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ダンジョンの怪人  作者: ガトリングレックス
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第29話 前日

3姉妹は武器から産まれた。

かつてアーサー王が使用していたというカリバーン、エクスカリバー、ロンゴミニアド。

それを媒介に誕生したのが人造人間のバーン、エクス、ミニアである。

王族に育てられ、騎士として順調に成長した。

バーンとエクスは剣を、ミニアは槍を自分の腕の様に操り、国を襲ってきたモンスター達を蹴散らした。


そんな彼女らに秘められた特殊能力、アーサーシステムは身体能力を向上させ、魔力の出力を限界以上まで引き出す。

ただしそれは短時間しか使えず、自動的に解除される。

アーサーシステムを使用した時の姉妹はまるで兵器の様に何かに乗っ取られてしまい、敵を容赦なく死まで追い詰める。

その状態のことを3姉妹はアーサー王が自分達に舞い降りたと思っている。

怪物と言われたことはないが、人造人間である時点で怪物だと認定されているのと何ら変わらない。

だが人間は第一印象と見た目、そして行為で決める。

それを知っているからこそ、ハイグリーの異常性とマリーの狂った愛を感じ取れた。


鎧を脱ぎ、宿屋の自分の部屋で横になるバーンは窓から見える夜空を見て、ハイグリーのもう1人の自分がどんな存在なのか、気になって目が冴える。


「怪物。私達もそうなんでしょうね。見た目は人間だけど、産まれも力も怪物その物なんだから」


殺してきたモンスターは数知れず、赤き鎧を血で汚してきた。

明日は魔王軍の城へ攻めに行く。

戦争を起こすことにためらいも恐怖もない。

戦うために産まれた存在なのだから。

そう思うと自分に恐怖を覚える。


「きっとハイグリーさんはただの人間だった。だけど見た目だけで怪物だと判断された。私達とは逆の存在、マリーさんの愛する者として、狂わせた者として、責任を持って生きているのが分かりますよ」


彼の過去は知らない。

だが、第一印象としては、壊れた守り人、と言ったところか。

あくまで第一印象だったので分からないこともあるが、それも戦争で分かる話だろう。

そう思いながらバーンは独り言を言いつつ、寝苦しそうに眠りについた。


一方その頃、サイバーフィンは部下がかき集めた同じく部下の遺体で兵器を製造していた。


「殺された皆さんの「命」は無駄にはしません」


再利用できる素体達は機械仕掛けの肉体を手に入れ、新たな命が誕生する。

その姿はまるで合成獣キメラを思わせ、パッチワークされた体を持つ。

6本の腕には機械仕掛けのカラス(メカニカルクロウ)の素材を有用し、大型のマガジンを搭載したバルカンが搭載されている。


目覚めた兵器達6人はサイバーフィンを見て、敵と判断し、唸りを上げ、鋭い鋼鉄の爪で襲いかかる。


「キメルダ部隊。全員起立してください!」


その声を聞いて制御装置が起動、頭が真っ白になり、すぐに彼女を上司だと脳に信号が送られる。

全員がキッチリと起立し、それに対して真剣な眼差しでキメルダ部隊と呼んだ者達を見つめる。


機械仕掛けのカラス(メカニカルクロウ)によると、明日バルロス国がこちらを攻めに来るそうです。つまり我々は人間達を返り討ちにしなければなりません。無理をせず、共に戦いましょう」


命令に対してキメルダ部隊は左手で敬礼し、サイバーフィンと共に工房を出るのだった。


城の門を守るバイスとその部下であるワイバーン達やドラゴンウォーリアー達、さらにベールとデュナイツ、部下のデュラハン達やリザードマン達、ドラゴニュート達が敵を視覚に入れるため、目を見開きながらその時を待つ。


「本当に人間達は来るのでしょうか?」


ワイバーンの1人が質問をすると、バイスはギョロリと瞳をそちらに向ける。


「魔王様の命令に従え。例え来なくても命令を遂行しろ。いいな?」


「分かりました」


部下の戸惑った表情にため息を吐き、視線をベールとデュナイツに向ける。

ベールの弓の技術とデュナイツの剣術を兼ね備えたバジリスクが今ここに立っている。

鱗から染み出す毒液が地面に滴り落ちる。


「お前達は人間供が来たらどうする?」


「容赦なく殺す」


「右に同じく」


2人の決心は変わらない。

人間を全滅させ、モンスターがこの世界を支配する。

障害となる者はすべて倒す。

それが魔王様の望みならば。


「そうか。俺も同意見だ」


バイスもそれに理解を示し、美しく照らす半月を見つめるのだった。



部屋で眠るハイグリーは夢を見ている。

それは自分がダングスになり、マリーやレラーイを殺す恐ろしい悪夢。


(僕はこんなことをしたくない!?)


(殺人鬼である僕らは罪を背負って生きていく。だがサイバーフィン様ならそれを受け入れてくれる)


(黙れぇぇぇ!)


ダングスとの対話は自分を支配していく。

まるで太陽が雲に覆われる様に。


(黙ることで何になる。僕は君を助けたいんだ)


(お前の助けなんていらない! 殺してやりたいよ!この刃で!)


分かっている。

相手は所詮自分の記憶からできた幻覚だと。

しかし彼の中でその悪魔は自分に成り変わろうとしている。

怒りを、憎しみをぶつけてもそれは悪魔の思うツボ。

何回も寝返りを打ち、ハイグリーは苦しそうに悪夢を見続けるのだった。

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