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明日から

今日、少し遅くなりました。すみません

その日、私は本当の抱き枕になったように一日中シマキ様と部屋にいた。シマキ様は、食事をするにも、読書をするにも、兎に角何処へ行くにも手を繋いでいた。食事なんかは、使用人が主人と一緒にとるものでは無いと聞いたことがあったので、慌ててシマキ様に伝えたが、「私がルールなのだから問題ないわ」と言う言葉で終わってしまった。

まぁ、シマキ様の部屋で三食食べたので、誰にも咎められることはなかったが、こんなところラールックさんにでも見られたら怒られるなんてもんじゃ無いだろう。初日の睨まれた印象が強いため、私の中のラールックさんは凄く怖い人という認識が強かった。

今日もシマキ様とお風呂に入り、二人でベッドに座りながら取り留めもない話をしていると、扉がノックされた。シマキ様が、私を見つめたまま「どうぞ」と返すと、現れたのはラールックさんだった。ラールックさんは、私たち二人を見ると眉を顰めたが、直ぐに元の無表情に戻り近くへ寄ってきた。


「あら、ラールックどうかしたの?」

「はい、ダリアの教育係に私が就くことになりましたので、明日からの打ち合わせをしに参りました。お話中のところ申し訳ございませんが、ダリアをお借りしてもよろしいでしょうか?」

「ここで話せばいいじゃない」

「‥‥‥お嬢様がよろしいのなら、ここでさせていただきます」

「問題ないわよ」


シマキ様の言葉に、ラールックさんは私に目を合わせてきた。無表情に見つめられて、怖くなってしまう。


「では、手短に。明日は六時起床。地下室に使用人の部屋があります。階段を降りて、一番奥が私の部屋ですから、其処へ来るように」

「わ、わかりました」

「なら、明日からは貴方とダリアがわたくしに付くのね」

「はい、ダリアはまだ何もできないでしょうから。私が見本になり、慣れた頃に正式にお嬢様の専属メイドにしようと考えております」

「そう、楽しみだわ」

「それから、ダリアの部屋は地下室の階段を降りて直ぐのところに用意しました。そこを使うように」


私が、返事をしようとするとシマキ様が、不思議そうな顔をして首を傾げた。


「ダリアの部屋? 必要ないけど」


シマキ様の心底不思議そうな声に、私は勿論ラールックさんすら驚いた顔をした。もしかして、私のような孤児に部屋なんて必要ないと言うことだろうか。それとも、やっぱり私みたいなものはいらないと捨てられる? 

どんどんと悪くなる考えに、泣きそうになり手を握りしめて耐える。

泣いてはだめだ。

シマキ様が、今日一日優しくしてくれただけでありがたいと思わないと。私が俯いていると、異変に気が付いたのか「ふふっ」と笑いながらシマキ様が手を握ってきた。


「違う違う、貴方を追い出そうとか、そう言うことではないのよ。ダリアは、わたくしの部屋でこのまま過ごせばいいじゃないって思ったの」

「へっ?」

「‥‥‥それは、お嬢様のご希望ということでしょうか?」

「えぇ。ダリアと過ごした方が楽しいもの」

「お二人で、過ごされるとなると何かと必要なものもあると思いますが、此方で何かご用意いたしましょうか」

「今のところ必要ないわ。何かあったら、その時に言うから」

「畏まりました。では、私はこれで失礼いたします」

「ご苦労様。嗚呼、そうだ。この二日で、お風呂のことだけはダリアに教えたから、お風呂の時、貴方はもう来なくていいわ」


今まで無表情だったラールックさんは、ぴくりと肩を震わせる。無表情に、私を睨みつけてきた。人を殺しそうな顔に、思わず目を逸らす。

その様子を見たラールックさんは、一息つくと「畏まりました」と言う言葉と共に一礼して部屋から出て行った。

ラールックさんに、教育してもらえるのはありがたいが、あの威圧的な雰囲気には恐怖を感じてしまう。明日からのことを考えて、無意識のうちにため息を吐いてしまった。


「ダリア、そんなに気を張る必要はないわ」

「シマキ様」

「ラールックは怖いところもあるけど、仕事はできる人だから‥‥‥嗚呼、でもわたくしも少し心配だわ。あの人、わたくしのことを崇拝しているから、貴方に対して失礼な態度を取るかもしれない。その時は、わたくしに言って、どうにかするから」


まるで自分のことのように、不安そうにしているシマキ様に何だか心が温かくなり、思わず笑ってしまう。こんなに心配してくれて、少しだけ気が楽になった。


「ありがとうございます、シマキ様。私、頑張りますね」

「あまり頑張りすぎなくてもいいのよ?」


心優しいシマキ様の言葉に、また笑顔になり自然に二人で笑いあう。


「やっぱり、貴方には笑顔の方が似合うわね」


シマキ様の周りは、凄く暖かい。

明日から、お仕事パート

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