第33話 怒り
デェルードから滴り落ちるバロンの血が、刃に吸い上げられていく。
「キャハハハハハ! デェルードが言ってる! 人間をみんな殺せばデュナイツ様とベール様がお喜びになるって! キャハハハハハ!」
デベの狂った笑いはバイスでも恐れるほど、邪悪さを帯びていた。
「バロン、君は僕にとっていやな奴だった。でも、今なら分かる。僕は今、怒ってる!」
怒りに身を任せ、「ウヲーーーーーー!!!」と吠えながら魔力での肉体強化を行う。
一気にデベとの距離を詰め、左手の刃を貫きにかかった。
だが「キャハハハハハ!」と笑いながらまるで子どもの様にはしゃぎ、残像を残しながらバックステップで距離を離す。
「じゃあ次は私の番! デェルードが吸った血が私を強くする!」
剣の構え方を変える。
それはまるでバロンが取り憑かれた様に、デェルードを両手でバトルアックスを持つが如く振りかぶり、ブースターで加速しているかの様な動きと速度でハイグリーに攻撃を仕掛ける。
「英雄バロンは…………裏切らない!」
高く飛び上がり、前に一回転、急落下しながらデェルードで脳天を叩き割ろうとする。
「バロンの真似事をしてなにが楽しい!」
怒りのままにサブマシンガンをデベに向けて乱射する。
しかし当たったのはただの残像。
本命はすでにハイグリーの前部分のボディを切り裂いていた。
傷口からの出血を気にするほどの余裕と神経を持ち合わせていない彼はデベがいるであろう背後に振り向く。
「ハイグリー!? 後ろ!? 後ろ!?」
「うん?」
マリーの助言を聞き、後ろを振り返ると、デベがデェルードを自分自身の構えが如く左手で持ち、剣先を向け、貫きにかかっていた。
突然の攻撃に対してハイグリーは生成した鎧で防ぎ、バックステップでその場を凌ぐ。
(デェルードは血を吸ってその者の力量、戦術、癖、すべて使用者の物にする。魔王様が言っていた。あれは後悔の象徴だと。前魔王が部下に使用させ、悪夢の戦場を生み出した。これ以上暴れさせる訳にはいかない。ここで消してやる)
デベの命の灯火を消すべく、バイスは翼を大きく開き飛び立つと、鋭い爪を持ってハイグリーごと切り裂こうとする。
だが体に異変が起きる。
腹痛が体を蝕んでいくのだ。
「なっ、なんだ。くっ、苦しい…………」
苦しそうにするバイスの姿にレラーイはニヤリと笑みを浮かべる。
「生物には必ず静電気が発生する箇所がある。俺はそれを起爆元にしただけだ。そろそろ全身を電撃が引き裂いてキレイな花火が打ち上がるだろうよ」
「おのれ人間めーーーーーーー!?」
体内から静電気が電気に変わり、さらに電撃に変わる。
バイスの肉体は電撃に貫かれ、鱗の反射によりズタズタに体内が引き裂かれ、空中で爆発を引き起こした。
血の雨を浴びながら、標的を狂気に満ちた剣士に移す。
「さて、次はあの狂ったケットシーか」
剣に魔力を蓄積させ、地面を踏みしめ、デベの背後に向けて加速、雷撃の一撃をくらわせようとする。
しかし襲撃に気づいた彼女は高く飛び上がり、右回転をしながら着地すると、右手の籠手をなんとガトリングガンに変化させた。
「「なに!?」」
驚きでハイグリーとレラーイは思わず声が漏れる。
「ドカーン!」
狂気の笑みを浮かべるデベの掛け声でガトリングガンが起動、乱射される。
全員銃弾をスレスレで躱し、それに対してデベは左肩部分をバズーカに変化させ、ミサイルを発射する。
目標は1番幼いマリーだ。
「こんなのー!」
マリーはリーガーの銃口をミサイルに向け、発砲する。
銃弾はミサイルに命中、爆破に成功した。
だが爆風によって心臓部に負担がかかり、気絶した形で膝から崩れ落ちる。
「マリー!? よくも…………よくもマリーをー!」
マリーの倒れた姿を視覚に入れてしまい、ついに限界の頂点に達し、怒り狂ったハイグリーは魔力を惜しまず使用し、肉体が悲鳴を上げるほどの強化を行う。
地面を踏みしめ、吠えながらデベに急接近、ひたすら高速で顔を殴る。
(許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない)
追い剥ぎの自分が、共に戦う者の死、そして愛している彼女の倒れた姿を見て、壊れるかもしれないほど怒りが込み上げてきた。
絶対に許してはいけない。
そう自分を掻き立てる。
こいつを殺すのにためらいはない。
「死を持って償えーーー!!!!!」
自分は醜い、自分は欲張り、自分は非道。
それでも、大事な者を傷つけられ、殺される光景に激情し、感情のままに動くことに後悔はない。
最後の一撃をくらわせようとした時、デベはバズーカをゼロ距離で射撃する。
当然ハイグリーと共に巻き込まれ、笑いながら大きく吹き飛ばされる。
しかし魔力で肉体強化を行った彼は無傷で敵を追撃するのだった。




