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断罪

昨日の続きです。

「恐れながら陛下、発言の許可をいただいてもいいでしょうか?」

「許そう」

「ありがとうございます。わたくし、捕まった時に、犯人たちがアビーとイビーに頼まれたことだから、絶対に成功させないといけないと言っているのを聞いています。この発言から、二人は今回の件に関わっていると思いますよ」


しんと静まり返った部屋で、プラチナ伯爵がその場に倒れるように座り込んだ音だけが響いた。この国において、シマキ様の証言は何よりも大きな力を持つのだ。

アビー様もリム様も、絶望したように何処か遠くを見ている。その中で、イビー様だけが覚悟が決まったように背筋を伸ばしてしっかりと自分の足で立っていた。

私にはわかる、イビー様はアビー様に脅されて仕方なく協力しただけだと。


そんな様子を見て陛下が重い口を開いた。


「此度の件に関しては、例え貴族と言っても許容出来る範囲を超えておる。なんせ、王太子の婚約者を襲ったのだからな。極刑が妥当であろう」


その瞬間、場は再び静寂に包まれた。

アビー様は、何が何だかわからないと言ったところか、目を見開いたまま動かなくなってしまった。イビー様は、先程と変わらない表情をしている。

そして、リム様はと言えば、どこにそんな力があったのか近衛兵の拘束を振り払う勢いで叫んだ。


「ち、違いますわ! 私は、私たちはシマキ様を襲おうとしたわけではありませんわ!」


慌てて発言をやめさせようとした近衛兵をコートラリ様が止めた。


「ならば、誰を襲うつもりだった?」

「ダリアですわ! 私は、あの女を殺せといったんですの! なのに、彼奴ら間違えてシマキ様を連れてきたのですわ。だから、だから、王太子殿下の婚約者を暗殺しようとしたわけではありませんわ。陛下、どうか、どうかお考え直しくださいませ」


それを聞いた時、私の頭は再び真っ白になる。つまり今回の暗殺、本当は私が襲われるはずだった。


なのに、私がシマキ様を巻き込んでしまったんだ。


実行犯が狼狽するのも無理はない。だって、平民である私を誘拐するつもりが、未来の王妃を誘拐してしまったのだから。


私さえいなければ、シマキ様は顔に傷をつけられることはなかったんだ。

その場に座り込む。

罪悪感で立っていられなかった。

私のせいだ。私みたいのが、側にいたからこんなことになった。

そんな私を見下ろしながら、シマキ様は再び発言する。


「聞き捨てならないわね、リム。わたくしではなく、ダリアを襲おうとしただなんて。こんなに腹が立つのは初めてよ。わたくしから大切な者を奪おうとするだなんて、わたくしを殺そうとしたも同然だわ。侮辱よ、こんな侮辱受けたことがない。陛下、誠に勝手ながらわたくしは、この者たちの極刑を望みます」


シマキ様は興奮したように怒り、そして堂々と陛下に意見を述べる。陛下は、少し面食らったように頷く。


「此度の件は、過程がどうであれ、結果はシマキ嬢を誘拐するという形になった。よって、彼女の意見は優先されるべきであろう。首謀者の三名、協力者のメイド一名及び実行犯は、当初の決断通り極刑とする。また、子の失態は親にもある。エルンマット侯爵は子爵への爵位降格。そして、プラチナ伯爵。其方(そなた)は、過去の件も鑑みて一族郎党極刑とするのが妥当であろう」


それが最終決断だった。

リム様とアビー様は顔を青ざめさせて、何かを叫びながら近衛兵に牢屋へと連れて行かれた。

プラチナ伯爵夫妻も同様だ。

イビー様は決断を下されてからも、何もいうこともせずに静かに歩いていた。

イビー様はアビー様に脅されて仕方なく手伝わされていたのだ。そのことを証言した方がいいのではないかと、少しだけ思った。でも、それでも誘拐に関わっていることには変わりないのも確かだった。

迷いながらもイビー様をじっと見ていると、目があって彼女は苦笑いをして、ふりふりと首を横に振った。

何もかも諦めた顔に、どうしてだか証言しなければいけない気になった。


「へ、陛下っ‥‥‥」


私が立ち上がり、陛下へ発言の許可を貰おうとした時、隣から手首を掴まれた。


「シマキ様‥‥‥」

「あの子は、貴方を殺そうとした者よ。温情をかける必要はないわ」

「で、でも、イビー様は、仕方なくこの作戦に付き合っただけなんです」


小さな声で反論する私を、シマキ様は尚も止めた。その声には、悲しげな色すらが浮かんでいる。


「‥‥‥わたくしを殺そうとした者でもあるのよ」


そう言われた瞬間、私は抵抗する力を緩めた。


「貴方は、そんな不届き者に情けをかけるというの?」


その言葉に反射的に首を横に振った。そんなこと出来るわけがなかった。

私が迷っている間に、イビー様の姿は見えなくなった。

多分、もう会うこともないだろう。


シマキ様に手首を掴まれながら、私はロマンス小説の感想話せなかったなぁ、なんてどうでもいい事を考えていた。

これで、第二章完結です。明日、明後日は番外編を出して、その次から第三章を始めようかなぁと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] イビちゃん 可哀そう.... QAQ (ノಥ益ಥ) スペアとして扱われる、最後 は このまま死ぬ.. 不幸だ
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