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ダンジョンの怪人  作者: ガトリングレックス
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第7話 容赦なし

「お前達! 生き残りを絶対に残すな!魔王軍の戦力として有能だからなぁ!」


デュナイツの号令に、ノーネックナイト達は剣を天に掲げる。

それは首のない者達にとって叫んでいるのと同じ行為だった。


「騎士団長が…………やられた…………」


「しかも…………あんなにもあっさりと…………」


ギランを失った代償は騎士達には重すぎる。

さらにモンスター相手にいとも簡単にやられた事も絶望を加速させた。


「うろたえるなー!」


負けを確信していた騎士達にベンは叫びを上げる。


「我々は負けるわけにはいかない! 必ず勝つんだ!」


果敢にノーネックナイトに立ち向かうベンの姿に、感覚された騎士達は一斉に戦場を駆ける。


「ダキスロンよ。お前は部下である者達の足手まといになっている。本気で戦え! 俺を失望させるな!」


デュナイツの脅迫じみた命令に対し、ダキスロンは「御意(ぎょい)!」と叫んだ。


(ここで本気を出さなければ私はデュナイツ様に捨てられてしまう。そんなことは絶対にあってはならない!)


鎖に再び竜の亡霊と兵士の亡霊達を取り憑かせ、ナーガへと姿を変えさせる。


「行けー! 人間共を全員葬りされー!」


ダキスロンの指示に、ナーガは蛇行しながら騎士達の首を次々に()ねた。


(ようやく本気を出したか。まったく。なぜ魔物と言う者は人間に対して『油断』と言う感情を抱いてしまうのだろうか? 魔王軍は自分が強者だと勘違いしている者が多すぎる)


戦いにおいて油断した者は痛手を負う。

それをデュナイツが1番知っていた。


「さて、戦力を手に入れるとしよう」


力だけではなく、死霊術を得意とする彼の強大な魔力によって動き出す首のないバルロスの騎士達。

首を刎ねたギランも部下として復活する。

もうすでに自分がギランだと言う記憶も、騎士団長としての誇りもない。

彼はアンデットに成り下がった。

しかし剣技は生きた時とまったく変わらない。


「さあ戦え! お前達は我々魔王軍の戦力なったのだから!」


デュナイツの命令に従い、彼らは剣でかつての仲間達を斬り捨てていく。


ギランだったノーネックナイトが豪快に大剣を振り回し、バルロス騎士団を壊滅させようとする姿に、ベンは槍先を向ける。


「ギラン騎士団長、私達を支えてくれました。だから、遺体を必ずや墓へ送り届けます」


決意を固め、後ろからギランに突進していくベン。

だがそれは無謀な行為。

なぜなら高い戦闘力だけが残った抜け殻が、容赦なく本気を出した時。


「ベン副騎士団長がやられたー!」


殺害されるのは明白なのだから。

首を刎ねられたベンの遺体はその場で膝をつき、倒れこんだ。


大剣で次々に騎士達の首を刎ねるデュナイツは逃げ惑う騎士に対して、3頭のユニコーンを巧みに走らせ、角で串刺しにさせた。


30分も経たないうちにバルロス騎士団は全滅し、デュナイツの忠実な部下になった。


「デュナイツ様に、敬礼!」


ノーネックナイト達はダキスロンの命令に従い、キレイにデュナイツに向けて敬礼をする。


「諸君らにはここから近しい人間の国であるディワンを攻め落としてもらう。お前達はもうすでに人間ではない。アンデットとして生まれ変わったのだ。さあその不死身の体でこの世を魔王軍の物とするぞぉ!」


大剣を天に掲げるデュナイツに、一斉に剣を夜空に掲げ、皮肉にも守るはずのディワンに向けて無限の体力を惜しまず走り出した。


朝、大剣を持つノーネックナイトが木製の門を斬り破り、それを合図に元バルロス騎士団のノーネックナイト達がディワンに攻め込んだ。


女子どもにも容赦なく剣を振りかざし、次々に赤き血を浴びていく。

それを受け王族の者達は馬車に乗り、自分の国を放棄し、バルロスに向かった。


ディワンの国民を殺していくノーネックナイト達。

次の目標は、教会のシスター達だった。



そんなこともつい知らず、マリーは食材を調達するためディワンに行くと、不自然に穴が空いた門が見える。


(なんか、いやな予感がする)


穴から中に入ると、そこには悲惨な地獄絵図が待っていた。


幼い彼女にはとても残酷な光景。

店の人達は皆深い傷を負って死に絶え、血がベッタリと付いた野菜や果物が転げ落ちている。

親しかった店の店員の死に、動揺で目が泳ぐ。


「早くハイグリーに伝えないと!」


死体が転がる道を駆けると、足を死体に引っ掛け転んでしまう。

それでも必死に立ち上がり、大事な人にこの惨劇を伝えなければと走る。


数十分後、ハイグリーがいるダンジョンの中に入り、石畳の道を駆ける。

彼の前に到着する頃には息が上がり、膝に手を当てる。


「どうしたの? そんなに慌てて」


「大変なの! ディワンが、ディワンが魔王軍に襲われてるの!」


「なんだって! 復讐するのはこの僕だ! マリー、急いで準備して。魔王軍を倒しに行くよ!」


ハイグリーは剣を鞘に納め、マリーと共にダンジョンを早足で出ると、自分の家に向かった。


家に到着すると、マリーは明るい黄色のドレスをハンガーに掛け、動きやすい黒い服装の上にツギハギのローブへと着替える。

そして皮製のホルスターに入れた黒き刃のナイフをベルトに取り付けた。


外に待っていたハイグリーに「準備できたよー」と声をかけると、ゴブリンから追い剥ぎした仮面を手渡される。


「これ付けといて。知り合いに正体がバレたら嫌でしょ」


「ありがとうハイグリー!」


ハイグリーの手厚い心遣いに、笑顔で感謝し、仮面を付ける。


こうして2人は歩き出した。


だがまさかディワンを襲撃したのがかつて自分達を倒すためにやって来た者達の成れの果てだとは思いもしなかった。

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