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これから

今日も短めです。

牢屋から出て、何週間か経った。私は、シマキ様のおかげで前と変わらない日々を過ごすことができていた。

だけど、私の周りでは変わったことがいくつかあったみたいだ。

ひとつは、ラールックさんが、この屋敷を出たことだ。これは、シマキ様から聞いたことだけど、ラールックさんは私が牢屋に入っている間に、結婚が決まったそうだ。利き腕が使えなくなってしまい、これ以上この屋敷で仕事をするのは難しいだろうと判断したシマキ様が、相手を探してきたらしい。身分の高い人らしく、顔に傷が残ったラールックさんのことも快く受け入れてくれた寛大な人だとシマキ様から聞いた。

それを聞いて、罪悪感が少しだけ和らいだ。

こんなこと言う資格はないが、どうか幸せになって欲しいと心から思う。


そして、もうひとつ変わったこと‥‥‥それは屋敷の使用人が私を恐れるようになったことだ。ラールックさんは、メイドたちの中では、腕っ節が強い方だった。そのラールックさんを、襲ったことで、私に嫌がらせをする人はいなくなった。

良い方法ではなかったし、正しいとも思わないけど、平穏な日々を過ごせることは素直に嬉しい。

そして、あの日を境に、刃物が持てる様になったことも喜ぶべきことだろう。





シマキ様に、とんでもないことを言われたのは、そんな日々を過ごしている時だった。


「ダリア、私と一緒に学園に入学なさい」


驚きでティーポットを落としそうになったのを何とか堪えて、ホッと息を漏らす。

お茶を入れているときに、驚かさないで欲しい。


「‥‥‥お戯れがすぎます」

「あら、真剣だけど」

「シマキ様もご存じでしょう? 貴族以外、あの学園には入学できません。私は、シマキ様のメイド兼護衛として、お供いたします。そういう話ではありませんでしたか?」


これは、ペールン公爵と前々から話し合っていたことでだった。学園では、生徒のお世話係として、ひとりだけ生家の使用人を連れて行くことが許されていた。その、お世話係として私が、学園に同行することは既に決まっていることだ。

それはシマキ様本人にも話したことだし、理解してくれていたと思っていたのだけど‥‥‥入学直前になって、どうしたのだろう。


「そうね。でも、わたくし、ダリアと学園で過ごしてみたくなったのよ。ねぇ、二人で過ごすの楽しそうだと思わない?」

「それは‥‥‥確かにそうですけど」


お世話係は、学園内に入ることは許されていない。主の部屋で、主の帰りを待つ。

つまり、行動範囲は、学園の寮に限られているのだ。

因みに何か間違いがあれば困るから、男子生徒なら男性の使用人を、女子生徒なら女性の使用人を連れて行くことがルールだであり、当然男子寮と女子寮に分かれている。


「ですが‥‥‥先ほども言ったように、私は貴族ではないので、入学できませんよ」

「そんなことはどうでも良い。貴方の意見を聞かせてちょうだい。行きたいの? 行きたくないの?」


事情が関係ないというのなら、勿論‥‥‥入学したい。この世界の教育というものに純粋に興味があるし、何より学園内に入ることができれば、シマキ様への護衛の幅がグッと広がる。

ゲームのイベントの多くは、学園内で起こるのだ。現にシマキ様、死亡イベントも学園内で起こった。

シマキ様の死亡を回避するならば、学園に入学した方が良いに決まっている。


「‥‥‥行って、みたいです」

「貴方ならそう言ってくれると思ってた。わたくしに任せなさい。貴方を必ず、入学させてみせるから。退屈な学園も、貴方がいればきっと楽しいわ」

「わ、私も楽しみです」


こんな会話をしてから数日が経った頃、今度はペールン公爵に呼び出された。何の話だろうかと疑問に思いながら、私は書斎へ向かった。

ノックをすると、すぐに返事があり一礼して中へ入る。


「シマキから聞いているとは思うが、君の学園への入学が決まった」


真逆、本当に入学できるなんて、驚いたが口は挟まなかった。


「君の学費は、私が出そう」

「ありがとうございます」

「シマキがどうしてもと聞かないからな。仕方なく、だ。まぁ、学園にいれば、君でも盾にくらいはなれるだろう。シマキのことを死なせる様なことがあれば、即刻、君を殺す。しっかり護衛する様に。話はそれだけだ」


そう言うと、ペールン公爵は興味を無くした様に私から目を離し、仕事に戻った。


こうして、私は、学園創設以来初めてとなる平民の生徒となったのだ。










そして、いま、私は学園の門の前にシマキ様と二人で立っていた。その学園は、ゲームに出てきた学園と全く同じデザインのとても豪華な建物だった。やっぱりこの世界は乙女ゲームなんだ。

知らずに、唾を飲み込む。


この学園で、全てが始まり、

この学園で、全てが終わった。

前世の頃の私は、悪役令嬢が死んでも何とも思わなかった。でも、いまは違う。いまは、シマキ様を守らなければと思う。そうでなければ、私は存在価値を失うから。


シマキ様は、何の不安もないかのように、にこりと微笑み私の手を引く。

それに付いていく形で、私は学園に足を踏み入れた。



いよいよ、ゲームが始まる。

これで、第一章完結となります!皆様のおかげで、ここまで書くことが出来ました。ありがとうございます。

次からは、第二章ということになりますが、明日から三日ほどは番外編を投稿するかと思います。

重ねてですが、総合ポイントが200ポイントを突破いたしました!また、ブックマークも50件を突破することができました。本当にありがとうございます。

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