分のやりたいことを優先して、結局シマキ様に傷をつけてしまった」

「そう、かな? だって、シマキ様が襲われた時、ダリアは一緒に、いたんでしょう。でも、シマキ様は、拐かされた」

「‥‥‥私が役立たずって言いたいの?」

「違う」

「違くないでしょう。私が、側にいても何の役にも立たないから、それをやめさせようとして、わざわざ話に来たんじゃないの?」

「違う。勝手に、話を進めないで。私は、只、気になったことを、確かめに、来ただけ」

「気になること‥‥‥」

「シマキ様が襲われた時、貴方は一緒にいたけど、何もできずに倒された‥‥‥合ってる?」


思い出したくなくて、こくんと首を縦に振るだけで答える。


「部屋に侵入されて、気配も、感じなかったの?」

「どうしてそんなに詳しく知っているの?」

「トラウマ、ひとつ増えてた」


そう言って、ルイカは手を見せてきた。そうか、此処へ来る時、手を繋いだからあの日のことを覗けたのか。


「それで、どうなの? 気配は感じなかったの?」

「‥‥‥全く、感じなかった。殴られて、初めて人がいることに気がついた」

「それって、変じゃない?」

「何処が?」


責めるような言い方をしてしまっても、ルイカは全く気にしていないようだった。


「貴方は、私が側に行けば、必ず気配でわかる。そんな貴方が、全く気配を感じないのは、変」

「敵がそれだけ、強かったってことでしょう」

「でも、貴方は、その強い敵を、結局一人で倒した」


そういえば、シマキ様のことで忘れていたけど、あの時の敵の動きはルイカの言うようにおかしかった。まるで、私を傷つけないように、手加減して動いているようだった。


「気配の消し方が、上手い敵が、貴方ひとりに呆気なく倒されるなんて、おかしい」


ルイカは深刻そうな顔をしながらも、私の方を真っ直ぐに見つめた。その汚れのない瞳は、私の心の中の醜い部分を見抜かれているようで怖かった。


「ねぇ、何が言いたいの?」

「今回の、誘拐事件、全部、おかしい。そもそも、見た目が全然違うダリアとシマキ様を、間違えて誘拐するなんて、ありえない」


確かに、私とシマキ様の見た目は、全く似ていない。髪の色も長さも、目の色も、顔立ちだって全く違う。誘拐に来た犯人が、真逆標的の見た目を知らないなんてことないだろう。


「犯人は、最初から、シマキ様を狙ってた。そう考えるのが、自然」

「待って、それじゃあ、動機は? リムにシマキ様を襲う理由がないよ」

「違う。首謀者は、リムじゃない」

「‥‥‥何言ってんの? 首謀者はリムだよ。本人もそう認めてた。他の二人だって‥‥‥」

「本当の首謀者は、シマキ様。そう考えるのが、自然な流れ」


私を無視して伝えられた言葉は、残酷なものだった。

ルイカ、久々の登場です。

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