ある令嬢の独白 ⑪
凄く短いです。
あの子が相談してくれるのをずっと待っていたわ。でも、結局その願いは叶わなくて、それどころか、あの子は倒れた後でも隠そうとしていたの。
まぁ、わかりやすいから、すぐに犯人なんてわかったけれど。
あの子は、自分のことしか考えていないって言っていたけど、それはその通りだと思うわ。
自分が死にそうになった時、真っ先に逃げると思う。だけどね、それは死にそうになった時の話。
逆に死なないと判断したら、何処までもわたくしを守るために自分を犠牲にすると思うわ。
何故なら、わたくしを守る盾になった時、初めて自分の価値が発生すると信じているから。
わたくしからしたら、側に居てくれるだけで価値があるのだけどね。
そう、そんな理由で、あの子は「死にたくない」という思いと対極の「恩人を守らないと自分の価値がなくなる」という感情も持ち合わせているの。
その二つの感情は、軈て「死にさえしなければ、側にいて恩人を守れる」という歪んだ考えに変わったのだと思うわ。あくまでも、わたくしの予想だけどね。
そのせいか、あの子は死にそうな怪我以外のことをあまり気にしないわ。
今回の件が良い例ね。
多分、アビーから殺気を感じなかったのよ。それで、本能的に死にはしないと判断したのね。
だから、避けることもしなかった。
その結果、あんな事になってしまうだなんて、本人にも予想できなかったのでしょうね。
わたくしは、あの子のその考え方が、とても心配だわ。あの子は、自分で死なないと判断すると、どれだけ傷を負ってもお構いなしだから。
いつか、判断を誤って死んでしまうのではないか‥‥‥そう思うと怖くて怖くて堪らなくなる。人の命は、平等に儚いから。
あの子には、もっと自分の体のことを大切にして欲しい。
‥‥‥なんて、わたくしが言える事ではないわね。
そもそも、わたくしがあの子を手放してあげれば全て解決する話だから。
だけどね、それだけは出来ない。また、手放すなんてごめんよ。




