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夢見る操り人形 (リム視点)

番外編第三弾です!

今回はリム視点となっております。

文化祭の後くらいの話です。

私は小さい頃から、シマキ様の友人でしたわ。お家にだって何度も遊びに誘われましたし、家同士の繋がりだって深かったんですのよ。


でも、私が深いと思っていた繋がりは、一瞬で消えてなくなりましたわ‥‥‥たったひとりのメイドが原因で。

ペールン公爵家で、シマキ様の専属メイドが私のアレルギーのことを知らずにいちごを出した事件以来、私はシマキ様の家に呼ばれなくなりましたわ。私が悪いわけではないのにどうして‥‥‥あの事件以来、何度も考えてきたことです。ですが、何度考えても答えなんて出ませんでしたわ。


だから、余計にあの専属メイド‥‥‥ダリアのことが許せませんでしたわ。






◎◉◎◉◎◉◎◉◎◉






学園に入学した時、初めにしたことはシマキ様がいるかどうかの確認でした。

ですが、態々確認なんてする必要ありませんでしたわ。シマキ様は新入生代表として、挨拶しておりましたので、簡単に発見できましたから。

久しぶりに顔を見た時、本当に心の底から歓喜いたしました。変わらぬ美貌、言葉の端々にうかがえる聡明さ、全てが私の心を捉えて離さないあの頃のシマキ様のままだったんですもの。隣にいけ好かないメイドがいたことも、昔と変わらずでしたが‥‥‥でも、そんなのは些細な問題です。

クラスは同じになれましたし、それに、偶然にもダリアが選択科目で美術を選ぶと知ることができましたので、アビーとイビーを送り込むことにも成功しましたわ。

私はもちろん、シマキ様と同じ書道を選びましたけどね。本当は、私が直接ダリアに何かしてやりたい気持ちはありました。でも、それよりも、シマキ様と同じ時間を過ごすことの方が大切でしょう? 邪魔者の処理なんて、他の者にやらせておけばいいのです。


シマキ様と一緒の書道の授業は、本当に楽しかったですわ。初回からシマキ様は、私のことを隣の席へと勧めてくれましたの。

これまで会えなかった時間を埋めるように、二人で色んな話をしましたわ。

趣味の話、家の話、将来の話、好きな食べ物の話、昨日あった出来事‥‥‥兎に角沢山の話をいたしました。

嗚呼、でも、シマキ様が一番話していたのは、思い出したくもありませんが‥‥‥ダリアのことでしたわ。


『昨日ね、ダリアが夕食をとても美味しそうに食べていたわ。あの子、あんなに細いけど案外沢山食べて可愛いのよ』


『ねぇ、リム。貴方はダリアが剣を振るっているところを見たことがないわよね。凄く綺麗なのよ。本当に何度見ても見惚れてしまうわ』


『ダリアはね、寝ている時だけ、凄く安心したような顔をするの。とても愛らしいわ』


『ダリアには赤が‥‥‥血のように生き生きしている赤が一番似合うのよ』


思い出したくもありませんわ、思い出したくもありませんのに、なのに、シマキ様と話した中で一番記憶に残っている会話がダリアのことだなんて、本当に嫌になりますわ。


でも、仕方ありませんのよ。


シマキ様が、年頃の無垢な少女みたいに幸せそうに笑うのはダリアのことを話している時だけだったんですもの。あんな顔、忘れられるわけがありませんわ。


『あの子はね、わたくしが執着する最初で最後の人でしょうね。だから、側から離れてしまったらと思うと、本当に怖くなる』


シマキ様をあんな風に笑わせられるダリアのことを、妬ましく思いましたわ。そして同時に、あの子がいる限りシマキ様の中で、私が特別な存在になることは永遠にないと、そう思い知らされましたの。






◎◉◎◉◎◉◎◉◎◉






だから、仕方がないことなのですわ。


──こうして、ダリアを暗殺する計画を立てるのは。


最初に話を持ちかけてきたのは、アビーでしたわ。でも、その時は流石に人殺しは出来ないと断りましたの。

でも、もう限界です。

あんなに楽しそうにダリアのことばかり話して‥‥‥私を特別に思ってくれる可能性は無いと、シマキ様の言葉が態度が物語っているのですもの。

もうダリアという存在を消すしか、方法はありませんの。


だから、私はアビーとイビーに誰も聞いていないようなところで話しかけるんです。


「アビー、例の件だけど‥‥‥やっぱり頼みますわ」


私が声をかけると、アビーは楽しそうに顔を歪めて、イビーは少し動揺したような顔をしました。


この選択が間違いであっても、そうでなくても、もう、どうでもいいのです。ダリアがいる限り、どうせ私はあの方の一番になんてなれないんですもの。

「リム、貴方はとても素直だったわ。だからこそ、動かしやすかった」

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