第20話 親
夜。
とある国の宿屋で寝ているマリーの心は歪んで行く。
ハイグリーを失ったことは彼女にとって親を殺された事と同等のショックだった。
「恋愛対象が死んだことに絶望するぐらいなら、復讐対象が増えたと思えばいい」
リーガーの冷たい言葉に、より一層復讐の決意を固める少女。
その姿を監視する機械仕掛けのカラスは闇のオーラを感じ取り、彼女が危険分子なのが理解できる。
だがここで始末するのは難しいと判断、サイバーフィンのために情報を収集する。
マリーの精神はハイグリーの死と共に崩壊しかけている。
今まで連れ添ってきた者が、あんなあっさりとやられるなんて。
今でも思い出される銃撃音に、何回も寝返りをした。
寝苦しそうにしている彼女を見て、隣のベッドで横になるレラーイは自分だけが心を痛めているわけではないと言いたくなる。
だが火に油を注ぐ様な事をするのはいかがなものかと悩んでしまうのだった。
朝になり、復讐の旅を続けるため宿屋を出る。
すると、逃げ惑う国の人達の姿を見て、復讐相手が現れたと確信する。
「四天王か。マリー、もしなにかあれば俺に相談してくれ」
「…………分かった」
様子のおかしいマリーの態度にレラーイは心配になり、表情を曇らせる。
2人は門の方へ向かう途中、復讐対象である恐ろしく巨大なデュラハンが、3頭のユニコーンに跨り、人々を大剣で切り裂き、突っ込んで来た。
右サイドステップで突進を躱し、マリーは怒りの表情をむき出しにし、サウズの刃先を向ける。
「サウザンド・ダークネスブレイド!」
闇のオーラが千本の刃に変化し、10メートルほどのデュラハンに襲いかかる。
しかしユニコーンの加速力に着いて来れず、失速し、サウズの刃に戻る。
手綱でユニコーン達を止め、降りるデュラハン。
「ようやく見つけた。今すぐ殺してやる。お前達はそう思っているんだろう? そっちがその気ならこの俺デュナイツはお前をお構いなく殺す。だがまずは小娘にプレゼントだ」
マリーとレラーイの前に現れたのは首なしの殺し屋、通称ノーネックキラーの2人。
1人は男性で右手にナイフを構え、もう1人は女性で両手でオートマチックガンの銃口をレラーイに向けている。
「その服、その立ち方。もしかしてお母様とお父様!?」
「その通り! だがこいつらは所詮抜け殻だ! 果たして情を持たずに倒せるかな!」
デュナイツが剣を掲げると、母の方がレラーイに向けてオートマチックガンを連射する。
しかしすぐさま魔力による肉体強化、視力の向上、鎧を生成し、装備、鞘から剣を引き抜き、一気に加速、銃弾を躱し、死んだ友を操り人形にした罪、ここで断とうとする。
だが…………
なんと父の方が残像ができるほどのスピードで走り出し、レラーイの隙を突き、マリーを人質にしたのだ。
「やめてお父様! やめてー!」
涙が流れ出すマリーに、容姿なく刃を突きつける。
「こいつらはもうお前の親ではない、ただの操り人形だ。さっさと始末するぞ」
「リーガー! お前はなぜこうもマリーに冷たいのだ!」
リーガーの言っていることは確かに正しい。
だがサウズも認めたくないのだ。
かつての使用者がこんな姿で、しかも敵として現れたことを。
レラーイは2人を相手にしなければいけない状況で、しかも人質を取られている。
マリーの武器ならば解決してくれる。
問題は母の方のオートマチックガンの流れ弾が彼女に当たるかもしれないと言う危機感。
とっ、重厚な足音が聞こえてくる。
デュナイツが後ろを振り返ると、そこには蒸気を放出している青き機械仕掛けの鎧を身に纏った者が巨大なバトルアックスを両手で構えていた。
「サイバーフィンの部下ではないようだな。何者だ?」
「俺は英雄バロン! この国を守る者だ!」
この国を守る英雄バロン。
彼は真剣な眼差しでデュナイツを睨みつけ、バトルアックスを強く握る。
「ほう、人間はやはり侮れんな。お前達はその2人を片付けておけ、俺はこいつを殺る」
秒殺の死神の指示を聞き、母の方がオートマチックガンの銃口をレラーイに向け、連射する。
(ジョニー、メリッサ、君達を今、魔物から解放する)
レラーイは剣を鞘に納め、抜刀の構えをとる。
銃弾は鎧によって防がれ、潰れて地面に落下した。
「魔力は節約したかったんだがな、抜刀式・二空喰雷!」
魔力を流し込んだ剣を素早く引き抜き、電撃が混じった斬撃を同時に2回飛ばす。
それを見た父の方がマリーを投げ捨て、ナイフを構え、デュナイツの人形としてではなく、夫婦として母の方を守ろうとする。
だが斬撃は2人を4つのパーツに分け、操り人形の糸は切れた。
「お父様ー! お母様ー!」
バラバラになった親の成れの果てを見て、マリーの目から大量の涙が溢れ出す。
「これでお前達もあの世に行けるんだな」
安堵の言葉を口にし、レラーイはデュナイツに視点を合わせる。
「デュナイツーーーーーーーーー!!!!!」
怒りの叫びを上げ、剣に魔力を蓄積させる。
「デヤーーーー!」
バロンのバトルアックスの急落下による重い一撃を、デュナイツは大剣で受け止め、「ふん!」と声を上げながら軽々と弾き返し、上空へ吹き飛ばす。
「サイバーフィンに強化魔法をかけてもらって負けるとは、まあいい。ユニコーン達よ! 俺と融合せよ!」
命令に従い、ユニコーン達が一斉に主人の周りを走り出す。
すると3頭の体がデュナイツに吸収される。
下半身が黒き馬の物に変貌、12本の足があり、頭が槍へと変化した。
左手に剣を、右手に槍を、その姿は四天王として醜さを犠牲にし、強さを求めた結果と言っても過言ではない。
「俺が死霊術だけのデカブツだと思ったか? 融合魔法を使った俺は本気の上を行く。強化魔法による戦闘力の向上もある。さあ始めようぜ、復讐するかあの世で大事な者と会うかの戦いをよう!」




