第21話 片思い
彼はデュナイツ。
秒殺の死神と呼ばれるデュラハンだが、昔はただの魔王軍の兵士だった。
あれは四天王になる前の事、人間の国を滅ぼしに行くと人々が逃げるところを計算し、大量虐殺を行った。
ただ人間を殺したい。
殺して快感を覚えたい。
それだけだった。
その姿を見ていたベールは恋心に目覚める。
だが素直になれず、ドラゴン族特有の強い口調で喋ってしまう。
ライバルだと勘違いしている愚か者に思われているのは事実。
それから2人は魔王に四天王の称号を与えられ、余計プライドが邪魔をする。
今日こそは、今日こそはと言っている間に日が過ぎて行く。
さらに距離が離れ、虚しい思いをするばかりだ。
そんな時、恋路を邪魔するように、魔王がデュナイツに魔物の保護とメンタルケアを頼んできた。
部下の事も考えなければならないと言う上司としての悩み。
それが重なり、ヤキモキしている自分に嫌気が差す。
はっきりと好きだと言えば言いのに…………
雲で覆われた夜、ベールは部下のジボットと共に城の巡回中、ある噂を耳にした。
「おいおい聞いたか。あのデュナイツ様が保護したケットシーの女にお熱なんだってよ」
「マジかよそれ、これはおおごとになりそうだ」
モンスター達の噂話を隠れて聞き、表情を悲しみで歪ませる。
事情を知っていたジボットは表情を見て、慌ててフォローしようとする。
「ベール様、あんな話は所詮噂に過ぎません。真に受ける必要はありませんよ」
「そう、そうなんだが…………」
「うん?」
不思議そうに唸るジボットに彼女は「なんでもない」と苦しい笑みを浮かべ、巡回を続けた。
現代に戻り、ベールは魔王から罰を受け、デベと共に皿洗いをしていた。
「デベと言ったな。どうだ、生活には慣れたか?」
「はい。これも皆さんがここの事を教えてくれるおかげです」
微笑みながらベールが洗った皿をタオルで拭き、次々に食器棚へ入れていくデベ。
「最近デュナイツはどうしてる? 中々姿を見なくてな」
「そうですね。保護された魔物達に優しく相談を受けていらっしゃいます。あんなにも心配ができる方とはつい知らず、無礼なことを言ってしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
その発言で気づかされた。
やはりデュナイツは…………
「デュナイツは変わったのだな」
「それはどう言う意味でしょうか?」
デベの質問に対して、ベールは切なそうに皿を洗って行く。
「私はあの頃のデュナイツに惚れていた。片思いをしていたのだ。だがあの残虐さを失い、牙を抜かれた狼など…………」
その続きを言おうとした時、デベがため息を吐いた。
「ベール様、あなたは人間を殺すことだけを追い求めていた頃のデュナイツ様が好きだったのですか?」
図星を突かれ、彼女は顔を真っ赤にし、皿を一旦洗い場に置く。
「そ、そうだ! 私は人間を本気で、容赦なく叩き潰すあの死神が好きだったのだ!」
「もしそれならベール様はなにか勘違いされています。戦場と私達とで態度を使い分けているんですよ。戦場では残酷で、私達には優しい態度をとる。それがどうしました? もしベール様がデュナイツ様と付き合いたいのなら、彼のことを受け入れる覚悟が必要ですよ」
デベに正論を言われ、彼に「好き」と言うことを伝える決心をするのだった。
一方その頃、地面に着地したバロンはデュナイツの禍々しい姿を見て、国を守ると言う意思をより強固なものにする。
「俺は守る! この斧で!」
背中のブースターで急上昇、バトルアックスをデュナイツの背後に向けて落下しながら振り下ろす。
だが突然ナーガが出現、突進をくらい、吹き飛ばされる。
バランスを崩しながらなんとか地面に手を突きながら勢いを抑えつつ着地し、ナーガの主人、ダキスロンの姿を確認する。
「お前が鉄蛇の死神か!」
「私は人間にはそのあだ名で通っているのだな。ふん、サイバーフィン様からもらったこの力、とくと味わえ」
ダキスロンはナーガを操り、バロンに剣で斬りかかる。
そのスピードは音速を超え、到底識別できないほど。
なのだが…………
なんとバロンはそれに対してレーザーポインターでナーガの位置を捉え、バトルアックスを横にし、敵の腹に刃が激突。
勢いのまま両断されたナーガは鎖に戻り、ダキスロンの鎧に巻き付く。
その隙に英雄のブースターが起動、鉄蛇の死神に急接近する。
「しまった!?」
「デリャーーーーーー! 真っ二つにしてやるー!」
ブースターによる加速、機械仕掛けの鎧による力の上昇。
ダキスロンは剣で攻撃を防ごうとする。
しかしバトルアックスによる重い一撃は凄まじく、大きく吹き飛ばされる。
「グワーーーー!?」
レンガの壁にめり込み、息を荒くする鉄蛇の死神。
強化魔法で防御力は上がっているが、あまりの破壊力に肺が潰れ、口から血を吐く。
「人間をなめていたツケが…………ここで回ってくるとは…………」
「これでとどめを刺す!」
ブースターで近づいて来るバロンに、鎖で応戦しようとするが、時すでに遅し。
バトルアックスの裁きの鉄槌が、鎧を貫通し、肉体を叩き潰した。
「デュナイツ……………様…………」
吹き出す血を機械仕掛けの鎧の英雄は浴び、地面に足を付けるのだった。




