表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンの怪人  作者: ガトリングレックス
19/37

第19話 制御

ジルグがサイバーフィンの激怒した姿を見たのはおそらく何年も前の話だ。

自分が人間の騎士と戦闘し、圧勝した。

当然だ、サイバーフィンの強化魔法がかかった状態なのだから。


「サイバーフィン様がいれば私達は無敵です。このまま簡単に人間を滅ぼせるのではないでしょうか」


慢心した態度をとった自分にサイバーフィンは怒りを露わにし、目のカメラで顔をズームした。


「ジルグ! あなたは人間をなめているのですか! 私がもしいなくなった時、今のあなたでは人間に『殺害』されますよ!」


最初は彼女がいなくなるなんて有り得ないと確信していたが、今ではその言葉が身に染みている。

今まで彼女に頼りすぎていた。

いや、依存していた。

部下として情けない気持ちになったのは言うまでもない。

ダングスも経験していくだろう。

自分がどこまで愚かなことをしたのかを。


「ダングス! あなたはしばらく私と行動すること! いいですね!」


親が子どもを叱るように怒鳴るサイバーフィンに、ベールが申し訳なさそうに首を下にしながら近づいて来る。


「サイバーフィンよ。これは私の責任であり、ダングスの責任ではない。我々が殺害しようとしていたのは事実だ。ジボットを殺したのは実質私なのだ。魔王様には私が責任を取ると伝える。ダングス、お前の実力、確かに目に焼き付けたぞ」


謝罪を述べつつ、ダングスの戦闘力を褒めると、魔王がいる玉座の間へ向かった。


ダングスの中でなにが正しいのか、なにが悪いのか、サイバーフィンとベールの言葉が混じり合い、混乱してしまう。

さらに過ぎる過去の記憶。

金髪の少女と一緒に食事を楽しむ自分視点の自分ではない者。


「僕の中に、誰かの記憶が!? グワァー!?」


苦しみ、悶えるダングスに、ジルグは危機感を覚える。


(ダングスは私とは違い、過去の記憶を持っている。もしそれを思い出した時、魔王軍の敵になる可能性があるかもしれませんね)


おそらく戦闘力は自分より上。

到底勝てる相手ではないことは分かっている。

倒せるのは魔王か四天王ぐらいだろう。


ダングスの姿をじっと見つめるサイバーフィンは、ゆっくりと彼に近づいて行く。


「あなたは確かにベールさんの言う通り『責任』はないのでしょう。しかし仲間の『命』を奪ったのは事実。ここで生活するんですから、ちゃんと私の指示に従ってもらいます。分かりましたか」


頭を抱えるダングスは背中の制御装置によって脳へ電気信号が送られる。

サイバーフィンの指示に従えと。


(サイバーフィン様の指示に従う。僕は、サイバーフィン様の指示に、従う)


頭が真っ白になり、すぐに話の整理がされる。

考えるのがバカバカしいほどに単純なことであることが理解できた。

従っていればいいのだ。

彼女の指示を聞いていれば、怒られることはなく、共に暮らすことができる。


「サイバーフィン様、ごめんなさい。僕は悪いことをした。だから、ごめんなさい」


謝罪の言葉を言わされていることすら気づかず、ダングスは頭をサイバーフィンに下げ、手の甲の刃を収納する。

その姿を見たジルグは確信した。

彼には制御装置から強力な電気信号が送られるが、自分は制御されていると気づかない。

それは自我を否定されているのとなんら変わらない。

自分も制御装置は取り付けられているが、この指示の聞き方は異常だ。


「サイバーフィン様、この素直さは異常です。私に取り付けられている制御装置以上のスペックを持つ物を使用しましたか?」


彼女の質問に、サイバーフィンは頭の中のメモリーを検索する。

しかしその様な記憶はない。


「いえ? 私はいつもどおり制御装置を取り付けただけですよ?」


「そうですか。質問に答えてくださりありがとうございます」


勘違いだったのだろうか、もしくは他のメカニックが制御装置をいじったか。

謎は深まるばかりだが、とりあえず同士として迎え入れるとして、戦闘力は十分、あとは突然記憶を思い出し、戦いに支障が出るとなると、考えを改める必要がある。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい」


謝罪を続けるダングスに、サイバーフィンとジルグはハッとなり、彼の方へ体を向ける。


「分かりました。明日は人間の国を滅ぼしにデュナイツさんと共に向かいます。ダングスにはジルグと共に私の護衛を頼みますので、よろしくお願いしますね」


「分かった。サイバーフィン様を守る。大事な人だから」


そしてジルグに体を向けると、カメラのズーム音が聞こえる。


「ジルグもダングスに先輩づらはやめてくださいね。これから戦友になるんですから」


「分かりました。ダングス、改めてよろしく頼みます」


白き鎧の騎士は鋼鉄の斬鬼に手を差し伸べる。

ダングスは頭を上げ、ジルグに顔を合わせた。


「うん、改めてよろしく」


差し伸べられた手を握り、握手を交わす。

かつて人間を守るために戦った騎士の成れの果てと復讐ために生きてきた殺人鬼の死体人形。

共闘するはずのない者達が共に人間を殺戮する。

ミスマッチな気がするが、ともかく明日国を滅ぼしに向かう。

それはダングスにとって、ハイグリーに戻れる最後のチャンスだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ