無償の愛
昨日の続きです。
誤字報告頂きました。自分では気が付かなかったので、有難いです!
談話室でルイカと話した後、今日の私はシマキ様の生徒会活動が終わるのを待つことなく、寮へと帰ってきた。
もう、依存するのはやめようと思えたのは、シマキ様にもらった言葉がとても嬉しかったからだ。
──ただ、隣で笑っていてくれればいい。
それは、前世の私が、ずっとずっと欲しくて堪らなかった無償の愛だった。孤児院の先生は、確かに私を愛してくれていた。でも、それは、私だけに注がれるものではなかった。
皆んなに、平等に。素晴らしいことだ。でも、親のいない私は何処かで、自分にだけに注がれる愛を欲していたのだと思う。
あの言葉を思い出すだけで、心が酷く落ち着いた。だって、これから先、考えたくはないが、仮にまたシマキ様を守れなかった時が来たとしても、彼女は許してくれるって確信したから。
それが無償の愛というものだ。
だから、私は愛を貰った代わりに、シマキ様を今まで通りに、いや今まで以上に守ろう。
もう、誰にも傷つけられないように。
結局私には、それしかないから。
今までと同じ決意。それでも、今までと違って心がこんなに軽いのは、あの言葉のおかげだった。
ガチャンと扉が開く。予想していた人物の帰宅に、頭を下げて迎え入れる。
「お帰りなさいませ、シマキ様」
「‥‥‥ただいま。こうやって、出迎えてくれるのは、久しぶりね」
「ご迷惑おかけしました」
「ふふっ、迷惑だなんて思っていなかったわよ‥‥‥現地で待っていてくれるのも、あれはあれで可愛かったわ」
口元に手を当てて、茶目っ気たっぷりに笑う姿は、とても愛らしい。他の人の前では見せない、シマキ様の表情に優越感を覚える。
「か、揶揄わないでください」
「でも、戻ってくれてよかったわ‥‥‥この間までの貴方、死にそうな顔をしていた。あんな顔されたら、わたくしの方が不安になってしまうもの」
「私、そんな顔してましたか?」
シマキ様に傷がつけられて、精神的に安定していなかったことは自覚しているが、死にそうな顔なんてしていただろうか。
「あら、無意識だったの? なら、余計に危険だわ。あのね、ダリア、貴方は護衛としては強いけど、心は弱い。だから、自分のことをもっと、労ってあげてね。それでも、どうにもならない時は必ずわたくしに相談なさい」
「‥‥‥はい、ありがとうございます」
これまで何度も言われた、わたくしに相談してという言葉。いままでは、守られる存在になりたくないという思いから、素直に頷けなかった。だって、守られるだけの存在になったら、私の価値が無くなると思っていたから。
でも、今は違った。
ごく自然に頷く事ができた。
シマキ様は満足そうに微笑んだ後、また悪戯っぽい笑顔を見せた。
「でも、信じられないわ。貴方、すぐに自分の殻に閉じこもってしまうから」
「そ、そんなことありませんよ」
「どうかしらね、不安定だったこの間ですら、わたくしに本当のことを言ってくれないのだもの。少し傷ついたわ」
拗ねたように膨らむ姿に、私はシマキ様を安心させようと慌てて口を開いた。
「これからは、相談させて頂きます」
私が、そう言うことをわかっていたみたいに、シマキ様は拗ねた表情からパッと笑顔になり、私の手を取った。
「言質取ったわよ。これからは、何でも話してちょうだいね」
あまりの態度の変わりように、私は思わず笑った。
涙が出るほど笑ったのは、本当に久しぶりだった。
ダリアは、心の安定を取り戻したようです。
今日の六時頃に、「幸運の白い蜘蛛〜元ホームレスの俺は、虐げられ系ヒロインにTS憑依して人生を謳歌する〜」という短編小説を投稿しました。
シマキ様とは全く関係のない話ですが、興味がある方がいらっしゃいましたら、暇つぶしにでも読んで頂ければ幸いです!




