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剣術大会

剣術大会開幕です。

剣術大会は文化祭のイベントとして、長い間この学園で人気を独占してきた。今年も例に漏れず、闘技場のような会場は観客で満席になっていた。

人気の理由は、イベントという娯楽にも関わらず真剣を使っての勝負というところだろう。もちろん、命を奪うなんてことはしないが、真剣というだけでグッと緊張感が増すのは確かだ。


私は、剣術大会に出るにあたってルールブックを確認をしたが、これが中々ややこしく、頭がこんがらがってしまった。

まず、大会参加者は防刃素材の布で作られた服を着ることが義務付けられている。指先から足先まで、顔以外の部分全てをその素材で覆い隠せる服だ。そのため、真剣で切っても服が傷つくのみで、肌が傷つくことはないというわけだ。

勝利条件は、多くのスポーツと同じでポイントを多く稼いだ方だ。

切られたことで戦いに支障をきたす、利き腕や脇腹は十ポイント。

切られても戦いが続行できる、利き腕とは逆の腕や足は五ポイント。

そして、切られたらほぼ確実に即死する首は切られた時点で相手の勝ちとなる。剣道で言うところの一本だ。

また、防刃素材で覆われていない顔は狙った時点で失格となる。同様に突き刺しも禁止されている。

一試合五分で、最終的に服の切り傷の数や箇所の確認を審判が数えて総ポイント数で決着となる。この審判方法のため、服は一試合毎に新品のものに着替える。参加者は三十名で、トーナメント制となっている。


配布された服を着ながら、ルールを頭で確認する。そして、これまた配布された真剣を腰に付けると、顔のフェイスベールの紐を結び直した。控室には、様々な爵位の生徒たちがいるが、皆一様に男性だ。女性は私だけなので、かなり浮いていることだろう。


「彼奴、確かシマキ様のメイドだよな。護衛も兼任してるって噂だったけど、マジだったんだな」

「野蛮だよなぁ。やっぱ、俺はそういう女より、男を立てる女のがいいね」


小声で話しているつもりだろうが、丸聞こえだ。でも、気にする必要なんてない。

今日は、剣術大会。

気に入らなければ勝てばいいのだ。そうすれば、黙らせることができる。

貴族に逆らうことはすべきではないが、今日の目的はペールン公爵家の護衛の力を知らしめることだ。でなければ、ペールン公爵が護衛として恥ずかしくない結果を出せだなんて言わない。


そんなことを考えているうちに、大会は始まった。会場が湧き上がり、真剣のぶつかり合う音が響く。

流石、剣術大会に申し込むだけの貴族。初戦から中々良い試合だ。シャールさんほどではないが、これは本気で挑まないと勝ち進めないかもしれない。

そうこうしているうちに、試合は次々と終わっていき、いよいよ第五試合目である私の番が回ってきた。


「ペールン公爵家護衛、ダリア様」


名前が呼ばれ、深呼吸をすると会場へ出て行く。私が出ていくと、先程とは違う種類の騒めきが起こった。

私の相手は、子爵家のご子息のようだ。むっと、不機嫌そうな顔をしている。多分、女を相手にされたことが不満なのだろう。

騎士道に則ってお互いに挨拶をする。

終わったところで、真剣を抜くと構えた。二人の準備が終わったところで審判が声を発する。


「はじめ!」


先制攻撃は相手がしてきた。力任せの一振りだが、女の私にとってそれは有効だ。

どんなに訓練をしても、元々の体の作りが違う。男の方が力があるのは当然だ。

この一撃を受けたらひとたまりもないだろう‥‥‥そう、受けたらだ。


私は、すっと体をずらすと相手の攻撃を真剣で受けることもなく避けた。相手よりも小柄な私にとって、素早さは大切な武器だ。

その後も、相手の攻撃を全て避ける。

そして、相手が苛つき、疲れてきたところで漸く攻撃を真剣で受け止めた。ガキンッという重々しい音が会場に響き、観客の歓声が上がった。

相手が力を入れようと、一瞬気を抜いたところで、相手の剣を弾き返した。そのままの力を利用して相手の‥‥‥首を切った。


一瞬、会場は静寂に包まれ、次いで壊れんばかりに騒がしくなる。

今大会初の首切りだったため、盛り上がりも一段とすごい。

審判の合図で、私が勝ちとなり、試合は三分で終わった。お互い挨拶をしたが、相手の顔は私に負けたことによるショックで絶望に染まっていて少し気の毒だ。



こうして私は、初戦突破を果たしたのだった。

無事、初戦突破です。

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