第6話 手抜き
騎士達の攻撃をまともにくらって、何もなかったかの様に立ち上がるノーネックナイト達。
しかもこの軍勢だ。
戦闘力が上回っているとしても、それは微々たる差。
おそらくノーヘッドナイト達は全員生前誇り高き戦士だったのだろう。
その剣術は騎士達の剣術と差があまりない。
戦い続けるに連れ、次第に体力が奪われていき、息を荒げ、倒されていく騎士達。
だがギランとベンは違った。
大剣でノーネックナイトを叩き潰していくギラン。
槍でノーネックナイトを貫いていくベン。
「ダキスロン、お前も戦いに参加しろ。こいつらは我々の戦力にする。魔王様もお喜びになるぞ」
戦いを速やかに終わらせるため、デュナイツは右腕として人間を殺して来たデュラハン、ダキスロンを呼びつける。
黒く燻んだ鎧全体に鎖を巻き付け、黒きペガサスに跨り、デュナイツから授けられた金色の刃の剣を左手に携え、右手には黒くなにも装飾がない鉄仮面を被った頭を抱えている。
「御意」
デュナイツの指示に従い、1番の強者であろうギランに狙いを定め、突撃する。
空中から剣を振りかぶり、ギランの首を狙う。
だがペガサスがギランの拳に叩き落とされ、ダキスロンは地面に突き落とされる。
「お前達魔王軍が話が通じない者達なのは承知の上だ。だが1つ聞かせろ。なぜ魔王に従う?」
ギランの質問に、立ち上がり、「フン」と鎖を巻きつけたデュラハンは鼻を鳴らす。
「魔王様にはそれほどのリーダーとしての素質がある。それだけの話だ」
くだらない話をするなと言わんばかりに吐き捨てるように言うダキスロン。
すると鎖が蛇の様に動き出し、そして取り付けられたトゲ付き鉄球が獲物に向かって喰らいにかかるが如くギランに襲いかかる。
「そんな物ー!」
ギランは鉄球を難なく右サイドステップで躱すが、それは攻撃の序章でしかない。
なんと鎖がU字に曲がり、彼の首に向かって襲いかかる。
(この程度で死んだとしたら、お前はそこまでの剣士だったと言うことだ)
ダキスロンにとってこれは単調な攻撃に過ぎない。
これを解決できなければ、死、あるのみ。
(甘いんだよ。考えが)
ニヤリと笑みを浮かべるギラン。
鉄球を右手で掴み取り、バキバキと音を立てながら握り潰す。
トゲが突き刺さり、傷口から出た血がグローブに染み込む。
「意外な解決方法だな。しかしそれで鎖からの死のプレゼントは終わらない」
「なに?」
ダキスロンの謎めいた言葉で鎖がひとりでに動き出し、ギランの右手を貫く。
「グワーーー!?」
激痛に叫びながら大剣を手放し、ギランは鎖を引き抜こうとするが、手が滑って止めることができない。
「お前もここまでだ」
勝利を確信したダキスロンに鎖はギランの首に向かってトドメの一撃をくらわせようとした。
「だから甘いんだよ。お前のその攻撃に対する考えがな!」
ギランのあまりの怪力に鎖が引きちぎれ、地面に崩れ落ちる。
「バカな。たかが人間にこの鎖を破壊できるわけが………」
動揺するダキスロンに、鎖は一旦主人の鎧に巻きつく。
「驚いているようだなぁ。鉄蛇の死神よ」
「鉄蛇の死神? ふん、人間は面白いあだ名を付けるのが上手の様だ」
動揺を隠そうとする鉄蛇の死神に対して、ギランは風穴から血が溢れ出す右手と、鉄の匂いが染み込む左手で大剣を持ち上げ、激痛に耐え、構える。
「その傷ついた手でなにができる」
「悪いな。俺は諦めが悪いんだ」
一気に距離を詰め、大剣を軽々と左に振るい、ダキスロンを両断しようとする。
「鎖よ! 竜の亡霊、人間の戦士達の亡霊と融合せよ!」
「もう遅い!」
大剣の刃がダキスロンに触れ合うと思われた次の瞬間。
鎖が鎧を装着したナーガとなり、その鎧で大剣を防いだ。
「もう遅い? 私の鎖は指示を速やかに実行する。お前の言葉をそのまま返してやろう。驚いているようだなぁ」
驚愕の表情を浮かべるギランに、容赦なくナーガが蛇行しながら剣を振りかぶる。
しかし大剣をくらった箇所から亀裂が入る。
亀裂は一瞬にして広がり、ナーガの体は元の鎖に戻った。
その隙をつき、大剣を地面に刺し、強靭な拳でダキスロンの腹を殴る。
ダキスロンの体は大きく吹き飛ばされ、戦闘中のノーネックナイトに激突した。
「おのれー!」
ダキスロンの不甲斐ない姿に、怒りを感じ始めたデュナイツは痺れを切らし、大剣を持った左手で手綱を引き、ユニコーン3頭を走らせる。
それは「すぐにこの戦いを殺戮で終息させる」と言う合図だった。
「デュ、デュナイツ様!?」
「人間だと思って手を抜くとは! 何度も言っているだろう! 人間を甘く見るなと!」
そう怒鳴り散らしながら、ギランの首を正確に狙う。
攻撃に対してギランは大剣を引き抜き、回避しようと左にサイドステップする。
だが…………
「甘い!」
ダキスロンの鎖が体に巻きつき、拘束されてしまった。
これでは動きが封じられ、敵にやられる。
「デュナイツ様! 今です!」
「分かっている!」
返事を返した時には、既にギランの首は飛んでいたのだった。