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アケ・スクラッチ

今日、短いです。すみません。

『アケ・スクラッチ』

攻略対象者の中で唯一の教員であり、伯爵家の次男だ。

彼のトラウマは、幼い頃に母を亡くしたこと。それも、暴漢に襲われて見るも無残な姿で発見されたとか。

そこから彼は、人は脆いものだということを強く思うようになり、大切なものこそ壊される前に自分で壊すという危ない思考にたどり着いてしまう。しかし、それも一過性の感情で、彼はいつも散々暴行を加えた後に「ごめんね」といいながら治療する。そして、その行為によって彼は独占欲を満たしていたのだ。彼の過去の恋人たちも、それが原因で皆んな離れていった。

古典的なDV男である。

そんな彼は、シマキ様を一目見て魅了され、壊したいという欲求を持つようになる。そして、近づいてきたヒロインに欲をぶつけるのだ。

ハッピーエンドでは、約一年後である三年生の卒業式で悪癖を治すことを約束して、ヒロインと「幸せの鐘」の下で結ばれる。

逆にバットエンドでは、悪癖を治せずに暴力を加え続け、ヒロインもそれを受け入れるという共依存エンドであった。



吐き気を耐えながら入ってきた情報に、また意識が朦朧としてきた。シマキ様に伝えなければいけないのに、上手く言葉が紡げない。


「シマキ様っ‥‥‥お願い、その男から、離れて。近づいては‥‥‥いけないっ」

「えぇ、大丈夫よ。貴方の言うことを聞くから、安心して寝ていなさい」


そう言うと、シマキ様はアケ先生の方を振り向いて硬い声で言い放つ。


「先生、この症状は暫くしたら治るのですよね」

「あっ、えぇっと、はい‥‥‥一過性のものですから。三日ほど安静にしていれば、その‥‥‥元気になります」


眼鏡を掛け直しながら、蚊の鳴くような声で話す先生の言葉は朦朧とした私にはよく聞こえなかった。


「そうですか。なら、ダリアは連れて帰ります。どうやら貴方がいると、安静にできないようですから、寮で休ませます」

「あっ、その、そうですよね。私のような男がいたら‥‥‥その、あの、嫌ですよね。あの、では、せめてお部屋まで運ばせて頂きます。動けないと思いますから」


アケ先生が、私を持ち上げようと近づいてきた時、反射的に体を震わせてしまう。すると、シマキ様がアケ先生の手を叩き落とした。


「わたくしのダリアに触らないで!」


シマキ様の珍しい怒声は、私の耳にもよく届いた。次いでチラッと私の方を見ると、今度は落ち着いた声を発した。


「わたくしが運びますから、お気遣いなく」

「あっ、その、あの、す、すみません」


シマキ様は、私の首元と足に手を入れると、ひょいと持ち上げた。浮遊感が怖くて、思わずシマキ様の胸元を握ってしまった。


「大丈夫よ。もう帰るから、怖がらないで」


その優しい言葉に、首を縦に振るだけで答えた。シマキ様の慈しむような顔に、酷く安心して眠気が襲ってきた。


「あっ、あの! あの、容態が急変したら、すぐに、その、すぐに、知らせてください」


その心配するような声色に、私は少しだけアケ先生に悪いことをしたかもしれないと思った。

二人に対しては何もやってないのに、ダリアにめちゃくちゃ怖がられて、シマキに怒られるアケ先生ちょっと可哀想ですね。

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