第22話 魂
「お父様…………お母様…………」
マリーは今絶望している。
父は自分を投げ捨て、母を守ろうとした。
それがどう言うことか。
自分でも理解している。
「私じゃ救えなかった。私を見ても変わってはくれなかった。なんで、なんでみんないなくなるの…………」
ディワンの人達、ハイグリー、そして親。
涙がもう止まらない。
「マリー! なにをやってるんだ! 敵の攻撃が来るぞ!」
レラーイの指示に、ハッと意識がデュナイツの方へ向き、首を刎ねようとする金色の刃を加速し、左サイドステップで躱す。
「今は成仏した2人を弔うために戦わなければならない! マリー! 戦え! 戦うんだ!」
マリーの中でなにかが壊れていく。
戦いたくない、だが戦わなければ殺される。
その時だった。
大事な人達の魂が、次々とマリーを包み込む。
中には父ジョニー、母メリッサの姿もあった。
「マリー、ごめんな。と言って許してはくれないだろう」
「情けない私達親を許す必要はない。その代わり、あなたの力にならせてちょうだい」
2人の声はマリーに届いている。
「お嬢ちゃん、まさかダンジョンの怪人と暮らしてたとはなぁ。だがよぉ。それでも俺はお嬢ちゃんを妬んだりしねぇよ。なぜなら、あんたは大事な常連さんだからな」
八百屋のおじさんの声が伝わってくる。
「頑張れ!」
「私達の分まで生きてよ」
「あいつを倒してくれ!」
みんなの、みんなの支えの言葉が、マリーを進化させる。
その光景を見たデュナイツは危機感を覚え、彼女をノーネックナイト達3人に襲わせる。
「みんなの想いが、私の力に!」
マリーは魂を身に吸収し、リーガーに己の覚悟を込める。
「あなた達も正しいところへ送ってあげる」
ノーネックナイト達に向け、トリガーを引く。
銃弾は心臓部に命中、浄化の青き炎に包まれ、背中から倒れ込んだ。
デュナイツには見える。
今まで殺してきた人間の魂がマリーの体に吸収されていくその姿を。
「怨念にもなって俺を殺しに来たか。面白い! 復讐の手助けをするその覚悟、俺に味合わせてみろ!」
音速で走ろうとするデュナイツ。
だが、動けない。
「なぜだ!? 強化魔法で拘束は効かないはず!?」
「よく見てよ。あなたの周りにいるでしょ?」
「なっ!?」
デュナイツは自分の足をよく見ると、なんと魂達が拘束していた。
しかも全身に取り付き、金縛り状態だ。
レラーイはその光景を見て「どうなってるんだ?」と目を丸くする。
「みんなを怨念と言ったこと、私許さない」
サウズの黒き刃をマリーは秒殺の死神に向ける。
「サウザンド・ダークネスブレイド!」
闇のオーラが千本の刃に変化し、デュナイツに襲いかかる。
八つ裂きにされていく中で意識が遠のいていく。
(俺が…………死ぬのか…………保護した者達を残して…………死ぬのか…………)
昔の自分ならそんなことは思わなかっただろう。
彼ら彼女らを守るのが役目の自分が死ぬ。
そう思うと急に心配になってきた。
(これが…………人間を殺してきた報い…………か…………)
大量の傷口から血が溢れ出し、浄化の炎に包まれる。
足から崩れ落ち、デュナイツは悔やみながら命のロウソクの灯りが消えた。
「みんな、ありがとう。私達、勝てたよ」
「やったな! マリー!」
「まあこれぐらいできて当然だがな」
サウズとリーガーの言葉を聞き「うん!」とマリーは元気よく頷く。
その頃、国で暴れているノーネックナイト達が動きを止め、次々に倒れ込んだ。
機械仕掛けのカラスを通してその状況を国の外で観ていたサイバーフィンは、デュナイツがやられたと確信する。
「デュナイツさんが倒されました。第2陣の方は強化魔法をかけますのでしばらくお待ち…………」
その続き言おうとした時、英雄バロンがバトルアックスを振り回し、モンスター達を蹴散らして来た。
「お前か! この襲撃の首謀者は!」
「ジルグ、ダングス、頼みます」
サイバーフィンの指示に従い、ジルグは剣を鞘から引き抜き、ダングスは両手の甲から刃を飛び出させる。
「行きますよダングス。共にあの者を倒しましょう」
「手加減はせず、容姿なくあいつを殺す」
バロンに向かって走り出し、ジルグは右斜めに剣を振り下ろす。
しかし機械仕掛けの鎧に剣が弾かれ、さらにバトルアックスによる重い一撃をくらい、大きく吹き飛ばされ、木の下に激突する。
「グッ…………」
「仲間を傷つけることは、許さない」
鋼鉄の斬鬼は両手の甲の刃を引っ込め、魔力で黒き鎧を生成、装着すると強化魔法で筋力を上げ、一気に加速、バロンに浴びせ蹴りをくわせる。
そして拳に毒ガスを放出させながら頭部に殴りかかり、死への匂いを嗅がせようとする。
「英雄は伊達じゃない!」
彼の言う英雄、それは偽りではない。
この国を3度も救った。
本物の英雄なのだ。
バックステップでパンチを躱し、ブースターで一気に加速、タックルでダングスを大きく吹き飛ばす。
地面に2回ほどバウンドし、左手で勢いを止め、すぐに立ち上がる。
「お前は絶対に殺す!」
鎧を解除し、右手の甲の刃を飛び出させる。
魔力を刃に集中させ、バロンに向かって足を踏みしめ走り出す。
「くらえ! エクスプロージョンオブゲイボルグ!!!」




