第18話 責任
ダングスはサイバーフィンに城を案内されていると、ジルグとバッタリ遭遇する。
「サイバーフィン様、彼は?」
ジルグはダングスからサイバーフィンに視線を移し、新入りについて情報を探る。
すると彼女は首を傾げた後、「そうでしたそうでした」と優しい笑みを浮かべた。
「こちらはダングスと言いまして、まだできたばかりなので、世間知らずなところもあると思います。色々と教えていきましょうね」
その回答にジルグは納得した様に深く頷く。
「なるほど、私はあなたと同じくサイバーフィン様の部下であるジルグです。これからよろしく頼みます」
「僕はダングス、よろしく」
互いに握手を交わし、3人で城を歩いて行く。
すると四天王の1人、ベールが部下である黄色い鱗を持つリザードマン、ジボットを引き連れ歩いて来る。
サイバーフィンとダングスに気づくと、ため息を吐き、目を細める。
「サイバーフィンよ。また死体人形を作ったのか? お前も飽きないなぁ」
「魔王軍は『戦力』を求めています。『遊び』で作っている訳ではありません」
「死体を再利用するのは構わない。魔王様が了承しているからな。だが私は知っているぞ、お前が1番この城に負担をかけていると!」
そう、武器製造や死体集め、改造に至るまで、かなり魔王軍に負担をかけている。
魔王が可愛がっていることもあり、サイバーフィンの事を多目に見ている。
だがそれはベールにとって不満でしかなかった。
「お前のやり方は四天王としてなっていない! ジボット、訓練場で新入りを壊してしまえ」
「グハハハハハ! 待ってましたよその言葉! ほらさっさと行くぞデカブツ!」
決闘を申し込まれたダングスは拳を強く握り、怒りのままにベールとジボットについて行こうとする。
しかしジルグが腕を横にして動きを妨げる。
「やめてください。魔王軍同士で争うなんてバカバカしいことはやめましょう」
サイバーフィンも心配そうな表情を浮かべ、道を塞ぐ。
「そうです。挑発に乗ってはいけません」
「僕は挑発に乗るつもりはない。サイバーフィン様をバカにした態度、それを正すだけだ」
意味深な発言にサイバーフィンは首を傾げると、ダングスは闇魔法、インビジブルデッドを使用し、自分自身を透明化する。
「消えた? まったく。ダングスは部下としてサイバーフィン様を慕っているのは良いのですが」
「おそらくベールとジボットについて行ったはずです。練習場に急ぎましょう」
2人は無益な争いを止めるため、全速力で訓練場に向かうのだった。
ここは戦闘を訓練するために作られた施設。
陽が差し込めるこの広い部屋で、決闘が始まろうとしていた。
「これより、ジボット対ダングスの決闘を始める。死んでも恨みっこなし。責任は私が取ろう」
ベールの話を聞き、ジボットは左手に赤き小型の斧、右手には青き小型の斧をホルスターから取り出し、刃を擦り合わせる。
ダングスも両手の甲から刃を飛び出させ、魔力で肉体を強化、戦闘態勢に入る。
戦いの準備ができたところで彼女は後ろに下がり、鐘へ手を伸ばす。
「始め!」
始まりの鐘が鳴り、戦闘が始まる。
ジボットは高いジャンプ力でダングスの後ろに回り、制御装置に右手の斧を振り下ろす。
(制御装置を壊せば、こいつはただの鉄くずになる。ふん、簡単な作業だぜ)
始まって直後、勝利を確信した彼は、思わず笑みがこぼれる。
次の瞬間。
「グハー!?」
突然の事だった。
なんとダングスの後ろに黒き鎧が現れ、ジボットを左ストレートで吹き飛ばしたのである。
後ろを振り返り、ダングスは鎧と共に足を踏みしめ、愚か者に向けて加速して行く。
「お前の様な奴に負ける筋合いはない」
追撃の刃を斧で防ぎながら、ジボットはプライドを傷つけられ、表情を歪ませる。
「なめるなよ。デカブツ!」
尻尾で相手の足を滑らせ、転んだその隙に斧の力を解放する。
「現れよ。俺の部下達!」
叫び共に斧が赤き鱗をしたリザードマン、ポルトと青き鱗をしたリザードマン、トィールの姿に変化、ポルトは槍を、トィールはライフルを装備している。
「3人であいつらを始末する。いいな!」
「「はい!」」
一直線にダングスに向かってジボットとポルトは走り出し、トィールはライフルの射線に入れる。
すぐに立ち上がったダングスは姿勢を低くし、左手の刃を収納、右手の刃と両足に魔力を集中させる。
「この一撃はお前達を消し飛ばす。エクスプロージョンオブゲイボルグ!!!」
空気が歪むほどの勢いで加速し、右手で、まるで英雄であるクーフーリンの必殺の一撃、ゲイボルグが如く直線上にいる3人をまとめて心臓部を貫いた。
さらに魔力が注入され、引き抜くと、バックステップで距離を取る。
ようやくサイバーフィンとジルグが到着すると、戦いは終幕しようとしている。
3人のリザードマンの体は大爆発を引き起こし、粉々になった。
「まさか、ジボット達がやられるとは…………」
予想外の展開に、ベールは動揺で目が泳ぐ。
「サイバーフィン様を侮辱したこと、地獄で詫びろ」
その発言に、サイバーフィンはダングスに近づいて行く。
「サイバーフィン様?」
その表情は喜びではない。
怒りだ。
「あなたはなにをしたか分かっているんですか! 仲間を殺して、褒められるとでも思っていたんですか!」
彼女は彼に期待しすぎていたと感じる。
強さだけでなく、仲間意識もあると高望みしていた。
「ダングス、あなたは挑発に乗り、仲間を殺した。それはあなたの方が詫びることです!」
サイバーフィンの激怒した光景をジルグは久しぶりに見た。
煙が立ち込める戦場の中で。




