最終回 ダンジョンの怪人
「これなら魔王も死んだよね」
「うん、これで終わったんだ。僕達の戦いは」
なんとか爆発を回避したハイグリーとマリーは近くの岩場に降り立ち、レラーイ達の無事を待つ。
すると何かが地面を叩く音がした。
「待っていたぞ、ダンジョンの怪人、そしてその妻に当たる者よ」
声の主は、スケルトンを思わせる体をローブで覆い隠したモンスター、いや、魔王だった。
「私は魔王、いや、もう私は魔王ではない」
「どう言う意味だ?」
笑みを浮かべる魔王は言った。
「お前を私の後継者にしてやろう」
衝撃的な言葉に泣きじゃくり始めるマリーは言った。
「絶対にダメだよ! 魔王になっちゃ! 帰ろうよ!私達の! お家に!」
「僕は…………」
ハイグリーは、悩む素ぶりもなく、マリーを選んだ。
「魔王なんかにならない!」
「愚か者めー!」
魔王は怒りに身を任せ、究極の魔法を使おうとする。
「させない!」
マリーの叫びに魂達が答え、動きを封じる。
「今だよ! ハイグリー!」
「分かったよ。マリー!」
デェルードを振りかぶり、ガトリングガンを魔王に向けて乱射しながら地面を踏みしめ、一気に加速する。
ローブが銃弾で破れ、骨が破壊されていく。
「終わりだー!」
振り下ろされるデェルードの刃が頭蓋骨をかち割り、左肩をバズーカに変化させ、0距離でミサイルを発射した。
肋骨に撃ち込まれたミサイルは爆発、魔王の体は粉々になった。
「本当に、終わったんだ。マリー、レラーイ先生達を迎えに行くよ」
後ろを振り返り、右手を元の形状に戻すと、ワイバーンの翼を背中に生やし、マリーを抱えて飛び立つ。
サイバーフィンの大爆発により焼け野原となった場所を探索すると、そこにはレラーイ達の姿があった。
「ハイグリー、マリー、よくやってくれた」
「レラーイ先生、バロン、バーン、エクス、ミニア、生きていて本当に良かった」
「俺の防御魔法でなんとかな、だが魔力供給は3姉妹からだ。感謝しかないぜ」
レラーイは笑みを浮かべ、3姉妹の方に視線を向ける。
「私達がお役に立てたなら光栄です」
バーンは微笑みながら剣を鞘に納めるのだった。
こうして戦いは終わった。
バロンはダンジョンにいる魔王軍の残党を倒しに。
3姉妹はレップル国に戻り。
レラーイはバルロス国に住み始めた。
そしてハイグリーとマリーは家に戻り、再びいつもの生活を送り始める。
と言っても人を殺す事はしない。
ダンジョンの怪人としての罪は捨てられない。
だからこそ、鋼鉄の仮面を被った彼は向かってくる残党を排除していった。
ある日の事、家にジャガイモが詰まった木箱が届いた。
「お姉さん達が届けてくれたんだ!料理が捗るなぁ」
マリーが家に木箱を運んでいる間、ハイグリーはダンジョンを駆け、モンスター達を倒していく。
「僕はお前達を、殺す」
次々にデェルードの餌食していく彼を止められる者はいない。
宝箱を回収し、ダンジョンを出ようとする。
その時だった。
肉体のダメージが限界を超え、膝から崩れ落ちる。
「僕は…………帰るんだ…………」
(ハハハハハ! サイバーフィン様を殺した当然の報いだ! 怪人は怪人らしく朽ち果てろ!)
ダングスの声が頭に響く。
「僕は…………死なない…………マリーのために…………僕は死ねな…………」
その続き言おうした瞬間、エネルギー源であるコアが証拠隠滅のため起爆し、ハイグリーを死亡させ、ダンジョンを崩落させた。
マリーは知らない、彼が死んだことを。
楽しそうに料理を作りながら鼻歌を歌う。
愛すべき彼を待ち続ける。
死ぬまで、地獄に堕ちるまで知ることはないのだから。
ハイグリーはマリーに未練を残しながら、天界にたどり着く。
地獄に堕ちると思っていた彼は驚きで表情を歪ませる。
「あなたがハイグリーですね。こちらへどうぞ」
呼びかけてきたのは頭に金色の輪っかが浮かんでおり、白き翼が背中に生え、白いドレスを着ている茶髪の女性だった。
言葉のままについて行くと、神々しい白い服を着た白髮の男性が立っていた。
「僕は死んだのか?」
「その通りだ。君は生き物を殺し続けた。その行いは決して許される物ではない。だがあの世に裁く者はいない、代わりに生まれ変わる権利もないが」
自分のやっていた事は間違いだった。
そう決めつけられたハイグリーはマリーの笑う姿が頭に過ぎった。
「ハイグリーよ。君を待っている家族がいるんだ。行ってあげなさい。この世にいる彼女には君の意思を継承した子を授ける。素晴らしき子に育ててくれるだろう」
男性が指差す方に視線を合わせると母、父、弟が手を振って待っている。
彼は家族に笑みを浮かべると、地面を踏みしめ、そちらに走り出すのだった。
夜になっても帰って来ないハイグリーを心配し、マリーは玄関を開けると、木製のカゴに布で包まれた赤ん坊が泣き叫んでいた。
「うわわ!? 誰か私達の家を教会と勘違いしたのかな?」
赤ん坊を抱え、すぐに部屋に入ると、「よしーよしー」と揺すりながら泣き止ませ様とする。
イスの上に座り、まるで母親になったことを受け入れた様に、彼女は優しい笑みを赤ん坊に浮かべるのだった。




