第13話 形見
レラーイに視線を向け、ハイグリーはふと思った。
友人とは言えなぜマリーの事を知っているのか。
殺し屋だったと言うマリーの親と繋がりがある理由がまず分からない。
学校の教師であるレラーイ。
殺し屋だったマリーの親。
もしそれが知られたら国を追い出される騒ぎではない。
「あの、レラーイ先生?」
「うん? なんだハイグリー」
「レラーイ先生はどうしてマリーの事が分かったんですか?」
その質問に、レラーイは左の人差し指を立て「いい質問だ」と返答する。
「彼女とは1度会ったことがあるんだ。まあ随分前の話だから覚えてないかもしれないがな」
「なんかふわふわしてますね」
「そう疑うなよ。これは紛れもない事実だ」
疑いがかかる彼に、追求するハイグリー。
「僕は約束したんです。マリーの親の敵を討つと。だから…………」
その続きを言おうとした時、レラーイが両手を上げる。
「分かった分かった。俺もその敵討ち、付き合わせてくれ」
その言葉にハイグリーとマリーは衝撃を受ける。
だがレラーイにも確かに復讐する理由がある。
友人が殺されたと言うれっきとした理由が。
左拳を強く握り、怒りの表情をむき出しにすると、右手の平を殴る。
「俺にだって、復讐する権利があるはずだ! 手伝わせてくれ ! 頼む!」
真剣な眼差しを向け、勢いよく頭を下げて頼み込むレラーイに2人は顔を確認し合い、縦に首を振る。
「構いません。先生だったらなおさら心強いです」
「ただし、もしさっき言ったことがウソだったら置いて行くから。覚悟してね」
「ありがとう、2人共」
2人の許可がおりたことに感謝し、レラーイは短い白き刃を持ち、マガジン式のソードガンと銃弾が入った紙製の箱、ホルスター、リロード用の予備マガジンを見せる。
「それはなに?」
「君へのプレゼントだよ。これには不思議な力があるんだ。まあ使えば分かる」
刃の方を持ち、マリーに手渡す。
「あっ、ありがとう」
嫌々その4つを貰うと、ソードガンから脳内に映像が映し出される。
それはマリーの母がこのソードガンを使ってターゲットを撃ち抜くところや、能力の使用方法、さらに後ろに魔物の影が。
「これ、お母様が使ってたやつ?」
その一言で(やはりこの子はジョニーとメリッサの娘だな)とレラーイは確信する。
実はこのソードガンにはマリーに脳内へ映像を映し出されるように術式がマリーの母親であるメリッサによってかけられていたのだ。
「なんでお母様の武器をあなたが持ってるの! もしかして盗んだ!」
予想外の反応に、頭を抱え、顔を覆い隠す。
「あー、説明不足だったかぁ。これは君の母親から預かった物なんだよ。一族に伝わるこのソードガンをな」
「一族に伝わる?」
意味あり気なことを言うレラーイにマリーは違和感を覚える。
「そう。マリーが持つ白きソードガンの名は『リーガー』。同じく黒きナイフの名は『サウズ』と言う」
「そこまで知っていると、なんか引いちゃうなぁ」
「アハハ…………」
マリーの引き具合に、苦笑いをするレラーイ。
するとハイグリーが怪訝そうに大きなため息を吐く。
「2人共。旅に出るんだから準備しないと」
「それもそうだな。支度してくるから、明日またここで会おう」
「分かりましたレラーイ先生」
そう言って3人はそれぞれの決意を固め、復讐の炎を燃やすのだった。
夜。
荷造りを終え、ベッドで横になったハイグリーとマリーだが、冒険への好奇心と復讐への興奮に眠れない。
「ハイグリー、起きてる?」
「起きてるよ」
ベッドから飛び起きるマリーに、ハイグリーは首を傾げる。
「ねぇハイグリー、眠れないから魔法でなんとかしてよ」
「催眠魔法はできるけど。これは攻撃用だから永眠することになるよ」
背筋がゾッとすることを呆れたように言うハイグリー。
「魔法だって万能じゃないんだ。寝れないならホットミルクでも飲めばいいじゃないか」
「今日のハイグリーなんか冷たくない?」
投げやりな言葉をかける彼に、マリーは頰を膨らませる。
「ごっ、ごめん、中々寝付けなくって。態度が悪かったよね」
「私もごめん、自分勝手なこと言っちゃった」
謝り合う2人は灯りをつけ、とりあえず眠るためにホットミルクを作る。
鍋に牛乳を注ぎ入れ、コンロをマッチで点火する。
蒸発していくことを想定し、量を2杯半入れている。
温まるのにそう時間はかからず、オタマでホットミルクを掬い、2つのカップに注ぐ。
あとはハチミツを入れて完成。
テーブルの上にマリーはカップを置く。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
ホットミルクをちびちびと飲む2人。
考えは同じ、首なしの騎士の討伐。
レラーイの言う四天王は強敵ぞろい。
それに支える軍団は、国をいとも簡単に滅ぼす。
(絶対に約束は果たす。そのために今を生きているんだ)
彼は約束のために。
(四天王なんてどうでもいい。お父様とお母様を殺したことが殺す理由)
彼女は復讐のために。
((殺してやる。悪魔に魂を売ってでも))
あいつを殺してみせると。




