第10話 機械仕掛け
ここは魔王軍の城。
モンスター達が整列し、誰かを待っている。
「お持たせしましたー」
やって来たのは機械仕掛けの女性。
自動人形であるオートマタとはまた違うメカニカルな黒いボディ、胸下に埋め込まれたコア、美しく、触れたら一瞬にして汚れてしまいそうな白い肌、短い白い髪、両サイドに取り付けられた2つの歯車状の髪飾り、目はレンズになっており、中にはカメラが入っている。
「サイバーフィン様、ご指示を」
「はい。今日はクヤジア国を攻め落とします」
サイバーフィンと呼ばれた彼女は地図に丸が付けられた箇所を指差す。
「我々魔王軍は人間を滅ぼさなければなりません。共に頑張りましょう!」
『おー!』
モンスター達はサイバーフィンの指示で速やかにクヤジア国へ向かう。
サイバーフィンも部下の白い鎧と白い兜を身につけた女性戦士、ジルグと共に後を追った。
馬車に乗ろうとした時、偶然にもノーネックナイトとダキスロンを引き連れ、3頭のユニコーンに乗ったデュナイツが足を止める。
「よぉ〜サイバーフィン。今日も国滅ぼしか?」
「はい! 四天王として頑張らなきゃと思って!」
真面目に魔王の言いつけを守るサイバーフィンに、デュナイツは大きなため息を吐く。
「そうか。俺は別に張り合っているわけじゃないんだがな。残りの2人は誇りがどうやらこうたらでバチバチやってるから気をつけろよ」
「すでに情報はあります。この事を『プライドが高い』と言うのですよね」
「さすがは魔王軍のジャンヌダルクと言われるほどはあるな。聖女様に今日会えたことを光栄に思う。無事を祈るよ」
そう言って手綱を引き、ユニコーンを走らせ、人間の国を滅ぼしに向かった。
馬車に乗り込み、サイバーフィンは浮かない表情をする。
ジルグが手綱を引き、黒き馬を走らせる。
「ジルグ、あのですね」
「うん? どうされました?」
「私はただの機械人形です。どうして聖女と言われるのでしょうか?」
質問に対してジルグは優しく微笑む。
彼女は知っている。
機械人形とは思えない優しい心、四天王の1人に上り詰めるほどのカリスマ性を。
「サイバーフィン様は四天王の中で親しみやすい方ですし、何より素晴らしい指揮官としての才能を持ってらっしゃいます」
「分析したところこれは『才能』ではありません。魔王様から授かったこの力の事を私は『不公平』だと分析しました」
「と、言いますと?」
馬車を運転しながら、ジルグは回答を求める。
別にサイバーフィンの戦闘力に関しては魔王軍の者達なら誰もが知っている。
しかし一応聞いてみた。
「私は所詮作り物で、されど作り物です。魔王様の技術によって作り出された私は、四天王達にとっては突然現れた『不公平』なのです。デュナイツさんは『聖女』と言ってくださいましたが、機械人形である私にとってそれは他の者達への『冒涜』であると分析しました」
自分を批判的に解析したサイバーフィンに、大きなため息を吐く。
「いいですか。あなたは四天王なのですから、もっと自信を持ってください。たとえあなたが機械仕掛けだろうとなかろうと、我々の聖女であることは変わらないのですよ」
この様な話を毎日していると、頭が痛くなる。
(サイバーフィン様の話は自分を非難することばかり。まったく、困った物です)
機械人形とは自分の考えを素直に言ってしまう物。
魔王はなぜこんな性格にしてしまったのか、理解に苦しむ。
おそらく魔王の好みがこの様な女性だったからだろう。
魔王とは何度かジルグはあったことがあるが、最強の風格は確かにある。
だが女性の好みは別だ。
(我々が彼女に従うのは『メカニカルリーダー』と言うあだ名の通り。作られた者が故に優れた性能を持ち、なによりそれを使いこなせる。それだけでなく部下を見捨てない作戦の練り方。信頼してますよ。サイバーフィン様)
サイバーフィンの表情は曇るばかり。
だが魔王軍の四天王として部下は全員認めている。
それを尊重するようにモンスター達はイキイキしていた。
1時間ほど経過し、クヤジア国に到着する。
するとサイバーフィンのコアが開き、小型魔力原子炉がむき出しになった。
「これよりすべての仲間に強化魔法をかけます! 我々の勝ちはこれによって確実な物になるでしょう!」
強化魔法をすべてのモンスターにかけるには膨大な魔力が必要。
それを可能にするのがこの小型魔力原子炉である。
永遠に絶えることがない魔力を惜しまず使用し、サイバーフィンは効果最大の全能力を引き上げる魔法を何百回もかけ、準備完了。
「これで準備は完了しました。さあ、今こそ攻める時です!」
『おー!』
強化を受けたモンスター達は番兵を蹴散らし、門をぶち抜き、国の中に侵入する。
人間共を殺し、国を壊し尽くしていく。
その光景は馬車の中にいるサイバーフィンには見えない。
なのでクヤジア国に潜伏させている機械仕掛けのカラスのカメラに接続し、周囲を警戒する。
逃げている国民を誘導する兵士に向け、嘴を大きく開き、銃口が飛び出した。




