恋愛サバイバル!? ~令嬢2人の運命人~
起転転転転(唐突な)承結
ここは聖カルメリア女学園――
世界各国のお嬢様が集い、日々勉学に努める学園である。
制服は白いワイシャツにチェックの赤いスカート。
スカートには60枚のカードが入っているカードケースが取り付けられ、ワイシャツには可愛げなリボンが付けられている。
ちなみに、制服を着ていればその上も下も何でもオッケーだ。
「ごきげにょう、サグラダさん」
「こちらこそ、ごきげにょう。ファミリアさん」
この学園の挨拶は非常に独特である。
……決して噛んでいる訳ではない。
決して、nを2回入力し忘れてyoをいれたからnyoになってしまった訳ではない。
決して、『打ち間違えたけどまぁいっか、この方が面白そうだし』とか、そういう感性で決めたのではない。
「あら、今日は質素な飾り物を付けていらっしゃいますのね」
「……ええ。サグラダさん程ではありませんが」
サグラダ、ファミリア。(特別な意味はない)
両者は互いを笑顔で睨み合う。
――この学園では、毎年20人の新入生を受け入れる。
倍率は毎年20倍を超える。
外堀だけを見れば、超人気な学園である。
そしてこの2人は、その狭い門を開けた者たち。
僅か1か月と月日は経っていないものの、2人の関係は空想上で鳴り響く落雷の如くビリビリとしている。
何故こうも関係が悪くなるのか――?
それにはとある理由がある。
あと一応言っておくが、今日の天気は快晴だから雷なんて落ちていない。
『キャーキャー! アルロ様――!』
複数の女性徒が騒ぐ。
彼女らの視線の先には高身長な黒髪の男性が。
隣の学園――『都立ヴァイセント学院』の1年生にして頂点の生徒会長――【アルロ=モルモテウス=テンペリム=ドペルペテギセス】である。
周りからは、『名前が妙に長く言いづらいのが唯一の欠点だ』と言われているらしい。
「「「……アルロ様!」」」
ファミリアとサグラダが、女性徒の束を掻き分けてまでアルロに駆け寄る。
「やぁ。サグラダさん、ファミリアさん。おはよう」
大勢の女性徒の前に出るサグラダとファミリア。
「ええ、ごきげにょう。あ……そうだわ! アルロ様。今日は私と登校いたしませ――」
「こんな小娘と目を合わせてしまうと、アルロ様まで腐ってしまいますわ! 私と共に逃避行――登校しましょう!」
サグラダの前に出て、ファミリアはアルロの腕をぐいっと掴んだ。
「ちょっと! アルロ様は私と登校するのよ! 邪魔しないでくださらない!?」
「ふんっ。アルロ様はサグラダさんとは登校したくないそうよ。そちらが邪魔をしないでくださるかしら!」
「むっきー!」
サグラダは地団駄を踏む。
「なら〝アレ〟で決着を付けようじゃない! 今日こそ!」
「ふんっ、やってやるわ。今日こそケリをつけてやるから!」
――2人はゆっくり距離を取る。
「あなたが負けたら、今後一切アルロ様とは関わらないこと、いいわね!」
「そっちこそ!」
「それでは行きますわよ――!」
≪――――レディ!≫
その掛け声と同時に、2人はカードケースからカードを全て取り出す。
――この学園では、カードゲームで優劣を決めるという制度がある。
敗者は勝者の言うことを何でも聞き入れなければならない。
もちろん下剋上はあるが、大体上手くいかない。
……そうそう、なぜこの学園の女性徒の関係性が悪いか――その理由を話し忘れていた。
それにはこの学園の最大ルールが関わってくるのだ。
≪卒業までに、自分に見合う運命の人を見つけなければ変死する≫
なんかデスゲーム張りの意味分からん設定だが、これはルールだから仕方がない。
……とにかく、「仕方ないんだな」ってそう思っておいてほしい。
つまり運命の人のライバルが複数いる時、関係性が悪化する。
――サグラダ、ファミリア。
両者はアルロをめぐって争っているのだ。
なぜなら、アルロに見合うのがサグラダとファミリアしかいないからである。
サグラダの本名は【サグラダ=オルケイド=ナミシスア=コールデント】。
金色のロングヘアーで、いつも青いリボンを後頭部の髪に結っている女性。
暑かろうが寒かろうが制服の上にカーディガンを着ている。
目は綺麗なライトブルーである。
ファミリアの本名は【ファミリア=ミッシェル=アザンド=ライリーリス】。
銀髪でいつもお嬢様結びをしている女性。
基本、制服の上には何も着ずに、冬は中に沢山着るタイプ。
目はライトグリーンだ。
ちなみに、身長はサグラダと差ほど変わらない。
ほら見合う。
名前だけだが見合うだろう。
…………アルロに。
ということで、こんな長い名前の人が他にいないためアルロを狙うしかないのだ。
これは運命なのだ。
あんまりツッコまないでほしい。
「いきますわよ、ファミリア! 地獄より来たりし番犬――ケルベロスを召喚!」
カードバトルのルール説明はしない。
なぜなら特に考えていないからである。
「ふっ、そんな雑魚でどうなるというの? いけ! 灼熱の炎より生まれし精霊――サラマンダー!」
「ケルベロス! サラマンダーにボディアタック!」
――ガウッ!
三頭の猛獣――ケルベロスが、炎を身に纏ったサラマンダーにボディアタックをくらわす。
「押し返しなさい、サラマンダー! そのまま爆炎の猛撃よ!」
サラマンダーがケルベロスを地面に押し付け、両拳で体を乱打する。
ケルベロスはそのまま息絶え、光の粒となって消えてしまった。
「なかなかやるじゃないの、ファミリア」
「サグラダさんが弱すぎるのよ。オーッホッホッホ!」
手の甲を口元に寄せ、高笑いするファミリア。
「なら、これはどうかしら? 水の精霊――アクアリムを召喚!」
宙に浮く小さな水の粒。
「それがどうしたというの?」
「続けて、手札からアシスト『天の恵雨』を発動!」
周囲の天気が一気に悪くなり、急に雨が降ってきた。
なんと、先ほど召喚されたアクアリムが雨水を吸って肥大化していくではないか。
ファミリアの顔が引きつる。
「な、なによそれ」
「とっておきよ。さぁいけ! アクアリム――」
――彼女らのカードバトルは数十分にもわたって続いた。
そして、この光景に見飽きた歩行者が全員立ち去った頃、ファミリアはあることに気づく。
「ちょっと待って、サグラダ」
「なによ」
「アルロ様がいない」
「なんですって!?」
「それに……もう、授業開始まで10分前よ」
「くっ――仕方ないわ。なら勝負は明日以降にお預けします」
「……ええ、いいでしょう」
そうして彼女らは、カードを全てしまって全力疾走で学園の教室へと駆けこんだ。
2人が教室内の席に座ると同時に、チャイムが学園内に鳴り響く。
キーンコーンカーンコーン――
「それでは、授業を始めます」
そして、授業が始まる。
▽
――席が隣のサグラダとファミリアは秀才。
互いが相手に負けないようにと努力する度に学力は伸びに伸び、今では学園トップクラスなのである。
ちなみに、この学園は3年制なので60人中のトップクラスだ。
だが結構世間知らずでおバカな子が多い。
実際どうなのだろうか。
――放課後は、偶々被ったテニス部で、ピリピリしながらも共に汗水を流す。
帰宅後はスマホのSNSで互いに1分毎くらいの頻度で返信して喧嘩する。
片方が通話をかけて罵り合うこともある。
それはテスト前も変わらない。
休日は近くの公園でカードバトルをする。
だが、今まで一度も決着がついたことはない。
邪魔が入るからだ。
――そんなこんなをして、アルロを巡って勝負をしている間。
2年と8か月の歳月が流れた。
他の女性徒が運命の人を見つけて付き合う中、取り残された2人は焦っていた。
「アルロ様は最近になって別の方とお付き合いしてしまいましたし……私たちはどうすれば――」
放課後、誰もいない教室内で頭を抱える2人。
そんな中、2人はふと――あることを思いついた。
((〝運命の人〟というのは、男か女かは特に決められていない……。となると、もしかしたら――!))
「サグラダ!」
先手をとったのはファミリア。
机を思い切り叩いて立ち上がる。
「な、なによ」
サグラダに顔をぐっと近づける。
すぐに、サグラダの顔が夕焼けよりも真っ赤に染まる。
「こんなことをいうのはなんだけど……わ、私と――」
「ええ……、私も考えていましたわ」
「なっ――」
「学力も名前の長さもほぼ同じで、部活は偶々一緒になるし、なぜかペアで全国大会出てしまうし、平日も休日も大体一緒にいるし、SNSでやり取りするし、同じ実力を持っている――こんな運命的なもの、他にないでしょう?」
ファミリアが静かに頷く。
「――ファミリア。私の運命の人は貴女なのですわ。だから……その、付き合いなさい。私と」
「私もそのつもりでしたわ。何で今まで気づかなかったのか――愚かでした」
「……もう気にしなくてもいいですわ。私たちは今からカップルなのです。何も、邪魔するものはいないのですよ」
「サ、サグラダ――!」
静かな教室で、2人は涙ながらに抱き合った。
◇
――それから2人は無事卒業。
お互いを知り尽くした2人は、喧嘩が絶えない日々ではあったが、ずっとずっと楽しく暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
ここまで読み進めていただき、ありがとうございます。
――え? 世界観がよく分からない?
それは良い質問ですね!
実は私もよく分かっていません!!!!
だから、この話のジャンル決めるときに迷ったんです。
(これ現実恋愛なのか……?)と。(1時間くらい迷った)
結局、そもそも異世界ではないということで現実恋愛にしました。
以上です。
ただのノリ短編に付き合ってくれた方がおりましたら、本当にありがとうございました。
最後めっちゃ適当ですみませんでした。