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ダンジョンの怪人  作者: ガトリングレックス
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第34話 現世

「こんなことで僕は死なない!」


彼は叫んだ。

感情を爆発させ、悲鳴を上げる肉体に気づかず、殴られ血まみれになった顔で笑みを浮かべるデベに音速で突っ込んでいく。


「やめろハイグリー! その体でそれ以上戦うな! 2度と立てなくなるぞ!」


レラーイの指示は怒りに狂ったハイグリーには届かず、両手の甲にある刃を飛び出させ、歯を噛み締め、殺しにかかる。

刃が狂いし者に触れかけたその時。


肉体が喉を枯らし、耐えきれなくなると、全身から血吹雪を上げた。


「キャハハハハハ! 自爆したわね! 血を吸いなさいデェルード! そうすれば私は強くなり、2人を手助けできる! キャハハハハハ!」


デェルードがハイグリーの血を大量に吸い、よりデベを強くする。

動きを停止した生徒の姿、それを侮辱する笑い声に、レラーイは息を荒げ、涙を流しながら剣を鞘に納め、抜刀の構えを取る。


「抜刀式・二空喰雷(にくぅくらい)!」


繰り出された電撃を纏った2枚の斬撃を、デベは来るのを分かっているかの様に高く飛び上がりレラーイの背後を取る。

その瞬間、ハイグリーの体が斬撃により切断されることが頭に過った。


「ざ・ま・あ」


そう言ってデェルードを振り下ろす。

いや、振り下ろそうとした。

デベの視線に映し出されたのは、禍々しく白き機械仕掛けの鎧を身につけたバロンがハイグリーを抱え、斬撃を躱した姿だった。


「うそでしょ!? あなたは私が殺したはずなのに!?」


「俺は確かに死んだ。だが、怨念となり、化け物に成り果てれば話は別だろう」


ハイグリーを手元から地面に置き、右手で強く拳を作る。


「それにしても早すぎる!? 幽霊が怨念になるのには年月がかかる。どれだけ現世に未練があるの!?」


驚きで手が震える彼女に、バロンは後ろにあるカニの足を彷彿とさせる8本の触手で貫きにかかる。

それに対してバックステップで回避しつつ、デベはバズーカのミサイルを発射する。

化け物となった彼の目の前に死神が持つ大型の鎌が出現、掴み取り、ミサイルを両断し、爆発させる。

爆風を顧みず、ブースターから緑の炎を上げながら鎌を振りかぶる。


(その程度の速さで私は倒せない。おそらくあれはフェイクで躱したら全員で襲撃してくる。なら!)


作戦を練り終え、レラーイの喉元にデェルードの紫の刃を向ける。


「動かないで! 動いたら!」


しかしバロンは容赦なく突き進む。


(なんで? まさか仲間ごと?)


人質を取られているというのになぜ?

そう思っていたその時…………


「デベ! 後ろだ!」


「えっ?」


聞き慣れた男性の声で後ろを振り返ると鎧を脱ぎ捨てたレラーイが剣を振りかぶり、奇襲を仕掛けにきていた。


残像を残しながら足を踏みしめ、左に加速、デベは刃をギリギリで躱す。

さらに後ろへ高く飛び上がると右手のガトリングガンを牽制の意味を込めた乱射を仕掛ける。

銃弾をバロンはレラーイを右手で掴み取り、その硬い触手で庇いつつ、ブースターを停止し、足で勢いを制止させる。


「お前は!?」


彼をゆっくりと降ろし、視線をデベが着地した位置から右側にいるバジリスクの女性とその部下達に移す。


「この威圧感、四天王か」


「いかにも私は、いや私達は四天王の2人が1人になった存在である」


鱗から毒液を金色の刃を持つ剣に滴らせ、敵達に狙いを定めながら、デベに厳しい苦笑いを見せる。


「お前がなぜその剣を持って戦場にいるのか知らんが、共に戦うことを許可する」


デュナイツの声で語られる戦って良いという指示。


「言っておくが、もし剣がお前を支配した時、この毒で殺す」


ベールの声で語られる死の宣告。

それに対してデベは感激の笑みを浮かべ、デェルードを強く握る。


「お任せください。今の私なら皆様のお役に立つでしょう。よろしくお願いします」


ベールの部下であるバジはお辞儀をするその異様な姿を見ていると、かつて魔剣に取り憑かれた人間の事を思い出す。

あれはまったく別の魔剣ではあったが、人を斬りたい、その考えに支配されていた。

そんな危険分子が居ては戦闘において邪魔でしかない。


(あのケットシーは私が倒す、この槍による一突きで)


その手に構えた槍はデベの死を伺いつつ、レラーイに狙いを定める。


「全員! 敵を生きて返すな!」


『おー!!!!』


ベールの号令に部下達はハイグリー達に向かって突撃していく。

それに対して3姉妹は再びアーサー王に力を求める。

すると赤き目が青き目に変化し、アーサーシステムが起動、意識は戦闘に重視する様に変貌し、モンスター達に武器を振りかざした。


一方レラーイはハイグリーとマリーを守るべく、襲いかかるモンスターを駆逐していた。


「次はお前かい? ドラゴニュートのお嬢ちゃん」


バジに向けて笑みを浮かべながら剣先を向ける。


「それは私に言っているのか人間」


「認識があるなら自分の事を若いレディと自覚しているな。ハハハハハ、お前がもし人間だったら惚れてたかもなぁ」


彼女は槍に炎の力を宿すと、左足で地面を踏み均す。


「戯言を言う時間はもうないぞ、それとも、増援が来るための時間稼ぎか?」


「増援? そんなもん来ねえよ。来るのはどっちが死ぬか待ちかねてる死神だけだ!」


電撃を纏った剣を両手に構え直し、「オーーーーー!!!」と叫びを上げながら走り出すレラーイ。

先生の叫び声に目覚めたハイグリーは立ち上がると、血だらけの自分の姿に咆哮を上げ、ゆっくりと一歩ずつデベに向かって行っていくのだった。

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