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思い出させてあげなさい

今日、遅くなりました。すみません。

夏休みは、あっという間に過ぎていよいよ明日から新学期が始まる。私とシマキ様は明日の準備を既に終わらせたので、いまはゆっくりと過ごしていた。

結局、夏休み中にしたことといえば、ペールン公爵家へ帰省したことくらいだ。他は、殆ど学園の寮でシマキ様と本を読んだりして過ごしていた。

私は、この夏休み期間中、イビー様から借りたロマンス小説を三冊ほど読んだ。今読んでいるものも、イビー様から貸してもらったものだ。特にこれは、双子の女の子が出てくる話で、イビー様が如何にも好きそうだと思わず笑ってしまう。この王道な展開を予想通りでつまらないと言う人もいるが、私は予想できる物語だからこそ安心して読めて好きだ。

結果から言えば、私はロマンス小説にかなりハマっていた。今度イビー様と話す機会があったら、是非とも語り合いたいし、自分でも購入してみたいと思った。

そんなことを考えていると、同じく本を読んでいたシマキ様が「そういえば」と呟く。


「文化祭で、剣術大会が開かれるって話は聞いたわよね」

「はい‥‥‥確かそんなこと言っていましたね」


そういえば、担任の先生がそんなことを言っていたような気がするが、自分には関係ないと思っていたのであまり聞いていなかった。


「その大会、貴方も参加してみるのはどうかしら?」

「えっ? でも、あの大会は男性限定ではありませんでしたか?」

「そんなこと誰も言っていないわよ。今まで、女性の希望者がいなかったってだけの話。参加すると言うなら、生徒会としてわたくしが手続きしておくけど‥‥‥ねぇ、参加してみない?」

「シマキ様が言うなら、そうしたいですけど‥‥‥でも、私は平民ですから大会といえども貴族の方に勝つわけにはいきません」


ペールン公爵家の護衛でありメイドだが、私自身は平民だ。どんな理由があろうとも、貴族に勝つことはできない。しかし、私の心配をよそにシマキ様はそんなことかというように微笑んだ。


「それなら大丈夫。この間、帰省した時にお父様に確認してきたのだけど、ペールン公爵家の護衛として恥ずかしくない結果を出しなさいって言っていたわ」

「それって、私が貴族の方に勝っても良いと言うこと、ですか?」

「えぇ、その通りよ。ダリア、参加したくないのなら無理強いはしないけどね、できればわたくしは参加してほしいと思っているわ」

「その、嫌だと言うわけではないのですが‥‥‥いまいち自信がなくて」

「だからこそよ。貴方は実力は足りているのに、自信は足りていないわ。わたくしは貴方に自信をつけて欲しいのよ。それにね、これはチャンスでもあるの」

「チャンス、ですか?」

「えぇ、貴方のことを悪く言う人たちに、わたくしを守る力があるということを示すチャンス。貴方が大会でいい成績を出せば、周りの評価も自然と上がるわ」


そこまで聞いて漸く気がついた。多分、シマキ様は、私がアビー様に色々と嫌がらせを受けていた事を知って、対策を考えてくれたのだろう。

それで、周りに実力を示すことを思いついてくれてたのだと思う。よく見れば、シマキ様は眉を下げて祈るように私を見つめていた。

きっと、この提案にのらなくてもシマキ様は怒ることはしないだろう。だけど、こんな風に私のことを考えて出してくれた提案を誰が断れるだろうか。

返答は、もうとっくに決まっていた。


「あの、平民の私でも構わないのでしたら、是非、参加させていただきたいです」


私が頭を下げると、シマキ様は安心したようにほっと息を吐いた。だが、それは一瞬ですぐに真剣な顔付きに戻る。


「この学園の生徒たちは、貴方のことを平民ということは覚えていても、わたくしの護衛ということは忘れてしまっているみたいだわ。貴方の力を示して、思い出させてあげなさい」

「お任せください」


ペールン公爵家の護衛として、恥をかくわけにはいかない。

私は片膝をついて頭を下げた。




◎◉◎◉◎◉◎◉◎◉




始まった文化祭は、前世の高校と同じような雰囲気だった。展示や演劇、それから屋台と会場は活気に溢れていた。貴族でもこういった祭りは盛り上がるようだ。

唯一違うところといえば、屋台で売っている物は学生が作っているのではなくて、一流シェフということだろうか。そういうところは貴族という感じなのに、食べ歩いている姿はどちらかといえば庶民的だ。

まぁ、ゲームの世界だからその辺はチグハグなのかもしれない。


ということは、正直どうでもいい。

今は兎に角この屋台が発している美味しそうな匂いに耐えなければならないということが、辛かった。

嗚呼、豚バラ串に肉巻きおにぎり、それからあれは照り焼きチキンだろうか? 全部美味しそうで困ってしまう。

うろちょろと視線を迷わせていれば、隣からクスクスと笑い声が聞こえた。


「そんなに食べたいのなら買ってあげるわよ?」


店に行こうとしたシマキ様を慌てて止めた。


「いえ、あの、一度食べると止まらなくなりそうですし‥‥‥それに、剣術大会があるのでそれまであまり食べたくないんです」

「そういうものなの? なら、大会が終わったらいっぱい食べましょうね」

「は、はい。ありがとうございます」


今、隣を通り過ぎて行った女の子は、ワッフルを食べていた。それに、あの男の子は唐揚げを食べている。いいなぁ、私も食べたい。

油断すると涎が出てしまいそうだ。


「此処にいると、貴方が辛そうね。違うところへ行きましょうか」


シマキ様は、くすくすと楽しそうに笑っていた。だらしないところを見られてしまって、恥ずかしくなる。


「どこでしょうか?」

「ふふっ‥‥‥着いてからのお楽しみよ」

いよいよ、文化祭です。


昨日、ブックマークなどのお願いをしたところ、ブックマーク、いいね、星マークの評価共にいただくことができました。本当にありがとうございます!

皆様のおかげで、書くことをより一層頑張れそうです。

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