爺ちゃんの戦い
「誰だお前?」そこにいる誰もが思った事だった。カタリナでさえ、突如目の前に現れた黒いマントを被った男が自分に何かを話しかけた事を理解できずにいる。振りかぶられていた拳が届くかと覚悟していたが、いつまで経っても殴られないどころか、突然カタリナの両足を縛っていた力が弱まった。頭から地面に衝突する間際、黒いマントの男に支えられる。そのフードの奥に自分の知っている顔があると分かると、カタリナの表情が和らいだ。
「何をやっている!ローガン!」お頭が急に訪れた刺客に目当ての女を奪われ狼狽する。
当のカタリナを掴んで離さなかったローガンと呼ばれた大男は青ざめていた。そして自分の身体に起こった事を理解しようとする。カタリナに振りかぶっていたはずの腕がない、目を下に落とすと、かつて自分の手であっただろう甲冑に包まれた太い腕が2本転がっていた。それが、カタリナを拘束していた、もう一つの自分の腕だと気がついた時、ローガンが雄叫びをあげる。このゲームにはHPゲージがない。残存ライフは自分しか把握できずプレイヤーキルをする場合には相手の顔色をみて相手のライフを推し測らねばならない。しかし目の前にいるローガンと呼ばれる大男は推し測るまでもなくこのままでは間違いなく死ぬだろう。優秀な僧侶や巫女がいれば別だが、小屋にもこの場にもいない事は確認済みだった。
あまりの突然すぎる出来事に驚く盗賊たち。しかし逃げる隙すら与えぬよう。黒いマントの男が一人、また一人と急所を斬っていく。それはまるで別なゲームをしているかのような、あまりに一方的すぎる攻撃。ようやく我に返り武器を構える盗賊たちも、正体不明の男になすすべもなく斬られていく。時間にして一瞬、しかし一生分のトラウマを植え付けられたお頭が叫ぶ「お前は何者だ!」その返答に答える事なく、マントの男がお頭に近づく。そしてお頭が被っていた頭巾を斬る。カタリナの目の前に見覚えがある顔が姿を表す。「あなたは・・・」
書き溜めが終了してしまいました。なるべく早く次回更新しようと思います。
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