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三ループ目の世界

今日、遅くなりました。すみません!

「シマキ、様」


ゲームの時と同じような薄暗い瞳のシマキ様を見ても、全く怖いと思わなかった。

寧ろ、今の私は安心すらした。


「ダリア、ダメよ。あんな男に言いくるめられては‥‥‥でも、もう大丈夫。一緒に帰りましょう」


そう言うとシマキ様は、私に近づいてそっと手を握った。にっこりと笑ったその顔は、少しばかり私の心配をしているように見えた。

そのまま手を引かれ、ルイカから少し離れた時、漸く状況を飲み込んだ彼女が「待って!」と叫ぶ。

その声に酷くどうでもよさそうな顔をしたシマキ様は、再び立ち止まってルイカへと向き直った。


「私は、ストーカー男じゃない!」

「何を言い出すかと思えば‥‥‥うっふふふっ」

「‥‥‥何が、おかしいの?」

「哀れな男だと思ってね。最早、貴方が何を言ってもダリアは信じないわよ」


その言葉を言った瞬間、その場にいる全員の目線が私へ集まる。

突然、集まった視線に困惑しながら目を彷徨わせていると、ルイカと目があった。


── 麻葵(あさぎ)、僕は君を愛してたんだよ。


脳裏にあの男が蘇る。


「──ッ!」


あまりの恐怖に、シマキ様の腕に抱きついた。彼女は嬉しそうに微笑むと、私の頭を安心させるように撫でてくれる。


「もう何もかも終わりよ。貴方は失敗した。ただそれだけのこと」

「‥‥‥」

「だから、早くその話し方やめなさい‥‥‥反吐が出るわ」


ルイカが私の方をチラッと見た。そして、はぁとため息をひとつ付き、髪をかきあげたその時、一瞬にして纏う雰囲気が変わった。

顔は僅かに微笑んでいるのに、瞳は怒りに染まっている。

もう隠す気のない男の姿に、私は更に怖くなった。


「‥‥‥本当にあんたって嫌な性格してるよなぁ。最初から気付いてたのに、泳がせるんだもん」

「えぇ、そうね‥‥‥ダリアに貴方が前世の頃からの友人だったと聞いた時から、怪しいとは思っていたわよ。転生して、その世界でまた出会うなんて、低すぎる確率だもの」


そんなに早くから怪しいと思っていたのかと、そう驚いていた時、ルイカがはっと鼻で笑った。でも、顔は全然楽しそうじゃなかった。


「そんな話してないよ。もっと、前から気がついていたんだろうって話してんだ」

「あら、何の話?」


本当にわからないと言った風なシマキ様を見て、ルイカはにこりと今度は本当に楽しそうに笑った。


「そっか、そうだよねぇ。言えるはずないよね。前のことなんて言ったら、ダリアはお前から離れるもんね」

「‥‥‥貴方の言っている意味がわからないわ」

「そう、白を切るつもりなんだね。ねぇ、ダリア」


ねっとりと絡みつくような甘ったるい声色に、気分が悪くなる。返事をしない私を見ても、ルイカは気分を害した様子は無かった。それどころか、楽しそうだ。


「ダリア、この世界は三ループ目なんだよ」

「はっ?」


ゲームの中のシマキ様を思い出させるような発言に、私は咄嗟にシマキ様を見る。でも、彼女は何も言わず微笑みながらルイカを見ているだけだった。


「君は覚えていないかもしれないけど、僕とそこにいるシマキ様は、よぉく覚えているよ‥‥‥本当に味気のない世界だった」


シマキ様は、変わらず黙ったままだ。


「なに、言ってるの? この世界はゲームじゃない。私たちにとっては現実。ループなんてするはずない」

「それがしてんだよ。ゲームと同じエンディングを迎えた時のみ、この世界は巻き戻る。神様に聞いたから間違いないよ。

ねぇ、ダリア。本当に覚えていない?」


得意げなルイカの顔に、更に嫌悪感が増す。


「お、覚えているわけないじゃない! そんな話、全部嘘でしょう」

「そう、残念だ‥‥‥一ループ目の時、君はこの学園に入学すらしていなかった。だからといって、シマキ様の使用人として学園に来ているわけでもなかった。君はこの学園の何処にもいなかった」

「えっ?」


聞く必要なんてない。

でも、自分がシマキ様の側にいない可能性の話はどうしても気になった。

それを悟ってかルイカは、より一層嗤った。


「二ループ目はもっと酷かった。

君はこの学園にいて、シマキ様の隣にいつも控えていたが、あれは明らかにシマキ様を恐れていたよ。なんせ、シマキ様に少し触れられただけで、ビクビクと震えていたからね」

「嘘っ!」

「おや、思い出したかい?」

「‥‥‥」


何も返せない私に、ルイカは苦笑いして更に続けた。


「見えるところに傷がなかったから、何とも言えないけど‥‥‥あの頃の君、シマキ様から身体的な暴行を受けていたのではないかな。

もう一度考えてみて‥‥‥本当に覚えていない?」


その瞬間、私の頭には何度か見た夢が思い浮かんだ。シマキ様に足を切られたり、火かき棒を押し付けられたりする悪夢だ。

夢の中の私は、彼女のことを恐れていた。


「ダリア、聞く必要なんかないわ」


今まで黙っていたシマキ様が、私の手を強く握りしめた。

昨日は、お休みをいただきまして、ありがとうございました!

今日からまた毎日更新頑張って行きたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] シマキ様は、ストーカー男じゃない.本当によかった. 前は私もそうかと疑っていた、複雑な気持ちだる(ノಥ益ಥ) ルイカはストーカー男の事 もびっくりした シマキ様はちょどかっこいい
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