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ダンジョンの怪人  作者: ガトリングレックス
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第17話 遺体

壁に貼り付けにされた騎士に、尋問するハイグリーとマリー。


「さあ吐いてもらおうか。四天王である秒殺の死神の居場所を」


「言ったとして、どうせ殺されるのだろう?」


死を覚悟している騎士の発言に、ハイグリーは「殺してどうする」と問いかける。


「なに?」


「お前を殺して僕達に何の得がある? 情報の提供者を殺して何になる? 確かに魔王軍は人間の敵だ。でも僕達の目標は秒殺の死神への復讐なんだよ」


意外な回答に、騎士は言うか言わまいか悩み始める。

するとレラーイが玉座にようやく到着し、息を切らしながら現状を確認すると、「おーい」と2人に声をかける。

声に気づいた2人はレラーイの疲れた表情に、ここまでにモンスターを次々に蹴散らして来たことが分かる。


「レラーイ先生。こいつがここの主です」


「今尋問してるからレラーイも言ってやってよ」


息を整えたレラーイは、騎士に真剣な眼差しを向けながら口を開く。


「お前が言えない理由は分かる。居場所を言えば裏切りと見なされ、殺される。どっちみち死は決定しているんだろう」


「その通り。我々は所詮四天王の部下の1人に過ぎない。切り捨てられるのを覚悟で生きていかなければならないのだ。さっさと殺せ。私はなにも言わんぞ」


自分は死ぬ覚悟ができていると言う口振りの騎士の姿はあまりにも哀れだが、尋問を続けようとする。


その時だった。


扉から赤い目のカラスが入って来ると、嘴を大きく開き、銃口をハイグリーに向ける。

狙いを定め、銃弾が撃ち出される。


銃声に気づいた時には銃弾が頭に命中、その場に膝をつき、倒れ込んだ。


「「ハッ、ハイグリー!?」」


マリーとレラーイが彼の方を振り向いた隙に、騎士は高速で詠唱を唱え始める。


「お前達は物、我は使用者。感情を持たぬ物はすべて我の使用物なり。我の拘束を解き、残りの敵を始末せよ」


騎士を拘束していた剣がマリーとレラーイに向かって回転しながら襲いかかる。


「お前達は物、我は使用者。感情を持たぬ物はすべて我の使用物なり。遺体を我々の城にいるサイバーフィン様のところへ運べ」


指示に従い、残りの剣達がハイグリーの遺体を空飛ぶ絨毯が如くドアを抜け、魔王軍の城まで運んでいく。


「俺の生徒をどうするつもりだ!」


剣で攻撃を弾き返しながら、レラーイは騎士に問いかける。


「我々は戦力を欲している。優れている者を求め、それを操ることができれば侵略はより近くなる」


「ハイグリーを道具みたいに言わないで! サウズ! あいつを殺しちゃえー!」


「分かった!」


激怒したマリーの指示にサウズは返事を返し、千本ある黒き刃を操り、騎士を八つ裂きにする。

傷口から血が溢れ出し、火花が散る。


「魔王様、サイバーフィン様、バンザーイ!」


叫び声を上げ、爆発を引き起こした敵の爆風をレラーイとマリーはバックステップで躱し、煙で咳をしながらその場から逃げ出す。

ハイグリーを追いかけるが城を出た頃にはすでにこの場から跡形も無くなってしまうのだった。



数時間後、サイバーフィンの工房にハイグリーの遺体を部下の操っていた剣が作業台まで運んで来た。


ちょうどデスクで機械仕掛けのカラス(メカニカルクロウ)を製作していたサイバーフィンは剣の擦れ合う金属音に気づき、後ろを振り返る。


「これは」


遺体の損失を確認するため、顔を隠す仮面を手早く外すと、あまりの醜さにとても人間とは思えない、悪魔の顔をしていた。


「これが人間の顔? まるで魔物の様」


自分以外誰もいないこの場所で、彼を蘇らせ、自分の部下にしたいと言う欲望を満たしたくなる。

機械仕掛けの彼女だが、今まで何人もの人間の遺体や死体を改造、蘇生を繰り返している。

ジルグもその1人、攻め落とした国の女性騎士をベースに作り出した。

そんな彼女の名を付けたのはサイバーフィンである。


「この剣はゴーガの物。彼ほどの者が運んだ存在です。おそらく強敵だったに違いありません。早速改造しましょう」


彼女は遺体に改造を施し始め、鋼鉄の斬鬼に生まれ変わらせる。

人間が身につけていた鎧を溶かし、構築した鉄の部品が全身を覆い、顔はリザードマンを思わせる鉄のマスクで隠し、刃が出たり収納できたりできる両手の甲、背中には脳に直結している制御装置が取り付けられいる。


「さあ、目覚めの時です」


心臓部に取り付けた永久機関であるコアを起動する。

すると魔力が体に伝達され、新しい命が誕生した。


「…………?」


遺体だった者はゆっくりとベッドから降りると、視界にサイバーフィンが入る。


「君は、誰だ?」


「私ですか? 私はサイバーフィンと申します。これからあなたには私の部下として頑張ってもらいます。よろしくお願いしますね」


彼女の丁寧な言葉に、頭の中で過去の思い出が過ぎり、強烈な頭痛が走る。

頭を抱え、唸りながら膝をつき、苦しみ悶える。


「大丈夫ですか?」


「僕はなんだ。誰なんだ。思い出そうとすると頭が割れるみたいに痛い」


これはサイバーフィンにとって新しいケースだ。


(そんな、遺体が記憶を持っているなんて。これは新しい発見です)


彼女は優しい表情で苦しむ斬鬼に口を開く。


「大丈夫ですよ。無理に思い出す必要はありません。あっ、そうでした。名前を決めないといけませんね」


頭の中のデータベースからぴったりの名前を探し、10秒ほどで検索を終えた。


「あなたの名前はダングス、これから一緒に人間を滅ぼしましょうね」


「分かった。僕頑張るよ」


サイバーフィンの発言を素直に聞き入れ、ハイグリーだった者は過去を思い出すのをやめ、共に工房を出るのだった。



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